「あしたのパスタはアルデンテ」(映画)
ローマに住む作家志望の青年トンマーゾは南イタリアで老舗パスタ会社を営むカントーネ家の次男。兄アントニオの新社長就任で共同経営者と一族の晩餐会が開かれる。トンマーゾはディナーの席で、家族に黙っていた3つの秘密を告白しようと決心するが-。(C) Fandango2010
監督フェルザン・オズペテク
出演リッカルド・スカマルチョ, ニコール・グリマウド, アレッサンドロ・プレツィオージ
原題とかなり違う邦題だけど、惹かれる邦題。アルデンテ=理想的なという意味合いで、明日は理想の家族に…ということらしい。映画は、アルデンテ=歯ごたえのあるが正解かも。
時代的に、心のままには生きられなかった祖母の回想と、現代で思う通りに生きたいゲイの孫の生き方を対比させながら、家族への想いやしがらみに翻弄されながら生き方を模索する人々。
はっきりした選択は明示されないまま終わる。トンマーゾに絡んでくる女の子への共感もあれば、恋人との意識のズレも見えていて。自分は作家になりたい、と意思は告げるけれど、そこには家族を捨ててしまえるほどの強さは感じられなくて。死でもってもう一度家族を結びつけた祖母。全編通して彼女がかっこいい。けれどそれは、自分の好きなように生きなかったゆえの悟った姿かもしれず、自分の想いを貫いたときには、それに伴った犠牲が生む別の言葉があるかもしれない。
自分の望み通りの生き方にせよ、家族や他者の思惑に沿った生き方にせよ、その場所で地に足をつけて生きる。それができた彼女は、自分で思う以上に幸せだったのではないか。自分を犠牲にしてもよいと思えるほど愛おしい、助けたいと思える他者の存在があったのだから。自己犠牲は陶酔的だな。




