「グランド・ブダペスト・ホテル」(映画)
監督・ウェス・アンダーソン
ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。全米で歴代興行記録を打ちたてたウェス・アンダーソン監督の最高傑作。かつて栄華を極めたヨーロッパ最高のホテルの “伝説のコンシェルジュ”が連続殺人事件に挑む豪華スター競演のミステリー・コメディ!”伝説のコンシェルジュ!が究極のおもてなしで皆様をお待ちしております。
夏バテでぐったりの毎日を送っています。映画を1本観るのも久しぶり。娘さんのお薦め、ということで。
面白かった。第二次世界大戦辺りのヨーロッパの仮装国ズブロフカ共和国が舞台。一世を風靡した高級ホテルのコンシェルジュ、グスタヴとベルボーイのゼロの物語。
なんだか童話の中のような可愛い雰囲気の町やホテルの装飾で、まだ戦争は足音だけの前半は、コメディタッチで物語は進んでいくのに、その足音が実態を伴って現れるラストは悲劇で締めくくられてドスンと重く落とされる。
煌びやかなホテルの話かと思いきや、まさかの監獄脱獄や、雪山での追いつ追われつのカーチェイス(?)車ではないけれど)も有りで、賑やかな展開にあれよあれよと巻き込まれて楽しいことこの上ない。
グスタブが多くの貴族の老夫人と関係を持っていた設定で、以前読んだ、貴族の老夫人に取り入って成りあがる男の小説を思い出した。題と作者がどうしても思い出せない。フランスの文豪だったと思うのだけれど。映画にもなっている。もどかしくて、いろいろ探してみたのだけど判らない。時代は19世紀頃、いろんな女性に取り入って新聞社の社長に成りあがるのだったと思う。どなたかご存知なら教えてください。*
それはともかく、貧しくて身分の低い男性が権力・財力のある年上の女性に取り入って出世するのがよくある話なのは、貴族のパトロン的役割が浸透していたからだろうし、取り入る方も単に美貌というだけでなく相手を魅了するに十分な知性・教養が必要ってところが面白い。
しかし、この映画では主人公に敵対し悪役になる老婦人の子どもたちにしてみれば、そんなものは受け入れられない、まして若いツバメに財産を持っていかれるなんてもってのほか、という気持ちも解る。
ここでは語られない、家族と反りが合わず幸せを外に求めた夫人と、母を殺した子どもの物語も興味ある。
主軸の戦災孤児だったゼロとグスタブの距離感が不思議だけど落ち着く。はっきりとした上下関係は変わらない。秘密を共有する仲になってもべたべたにはならない。けれどゼロは言いたいことをちゃんと言える。
社交性の塊のようなグスタブを、ちょっとうらやましく思ってしまいました。
*やっと思い出しました。モーパッサン作「べラミ」でした。




