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「劇場版 ダウントン・アビー」(映画)

監督マイケル・エングラー


20世紀初頭、イングランド北東部、ヨークシャーのダウントン村にある壮麗な大邸宅「ダウントン・アビー」には、当主のグランサム伯爵ロバート・クローリーと、その妻でアメリカ出身のコーラ、長女メアリーとその息子、亡き三女シビルの夫トム・ブランソンと娘が暮らしている。次女イーディス一家も来訪し、先代伯爵夫人バイオレットや、メアリーの亡夫マシューの母親イザベル・マートンもたびたび訪れる。このダウントンをジョージ5世国王とメアリー王妃が訪れることになり、一家も使用人たちも興奮の極みに。壮大なパレードや豪勢な晩餐会の準備が必要だ。今やダウントンを切り盛りしている長女メアリーは、この難事を前に、引退していた元執事のカーソンに助けを求める。





 懐かしの面々。含みのある会話、上流階級英語、やっぱり面白い。


 盛沢山の内容。国王夫妻の滞在を軸に、アイルランド人トムの政治的な問題。ダウントン使用人と王室使用人との確執、領主としてのメアリーの葛藤、ヴァイオレットの従姉妹の後継者問題、イージスの妊娠、王女の家庭問題、ゲイの執事の問題。てんこ盛りなのに、それぞれ混乱することなくすっきりさせてくれる。すごい脚本。これぞ群像劇の手本。とはいえ、長いドラマを見ているから、背景を解ってるって前提の上かな。

 執事の彼が、ようやく仲間に逢えて孤独から脱せられたのがやはり嬉しいし、トムが一目ぼれした彼女は亡き妻に印象が被るけれど、この二人の互いを理解し合える立ち位置というのは大きい。


 一番ワクワクしたのは、ダウントン使用人の、王室使用人たちに好き勝手されて憤慨するその誇り。階級制度がどうこうというのではなく、自らの職務にかける誇り高さって、胸をすく想いがする。声高に騒いで暴れるんじゃなくて、自分たちの領域で、自分たちの手でその誇りを取り戻すところとか。誰かに何とかしてもらう、じゃないのが。


 なんだかすごく大人な映画。思想も心情も立場も、利害関係も違っても、時に闘い合うような関係にあっても、同じ世界で生きていこうと思えるような。

 そうできない人の姿もさらりと描かれていて、そういう連中もうまくかわしていきながら、信頼とコミュニケーションの大事さを教えてくれる。


 ドラマの流れから裏切らず、濃く凝縮された映画版、満足度がとても高い。




***2021,6.19


 あーこさんと再視聴。幸せになれる映画が観たくて。あーこさんも満足してくれて良かった。

 この満足感はどこから来るのか、ちゃんと分析したいな。






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