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「恐竜が教えてくれたこと」(映画)

監督ステフェン・ワウテルロウト 


 一週間のサマーバカンスを楽しむため、家族とともにオランダ北部の島にやってきたサムは、11歳の男の子。わんぱく盛りの年頃だが、この世のすべての生き物がいつか死を迎えることに気づいたサムは、「地球最後の恐竜は、自分が最後の恐竜だと知っていたのかな?」というまったく答えの見つからない哲学的な疑問に思い悩んでいた。そんなサムの前に現れた地元の少女テスは、眩いほどの快活な魅力にあふれ、予測不可能な言動で彼を振り回していく。ところがママとふたり暮らしのテスには、不在の“パパ”をめぐる重大な秘密があった。12年間ずっと生き別れてきたパパに対するテスの切なる想いを知ったサムは、彼女が考案した奇想天外な秘密の作戦に協力することに。やがて、このひと夏の冒険は周囲の大人たちを巻き込んでサムに新たな世界を見開かせ、かけがえのない生きる喜びをもたらすのだった……。




 自分は末っ子だから一番後に死ぬ。そう信じて孤独に耐える訓練をするサム。ここで、孤独に耐えようと一人でいる時間を作る発想が面白い。そうなった時のために家族に替わる誰かを得ようとか、孤独を忘れるほど打ち込める何かを見つけようではないんだね。「悪童日記」もそうだけど、「耐えられるようになるための訓練」という発想は普通なのかな。キリスト教的、罰の文化的な?


 例えばウィニコットでは、「一人でいられる能力を獲得する」ことが命題の一つだけど、それとはまた違う。


 サムは孤独を知らないから、孤独を恐れるんだよね。言い換えれば、彼は温かい家庭で豊かに育った少年だ。


 博物学知識が豊富だったり、いきなり哲学的な思索にふけってみたり、協調性にかいていたり、彼の独特さが、身内の子に似ていてにやにやしてしまった。


 そんな彼のいつか自分の身に起こるかもしれない未知の不幸に対する防衛意識は、知り合ったテスの抱える現在の問題に触れ、その想いを想像し、思い遣ることで、いつの間にか遠ざけられていく。そして偶然出会った老人の言葉に触発されて、テスへの介入を決意させる。


 全体通してサム視点なので、大人の抱える複雑な問題はあまり見えてこない。世界は単純で優しい。そういうところはちょっと物足りなくも思えるけれど、可愛い子どもが、素敵な観光地でわちゃわちゃやってる、微笑ましい。そんな後味。

 11歳、思春期の入り口に来る年頃になると、家族よりも友だちの比重が高まってくるもの。いろんな想いを抱えて子どもは家に帰ってくるんだな。そのとき、「いてくれてよかった」と泣きつける胸であれればいいな、と思う。


 最終的にそれができても、サムにしろテスにしろ、そう簡単には「言えない」事情は親側にあった。その一線を越えられたのは、サムの介入であり、テスのパーティーへの招待であり。

 子どもたちの介入がハッピーエンドで〆られるのも、視点がサムだからと言えなくもなくて。

 でも、テスの母親にしろ、ヒューゴの恋人にしろ、しっかりした大人だと思える描かれ方をしていて、そこが、子どもたちのやらかした感をゆったり大きな視野で見守ってくれている感に繋がっていると言えなくもない。

 けれどそれが逆に、サムのぬくぬくとしているだけではないはずの環境から目をそらせさせ、結果的に彼が恐れていたはずの孤独に深く触れることなく、思い出を沢山作る、という、なんというか、自分としてはもやもやの残る答えで納得させてしまう物足りなさに通じる一因になってるのかもしれない。


 しかし、この邦題は分かりにくい(笑)。



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