「ホテル・ムンバイ」(映画)
監督アンソニー・マラス
出演デヴ・パテル, アーミー
2008年、五つ星ホテルで起きたテロからの、奇跡の脱出劇。ホテルマン、そして人間としての愛と誇りを賭け、ひとりでも多くの命を救おうとした”名も無き英雄たち”。彼らは<信念>だけで、銃に立ち向かった。(C) 2018 HOTEL MUMBAI PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SOUTH AUSTRALIAN FILM CORPORATION, ADELAIDE FILM FESTIVAL AND SCREENWEST INC
いや、キツイ映画だった。実話に基づいたにしろ、リアリティが半端なくて。
もう、怖い映画の第一位獲得だよ。
以前にもテロ映画何本か観てるけれど、「クーデター」(架空の東南アジア風の国からアメリカ人家族が脱出する映画)とか、アラブ舞台の戦場ものとか。リアルを感じるのはそこまでなかったのに。
インドの高級ホテルの従業員らしさであったり、テロリストのいかにも洗脳された機械的な行動と、聖句を唱えるイスラム教徒の女性を殺せなかったところとか。
とにかく、ドラマ仕立てのハリウッド映画のように、誰が死亡フラグが立っていて、誰が最後まで生き残ることができるのかが想像つかない。
そして、インド警察の対応の悪さが、とことんリアル。それでも、街のおまわりさんみたいな警察が、助けるために潜入して返り討ちにあうところとか。
きっと、まともに銃なんか撃ったことさえないんじゃないか。
銃をもった相手に、ここまでやられ放題、何もできないものなのか? そういう相手に立ち向かう術を持たない従業員たちが、それでも自分一人逃げようとはせず、ともに支え合おうとする姿は、とてもインド的に思えた。
非暴力、非服従。
ああ、なににリアルを感じたかって、彼らの善良さなんだ。路上テロから逃げてきた人たちを、事件が起こっていることへの警戒よりも、同情と共感でもってフロントドアを開けてしまい、テロリストを招き入れてしまうような。あの時点では、同時多発テロの認識はまだ薄かったのかもしれないけれど。高級ホテルの割りに、この警戒感の薄さよな。そして悲劇が起こってからも、草食的な受身でありながらじっと耐えるところとか。
寝て起きて、ずっしりと胸にきたものは何だったのか実感できた気がする。
どうしようもない、無力感。
テロリストに交渉の余地はないし、無抵抗の相手を殺すことを目的に殺していくし、武力を前にしてそれを素手でどうこうする映画的アイデアは浮かばないし、ひどい怪我をしている相手でさえ、反撃は叶わなかった。
なんとか生き延びていたのに、最後の最後にマシンガンの前にさらされ亡くなっていく。
いい映画なんだけど、ショック大きすぎて再度観るのはつらい。




