後宮という場所
ここまでが一話になります!
後宮、帝の奥さんが集うところ。
奥さんは妃嬪と呼ばれる。勿論複数人居て、皆怖いくらいに整った顔立ちと教養、そして特技を持っている。
選び抜かれた、最高の女性が後宮には集まっている。
その後宮で私、頓黎明は、尚服という衣服関連のお仕事をする女官として働いている。
もともと四家の一角である頓家は、進んで後宮に入り帝のお嫁さんになる事で、家の権威を保ってきた一族。
そんな私が、なぜ下から数えたほうが早いような位置に収まっているのか。
それは、先代の帝の奥さんがうちの人間だったので、血が濃くなりすぎるからである!
「……あと帝がかなり年上だし、眉目秀麗だけど好みのお顔じゃないからだったりするのである~」
……これは口に出せないけど。
女官という都合上、ほかの四家の皆より早く働き始めた私。
だけど、同じ四家で私と同じく後宮に入り妃嬪になるだろうと思っていた、いとこの女の子喰伯璃ちゃんは今。
なぜか偽名を使い男として朝廷に出仕し、男顔負けの速さで出世街道を爆進していたりする!
目が壊れたか、私の頭おかしくなったのかと思ったけど、実際見てしまったんだから仕方がない。
事情を聴いてみたところ、深刻な人材不足ゆえに、家柄能力花丸、信用もできる伯璃ちゃんを今上へーかが人材登用したらしい。
まず朝廷に女の子という最大級のタブーを犯していることに気づかなかったのか。
…まあ、ここでいくら愚痴をこぼしても仕方がない。
私の仕事の話に移るとしましょうそうしましょう。
私の役職、尚服とは、簡単に言えばお洋服に関連したお仕事をする人です。
そしてここからが大事、尚服をはじめとして、それぞれの女官には仕えるご主人様がいます。
私が仕えるのは、賢妃様。
後宮にもカースト制度のようなものがあります。
一番上から、皇后、四夫人である、貴妃、淑妃、徳妃、賢妃…さらに降っていけるけど、主要な上位の妃嬪はこんな感じ。
お分かりいただけたでしょうか。私の仕える賢妃様は、何と上から数えて五番目!
何百人居る妃嬪の中でも相当の上位、それに相当する素晴らしい女性でもあるのです!ね、凄いでしょ?
とまぁ、これだけ順位がピラミッド形式でガッチリ決まっちゃってる後宮は、結構いろいろ大変で。
家柄よし、お顔よしは当たり前、むしろ大前提。
そこからいかに才能あふれる女性か、そして何より『いかに皇帝陛下に愛されるか』で全てが決まる、賄賂も何も一切力を持たない究極バトルロワイヤルなわけで…。
「皇帝へーかの寵愛を巡り、日夜女同士の熾烈な争いが起こってるんだよね〜…」
特に私の主人含む、上位五名…皇后と四夫人と呼ばれる妃嬪達は本当に血で血を洗うような(流石に後宮で血は流れないけど)水面下の戦いが起こっていたりする。
特にNo. 2の貴妃様とNo.3の淑妃様がバチバチに火花散ってる状態で、どちらかと言えば貴妃様サイドの賢妃様も、淑妃様に目の敵にされていたりする。
因みに、後宮での『水面下』とは、主に『帝の目の届かないところ』という意味であり、実害は比較的ばっちり出ていたりする。
「例えばこれとかねぇ」
目の前に転がる、背中にぱっくりと切れ目が入ったおろしたての着物。
賢妃様に似合うと思って取り寄せた上物の絹織物だったのに、たった数分目を離しただけでものの見事に鋏が入れられている。
こんな衣類関係の問題を解消し、円滑に物事を進めていくのが私のお仕事のうちの一つだ。
「さぁて、やりますか〜!」