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「よい子の殺人者」(映画)

 監督 ジャン・ジンシェン


 アニメオタクの愛と孤独、浮き彫りになる台湾社会の闇、家庭は廃墟、そこに住む私たちはゴミなのか。アナンは母親と認知症の祖父と暮らしている。アニメ「ボビッター」マニアの女の子に恋をする。彼女との甘い夢が実現しようとした矢先、思いも寄らないことが起こり失意のどん底に。





 台湾映画、初めてかな。面白かった。

 割りに最初の方で、画面越しのいちごちゃんに一目ぼれした阿南が性的な妄想をする場面からの展開で、これ、「ジョーカー」みたいだな、と思ったのだけど、最後まで観終わって、明るいハッピー版ジョーカーだった、後口が良かった。


「ジョーカー」といえば、どこからどこまでが妄想なのか? がキモなのだ。この映画でも、白黒で挿入されるシーンがこれから起こる未来なのか、妄想なのかと考えながら。

 変だと思ったのは、大金を払って落札した着ぐるみが偽物だった、はいいにしても、落札者を馬鹿にするような変な顔だったこと。偽物だったということで、いちごちゃんから嫌われ、阿南の家庭内でも一気に崩壊が進む。

 ん? と違和感。妄想だから辻褄が合わないんじゃないかな。むしろ、その場その場で都合良く辻褄が合わない様にしてる。

 痴呆症の祖父が銀行のカードを作って阿南にくれたりさ。父と兄は生活苦で自殺した(と報道されている)のに、阿南は、ろくに働いていないのに、グッズ集めてアニオタやってる。働けと言われても、自分で「金に困っていない」と言うほどで。いちごちゃんとの関係性の始まりにしてもそう。都合良すぎ。


 ラストシーン、ケースに入ったキャラクターのブロックを抱えて線路に座っている阿南。そこからのにこにこしながら電車に乗っている場面。窓からの景色は日本じゃないかな。


 画面越しに恋をした、それは真実。だけど阿南は彼女に実際に会っていない。彼女に会いに行こうとブロックを抱えて、ずっと妄想していたのだと思う。人付き合いが壊滅的に下手な自分が現実で行動を起したら、こんな悲惨な結末になるに違いない、と。

 そして、一人でにこにこと、大好きなアニメの聖地、日本を旅行する。


 だから、「よい子の殺人者」なんじゃないかな。妄想のなかで自己完結させるから。妄想のなかでさえ、自分自身の意思で攻撃性を発揮できない。いちごちゃんの命令でしか悪さできないほどの、よい子だから。


 面白かった! しかし、後からレヴューを読むと、妄想解釈全然なかった……。





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