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「ジュリアン」(映画)

 両親が離婚し母と姉と暮らすことになった11歳の少年ジュリアン。離婚調整の取り決めで共同親権となり、隔週の週末ごとに別れた父アントワーヌと過ごすことに。母ミリアムは頑なに父アントワーヌに会おうとせず、電話番号も教えない。アントワーヌは共同親権を盾にジュリアンを通じて母の連絡先を突き止めようとする。ジュリアンは母を守るために必死で父に嘘をつき続けるが、アントワーヌの不満は溜まり続け、ある日ついに爆発する。(C) 2016 - KG Productions - France 3 Cinéma


 監督グザヴィエ・ルグラン 1時間33分 2019

 出演レア・ドリュッケール, ドゥニ・メノーシェ, トーマス・ジオリア




 とても生々しい映画だった。「ホテルムンバイ」に並ぶ暴力に対する無力感がひしひしと伝わってくる。

 しかし、これを見ながら思ったのは、DVで離婚したのに、夫のDVが認知されなかったのって、弁護士の不手際なのか、母親が、本来ならするべき証拠を残す事を、精神的に追い詰められ疲れ切っていたために怠ってしまったからなのか。

 それにしても、通報するのもいよいよ切羽詰まってからだし、この母親、警察を信じていなかったのかもしれない。

 フランスの事情は知らないけれど、日本じゃまだまだ夫婦間の暴力に、警察は踏み込んできてはくれないからな。助けを求めても、場に水を差す程度の説教で何も変わらない。その積み重ねで助けを求める気持ちを削がれていってしまったのかもしれない。

 と、画面では語られていないことを想像してしまった。


 外からは見えないことを、第三者に説明することの大変さは身を摘まされる。自分に嘘がなければないほど、なぜ通じないのか、なぜ自分ではなく噓をついている方を信じるのか、が理解できない。

 自分自身は傷付けられて言葉を発することさえ苦しいのに、同情を巧みに買うための嘘をすらすらとつく相手の厚顔さに、また傷つけられることになる。そして、自分を信じてもらえなかったことでまた、司法に助けを求めることに希望を持てなくなってしまったのだろうか。


 そして、元夫。彼の実家での食卓の場面でジュリアンをしつこく問い詰める彼に、いきなり激昂して怒鳴りつける彼の父親(ジュリアンの祖父)、無言で見ているだけの母親。

 この場面だけで、この人がこういう人間になった理由みたいなのがすとんと落ちるから、すごいなって思ったよ。


 横であーこさんは、「怖い」「めちゃくちゃ怖い」と言いながら観ていたのだけど、ラストシーンでいち早く通報し様子をうかがっていた隣人の姿に、「ああ、見ている観客、私たちがこの人なんやな」と呟いていた。

 なるほどなって思った。見過ごしにせず、通報しなさいってメッセージだね。






 

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