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「複製された男 」(映画)

監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ

出演ジェイク・ギレンホール, メラニー・ロラン, サラ・ガドン


原作はポルトガル唯一のノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説。監督は新進気鋭のドゥニ・ヴィルヌーヴ。主人公のアダムとアンソニーをひとり2役で演じきるのは、『プリズナーズ』でも監督とコンビを組んだジェイク・ギレンホール。メラニー・ロラン、サラ・ガドンが、眩い美貌、肢体を惜しみなく披露している。COPYRIGHT (C) 2013 RHOMBUS MEDIA (ENEMY) INC. / ROXBURY PICTURES S.L. / 9232-2437 QUEBEC INC. / MECANISMO FILMS, S.L. / ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED.




『メッセージ』や『デューン砂の惑星』と、自分的に旬なイメージのドゥニ監督をまとめて見ようかな、と手始めの一本。

 

 え、嘘、ここで終わるの! と驚愕の終わり方に度肝を抜かれた。制作資金が底ついて、続き作れなくて打ち切ったの? て本気で考えた。


 いやぁ、解説ないとわからないわ。


「浮気相手から妊娠中の妻のもとに戻るまでを潜在意識の視点から描いた」作品なのだそうだ。


 印象は一貫して鬱々として重苦しい。教授はいつも陰鬱な顔をしている。解説抜きにしても、母親の場面でこの二人が交錯している=同一人物ではないかと想像はついた。けれど、それがどこまで彼の妄想なのか、妻をも巻き込んだ二重人格的なものなのか、それとも愛人含めて第2人格の関わる世界そのものが妄想なのか。彼に届けられた鍵、欲望の部屋は本当なのか妄想なのか。

 蜘蛛の象徴するものは何だろう、とかいろいろもやもや考えてしまう。


 それにしても、自分に似ている相手を見つけただけで、30分間興味を惹きつけ続けたことに関心する。

 中学の頃、演劇部の大会で、偶然自分そっくりの声に出会って驚いたことがある。なんともいえない気持ち悪さを感じて、楽屋にその声の持ち主に会いに行った。顔も姿形もまるで似てなくて、マイクを通していない生の声も似てなくてほっとした。

 だから前半のただ確かめたい気持ちは共感した。


 まぁ、その辺は主線ではなくて、彼の感じている息苦しさ、重苦しさが、妻の妊娠から来るもので、享楽に絡めとられているようで実は、()()からの逃避であり、防衛なのかな。


 第2人格の教授が全て妄想というわけではなくて、時系列がバラバラに組み合わさって、事実とは別の物語を作り上げていっているのかな。


 要の場面場面が現実であるなら、腹部の傷はラスト近くの事故でできたもの。教授の恋人との浮気のその後が、初めに教授が俳優に電話した直後の夫婦喧嘩シーンの元だね。

 妻を気遣う良い夫になるには、本来の人格を第2人格に譲らねばならず、でもそうなると母性の象徴である蜘蛛は巨大に膨れ上がって彼を威圧する。

 浮気にしろ享楽にしろ、母性を踏みしだく象徴的な意味が背後にあって。


 そんなメンタル病むほどなら、裕福な母親から経済的に自立したらと思うのだけど、それが難しいのだろうな。


 結局自分の持っているものを手放すことが彼にはできなくて、母や妻の望むよい子でいるために、蜘蛛を太らせ、秘密の鍵を握っておかなければならない。そんな感じの話かな。









 

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