「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」(映画)
パリで自閉症児をケアする施設を経営するブリュノと、ドロップアウトした若者たちを支える団体を運営するマリク。コワモテのふたりだが、社会からはじかれた子供たちをまとめて救おうと、日々奔走する。しかし、どんな問題のある子も断らないため、施設は常に満員。そんな無許可・赤字経営の施設に政府の監査のメスが入り閉鎖の危機に。さらに追い打ちをかけるような事件が―。(C)2019 ADNP - TEN CINÉMA - GAUMONT - TF1 FILMS PRODUCTION - BELGA PRODUCTIONS - QUAD+TEN
邦題に偽りあり? 杓子定規な政府と闘う話なのかと思いきや、そうじゃなかった。
ドキュメンタリータッチで淡々と物語は進んでいく。山場がないわけではないけれど、それさえが日常の一端にすぎない事件のようで。政府の監査員が後追いのように、事情聴取していくだけで、ブリュノたちは気にはかけているものの、それにかまっている暇もないほどに日々の業務に追われている。
最後の、ブリュノの「引き取ってくれ」という一言が、切実だった。自分自身の私生活を投げ打ってのこの施設の運営は、どこにも受け入れ先がないからで、手に余っているのは本人が一番よく解っている。公の施設が受け入れてくれるなら、自分の出番などいらない。一度預かった子どもたちを道端に捨てるわけにはいかないから、そんな想いが根っこじゃないのかと思った。みんなのお父さんみたいな。宗教的な根っこもあるのかもしれない。
最終的に、無認可で運営に問題があると指摘しながら「子どもたちの受け入れ先がないから」特別に許可する。それでは何の進展も解決もない。邦題の「政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」ではなくて、守られたのは政府の無責任さではないのか。指摘された問題点は何も対応されないのか、その辺りの説明もない。愛と熱意で運営されている施設を、融通の効かないお役所仕事がケチをつける。というのではなくて、施設の問題点は確かにあって、映画を観ている分には不安になる。




