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「ザ・セル」 (映画)

 若き心理学者キャサリンは、最先端の技術を使って研究患者の精神世界に入り込む治療を行っていた。ある時、逮捕された異常連続殺人犯カール・スターガーの脳に入り、彼が拉致した女性の監禁場所を探り出して欲しいとFBIからの依頼を受けることに。キャサリンは、危険人物の潜在意識に入る、そして前代未聞の危険な冒険に挑み始める。 Rating R-15 (C) 2000 New Line Productions, Inc. All rights reserved.



 他人の精神世界に入っていく「インセプション」のような設定。しかし美術的に作りこまれ過ぎて逆に違和感。

 キャサリンって、いったいどういう職業なんだろう? とても精神科医とは思えない。心理学者にも見えないし。

 キャサリンに主眼をおいて物語を追っていくと共感できなくて面白くない。けれど、専門的な知識や心得の未熟な人物が、他人の精神世界に干渉するとどんな人格変容が起きるか、と一歩引いた視点で見ると面白い。


 相手の心の中にいることで、トラウマになるショックを受けた6歳時点での少年カールに過度の同情を抱くのも当然で、寄り添おうとするあまり、相手の精神世界に呑み込まれてしまうのも理解できる。

 前半のグロテスクな現実を反映された精神世界から、取り込まれた世界は豪華絢爛な支配者の部屋。そこで助けに来てくれたFBI捜査官のおかげで自分を取り戻すのだけど、それからの彼女はちょっとおかしい。

 組織に逆らい、自分勝手にカールを自分の精神世界に入れて殺そうとする。少年のカールが、酷い目に合う前に殺すのが慈悲、のようなことを言うのだけど、彼女の支配する世界でのカールが果たしてどれだけホンモノか。この精神世界で、キャサリンは迷うことなく大人の邪悪なカールを暴力的に痛めつける。同じく傷ついた少年のカールを、トラウマとなった洗礼式の形式で水に沈めて殺すことが、酷い目に合う以前の純粋なうちに殺すのが救済といわんばかりに。

 このキャサリンの姿や世界が、つけやきばの作り物臭くて。自分の姿形は、聖母か聖女だかのカードからで、世界も舞台のセットのよう。カールを救うためという大義名分のうちに行われているのは、ただの支配者争いのように見える。一度邪悪なカールに取り込まれた彼女は、自分のフィールドでなら負けないとばかりに、カールを支配的に扱い殺す。

 自分自身の暴力性に驚きもしない。自身が正義とばかりに他者の命を奪う姿はカールよりもよほど始末が悪い。


 事件が解決した後の、本来の患者であるエドワードを招く自己の精神世界も、彼の世界を真似ただけの陳腐な張りぼての世界。そのお粗末さに彼女自身は気づかず自信たっぷりに微笑んでいる。この世界には、患者を受容する豊かさは微塵も感じられない。

 すでに彼女は狂気の中に住んでいるんじゃないかな、と思わせるラストでした。




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