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「黄金のアデーレ 名画の帰還」(映画)

 監督サイモン・カーティス

 出演ヘレン・ミレン, ライアン・レイノルズ, ダニエル・ブリュール

 ジャンル


 20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らすマリア・アルトマン(82歳)が、オーストリア政府を訴えたのだ。“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画<黄金のアデーレ>を、「私に返してほしい」という驚きの要求だった。伯母・アデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。共に立ち上がったのは、駆け出し弁護士のランディ。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは―?(C)All Program Content (C) 2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.




 今回あーこさんと一緒に観た中で、一番心を揺さぶられた。

 マリアの友人の息子、弁護士のランディの変化と同じように、心の中に変化を起こす。溢れ出す想いに胸いっぱい満たされる。


 ランディがこの案件を引き受けたのは、初めはその特殊性や金額の大きさだったのだろう。ところが実際にウィーンに赴き、マリア一家の過去を辿り、また自分のルーツもその時代にあることを、実感していく。取り戻したかったのは、踏みにじられ、奪われた人としての尊厳。


 そう考えるとき、美術館や審理会の尊大な対応は、あまりにも横暴に見えるし、マリアを深く傷つけているのも分かる。問題は、返す返さない以上に、これは誰のものなのか。なぜ、今、ここにあるのか、ということ。その過程に対して法律を持ちだして、マリアの心情を顧みることなかった彼らが、マリアから信頼に値しない相手、かってのナチスと同じように、個人を踏み躙り、略奪する者として疎んじられる結果になったのは当然。

「ホロコーストにこだわるな」と、言っていいのはその恐怖に脅かされた側であって、脅かした側であっていいはずがない。


 それが名のない絵画であったら、すんなり変換されたのかもしれない。それがクリムトだったから。その代表作の一つとされたものだったから。

「私たちもオーストリア人だ」というランディの言葉が胸に痛い。同じオーストリア人であるはずの彼らの財産を奪い、国から追いだした。その歴史に対して、オーストリアは自らも被害者であって、加害者ではなかったと思っているのだろうか。この背景を頭から無視できるほど、揺るぎなく己の正統性を信じていたのだろうか。

 このクリムトのアデーレの持つ、オーストリア人にとっての象徴性がもっと語られていればよかったな。




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