4.離脱計画
私、この異世界ロシニョール王国に転生して今15歳のルナ・トーマ。
これ以上虐げられないよう、家族から離脱します!
とはいえ、まだ成人していない15歳、成人まではあと1年もある。
結婚は出来るけど、前世みたいに相手が変な男だったら、また別の地獄が待ってるし。
そして、1番考えられるのは、あのユナがまたその相手を誘惑して獲ろうとするだろうな。
結婚は却下。
そうなると、就職か、家出。
癒し魔法が使えるから、食べるのには困らないだろうけど、アリスと2人住むところから探さないと、それも出来るだけ遠方。
王都ならトーマ子爵領から馬車でも数日かかるし、仕事も探しやすいかもしれない。
思い立ったが吉日、幸い今日は母親は愛人との逢瀬、妹はアレン男爵家に貴賓客が立ち寄るとか何とかでアレン男爵家に出かけている。
絶好のチャンスーーーーーーーーーーーー!
「アリス、今から王都へ向かうわよ。
準備しましょう」
アリスはびっくりして目を丸くしているけど、私の決意がわかったのか頷いた。
「取り敢えず、当面の衣服と、貴金属とか
金目の物は貰っていきましょう」
泥棒みたいなセリフだが、今までただ働きしてきた給金代わりだ。
愛人に注ぎ込んだ金額に比べたら大した事はないし、私有財産だから、領民に迷惑はかからない。
でも、足らなくなったら税金とかあげそうだよね、あの悪徳子爵。
まぁ、税金は国がきちんと税率を管理しているから大丈夫でしょ。
自己完結。
私は急いで執事の目を盗んで、父親の執務室に入り、隠し金庫の前に立つ。
「金庫が魔法でしか開かないと思って無防備なのよね」
トーマ子爵家ではトーマ子爵のみ魔法が使える。
でも、私も使えるのよね。
癒し魔法以外も。
金庫に手をかざすと、光が溢れて金庫がスーッと開いた。
中には金貨と宝石が詰まった皮袋がひとつずつ。
「取り敢えずの生活費だからね」
一旦、金貨の皮袋だけ取り出したけど、前世の慰謝料もあるよね。
「宝石は前世の慰謝料ね」
宝石の皮袋も取り出すと、金庫の底がカタンと鳴った。
何?何か大切な物隠してある?
ウキウキしながら底の板を外すと、下から帳簿らしきものと、古い羊皮紙が出て来た。
「あとで役に立つかも」
金庫の中身を洗いざらい頂戴して、持って来た麻袋に入れると、また金庫に手をかざし閉めた。
執事の目を盗んでまた自室へもどると、アリスが小ぶりな鞄を用意して待っていた。
「準備できましたけど、どうやって御屋敷を出るんです?」
アリスが不安に思うのは仕方ないよね。
「大丈夫。執事には孤児院へ寄付する服を届けると言うから。それなら馬車も使えるし」
アリスはそれでも不安そうだ。
「御屋敷の馬車ではアレン男爵領との境目にある孤児院までしか行けませんよ。王都まで行くと言ったら遠すぎて怪しまれます」
「うちの馬車は孤児院で帰して、バレないように夕刻に迎えに来るよう言えば大丈夫。
孤児院からは、少し歩くけどアレン男爵領の領都で馬車と護衛を手配しましょう」
アリスが流石お嬢様、といったキラキラした目で見てくるのが眩しい。
「急ぎましょう」
時間との勝負だ。