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「V フォー・ヴェンデッタ」(映画)

 ”V”と出会い、自分自身についての真実をも知るようになったイヴィーは、図らずも“V”の協力者となり、自由と正義を取り戻す革命のために立ち上がったー。 Rating PG12 (C) 2005 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.




 胡桃を書き始めた頃に、参考資料にDVDを買ったんだよ。あーこさんが、「1984」を熱心に読んでいるので、これを一緒に再視聴。だけど「何が面白いのか判らんかった」というので、自分でもどこが好きなのか面白いのか考えてみた。


 確かに物語の基盤になるガイ・フォークスについて知らないと、読み辛さは否めないかも。

 映画では独裁国家に挑むガイ・フォークスの抵抗精神と、肯定的な立場からの主眼だけど、むしろ元祖テロリストとして400年に渡って火にくべられ虐げられてきたんだよな、ガイ・フォークスって。そして今でもテロに頭を悩ませているイギリスは、テロ法案で、監視カメラ、電話やネットの傍受が進んだ監視国家だったりする。


 そんな現実と、ジョージ・オーウェルの「1984」の独裁政権下の世界設定にもなぞらえているのかな。

 この映画の面々を見ていると、イギリスは1984にはならないよな、と思えるところが好き。イギリス人はこういう判りやすい全体主義には馴染まないだろうな、って。階級制度の現存する国だから支配・被支配関係に抵抗しないんじゃないか、と考えてしまいそうだけど。

 コロナ下のイギリスは、ボリス首相の下でがっちりとまとまって、戒厳令とも言える外出禁止令をちゃんと守り、国民は従順に従っていた。むしろ、従順な国民性だと言われる日本人の行動の方に驚かされるほどに。イギリスの政治家の危機に際しての指導力や求心力はすごいなって思ったよ。

 だけど、これは危機だから従うのであって、指導者が正義や希望だと信仰されるわけじゃない。だから危機的な状況が少し緩むと突き上げが始まったし、自らの行動もそれが本当に正しいのか、と内省される。多角的な視点が持たれ語られた。


 気質的に、映画の中のイヴィをかくまったTVマンのように、表面的に従っていても本当の自分を消すことはしない。そして自分の命よりも理念を優先することを選ぶことが尊ばれる。


 それにイギリス人の懐疑性。刑事や公安トップの、いろんなことを疑ってかかり信用しない性質が、利害の一致は信頼とは別物だと語っているようで。そんな国民性(?)が登場人物各々に現れているのも楽しめる。


 散りばめられたⅤのシェイクスピアの引用セリフや、自身を「巌窟王」になぞらえるところとか、文学要素が過分にあるところも好き。


 Ⅴは、シェイクスピアの時代のような時代がかった髪型に衣装、饒舌なセリフ回しで、銃ではなくて剣で闘う。エンターテインメント性が際立ったダーク・ヒーローな訳だけど、彼はシェイクスピアに代表されるイギリスの知性、あるいは精神の象徴のようなもので、真の主役は彼の蒔いた種を拾い立ち上がっていく民衆たちだろう。

 深読みし過ぎかな、とも思うけれど、集まってきた民衆に対して発砲しなかった政府軍が、インド独立戦争の歴史の教訓を経たイギリスとも受け取れて面白かった。単純には、独裁政権で下々に決定権がないから、何もしなかったのだろうけど。それでも民衆に対する恐怖からの発砲や、支配者意識の錯覚がないのなら、喜ばしい。


 そういったシェイクスピアを含む過去の歴史が、自由や希望を奪うことになる独裁政治下に甘んじることのない超自我を形成して、自嘲を交えながら語られているのかな、って推測できるところが好き。


 好きと面白いは、主筋のエンターテインメントとしてのⅤとイヴィの恋物語やイヴィの成長物語ではなくて、背景的なことばかりでした。





 

 

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