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「FOUND ファウンド」(映画)

監督スコット・シャーマー


11歳の少年マーティ。学校ではいじめられ、両親も不仲。そんな彼の楽しみは、家族の秘密をのぞき見すること。お母さんの秘密は、ベッドの下に隠されたラブレター。お父さんの秘密は、車庫の奥のヌード雑誌。だからお兄ちゃんが、クローゼットに生首を隠していても変じゃない。時々変わる生首を、人知れず取り出しては眺めるマーティ。しかしある晩、いつものようにクローゼットを探るとそこには同級生の首が…。僕が秘密を知ってること、お兄ちゃんが気付いたかもしれない…。 (C) Forbidden Films, LLC All Rights Reserved.




 これはずっと観たかった映画。面白かった、といっていいのか…。

 めっさ気分が悪くなった。胃が痛いし。けれど、心理過程がめっさ自然でリアル。


「HEADLESS」のビデオの内容が、もろ快楽殺人で、ガチにこんなシーンを描いているホラーを知らなかったので、そのリアリティにまず絶句。基本、ホラー映画は嫌いだし見ないので知らなかっただけなのか。


 主人公の弟の、兄に対する感情、両親とのかかわり、学校での在り方、理不尽ないじめとそれに対する心理変化。兄がいじめっ子を殺してからの暴力に対する受容の変化。別のいじめっ子を殴り倒したときの、牧師の説教がいかに心に響かないことか。

 喧嘩してしまった友達を生首を見せることで圧倒し、支配する。暴力という手段を取り入れた瞬間の心の尊大さ、優越感、マウントをとる感覚、とてもよく伝わった。

 生首の暴力性と、それが人を支配し得ることへの肯定感。取り入れてしまう子どもの怖さ。理性と道徳という所詮観念でしかない思考の脆さ。

 けれど、暴力という正義の一面性と通用しなさ、それが狂気だということを思い知らされるラスト。

 どれほど理屈をつけてみたところで、兄の殺人は快楽殺人だ。この兄の犯罪を知ってからも、自分の保身しか考えない弟もサイコパスのように見える。


 だけど、それって家庭環境や学校教育、環境のせい? 理不尽に対する鬱憤でこうなる、というよりも、もっと幼児的な、成熟しない精神性の責任はどこに、誰にあるのだろう、と考えてしまったよ。



 そして兄サイド。この兄はサイコパスじゃない。感情も共感性もある。この過程はエディプスをなぞっている。

 弟に知られるまでの殺人が黒人女性なのは、それが悪いことだということを分かっているから。父の黒人蔑視から、罰を与えて当然と黒人を対象として選んで正当化している性的な快楽殺人。時々、白人男性なのは感情的なもつれからではないか?

 それが、弟をいじめた子どもに罰を与え、「殺してくれてありがとう」と承認されたことで、もっと深い部分にあったエディプス・コンプレックスが表に出てくることになる。

 自分の為では、踏ん切りがつかなかった欲望が、弟の為という大義名分を得て可能になる。

 それは、今さら弟から止められたところで止まらない。

 自分の罪を知っている兄は、無垢な弟を守ることで自分を正当化し、自分のなかの守りたい無垢さを弟に投影している。

 その同一化しているはずの弟が、自分とは別の感情を放つことに混乱する。


 容認してはならない欲望の承認と肯定が、どういう結果をもたらすのか。幼い弟に想像できるはずもなく。


 こういった心理過程に矛盾がなく、暴力の持つパワーによって肥大していく自己がとても説得力をもって描かれていたサイコホラーだった。







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