「ワン チャンス」(映画)
監督デヴィッド・フランケル
出演ジェームズ・コーデン, ジュリー・ウォルターズ, アレクサンドラ・ローチ
子どもの頃は、デブで歯並びの悪い典型的なイジメられっ子。大人になっても、恋人も友だちも持てない、冴えないケータイ電話販売員。彼の名はポール・ポッツ。シャイで謙虚、自信の欠片も持てずにきた彼の、誰にも言えない夢は「オペラ歌手」になること。数々の挫折を繰り返すも、恋人ジュルズという初めての理解者を得、背中を押され、夢の舞台に一歩ずつ近づいて行くポール。遂に憧れのパヴァロッティの前で歌う機会を得るが、「君はオペラ歌手にはなれない」と一蹴され、すっかり自信を喪失する。しかし、愛する妻や友達の励ましに、くじけそうな勇気を奮い立たせ上がった最後の舞台、オーディション番組。緊張に体が震え、何度も逃げ出したくなるポール。ステージか非常口か──迷うポールに、運命を分けるメールが届く──。(C)2013 ONE CHANCE, LLC. All Rights Reserved.
彼がオーディション番組で話題になってしばらくした頃、YouTubeで見た。日本のCMにも起用されていたよね。
いじめっ子は最初から最後まで嫌な奴だけど、それ以外には悪人がいない。そして、悪人にしない。自分の不遇を他人のせいにしないから気持ちよく見れるのかもしれない。いじめっ子に対する想いとか、その痛みを理解してくれようとしない父への不満、鬱屈したものが彼のなかにないわけではないのに。そんなネガティブな感情も全て、歌で昇華する。
もっとも、病気や事故で家に籠らなければならなかった時期の夫婦の大変さや、彼の抱えていた鬱屈した想いはこんなサラリとしたものではなかったのだろうけど。
シャイなイギリス人、可愛い。この労働者の町で、とても場違いな趣味にも思えるオペラを歌う彼を応援する恋人や友人たち。理解ではなく受容の大切さ。理解すべきなのは、その内容ではなく、情熱の熱量なのかも。
子どもの頃からポールに絡み続けるいじめっ子は、情熱を注ぐ対象をもった彼に嫉妬していたのかもしれない。
イギリスのこういうサクセスストーリー映画は、なんだか優しい。日常的で善良。安心して観れる。




