「バグダッド・スキャンダル」(映画)
監督ペール・フライ
出演テオ・ジェームズ, ベン・キングスレー, ジャクリーン・ビセット
フセイン大統領時代のイラク。国民は経済制裁の影響で生活が困窮。国連は「石油を販売したお金でイラク国民に食料を買い配る」という夢の人道支援プログラムを開始。しかし現実は、様々な国籍の人間がその計画に群がり食い尽くす悪夢の始まりだった。莫大な予算ゆえに欲望が渦巻き、汚職、裏切り、殺人が入り乱れ、銀行や実業家、政治家も次々に取り込まれていく。イラク戦争のその陰で実際に行われていた知られざる衝撃の事実!(C)2016 CREATIVE ALLIANCE P IVS/ BFB PRODUCTIONS CANADA INC. ALL RIGHTS RESERVED.
面白かった。といっていいのか…。
悪の親玉のように描かれるパシャの言い分も分かるんだよな。
吉野だったらどっちだろう? マイケルのように考えながらパシャのように行動するんじゃないのかな。
西洋式の道徳が通じない地域だってある。一人でも多くを救うこと、と考えたとき、何億ドルのリベートが流れようと、それは必要経費と割り切ってしまうんじゃないだろうか。パシャサイドに立ってみれば。フィクサーとして、裏稼業に通じた人物が必要で、そこに利益がなければ、人は他人を助けたりしない。原油というお宝を持つ、貧しい国ならばなおさら。大義名分が霞むな…。
実際のところ、それは本当に必要経費なのか、行われていたことは本当に人道支援なのか。
やはり、そもそものイラク介入からして、石油目当ての侵略で、セリフにあったように、「大きなパイを切り分けるように」イラクを食い物にするためのもの。
経済制裁からこの支援プログラムでイラクの内部に侵入し、そこからの武力行使。クルド人問題を絡めているところなんか、フセインを悪として英米を正当化するための余計な言い訳にみえる。
クルド人通訳との恋愛関係なんかも、マイケルという青二才を、だれもが手駒として利用しようとした、としか思えないし。
その経緯はどうあれ、マイケルが西洋諸国がイラクに対してどういう関わり方をしているか。どういう視線を向けているかを見定めて、告発に踏み切ったのは凄いと思う。これで「世界を変えたい」という彼の望みがかなったとは思わないけれど。世界の現実は西洋的な正義感では動かないだろう、とは思っても、一石を投じることの大切さ。こういう人間がいるという事実は、やはり意味があるのだと思う。
しかし、フセイン政権を批判しながら、彼らに利益を渡し、リベートを受け取るってすごいよな。それで内部批判が膨れ上がってきた頃に、武力行使。仲良く利益分け合ってきたつもりのフセイン側は泡くったんじゃないか。経済制裁をしているのは英米で、国連プログラムはその抜け道提供ってことだから矛盾はないのか。
「これが外交だ」
という言葉が繰り返し使われていたけれど、シナリオを書くのはより大きな武力を持つ側。狙われたパイは食い散らかされるだけ。外交ですらないんじゃないのか。脅しめいた一方的な通達は、交渉ではないだろう。
しかし、実際の事件はこの映画よりもっと大掛かりな感じ。映画はフィクションとして見た方が良さそう。個人の内部告発で暴かれたというわけでもなさそうで。
あとから思い返すと、いろいろツッコミどころ満載。事実をベースにした小説だから、マイケルはヒロイックに描かれているわけか。




