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推しカプ万歳!(?)  作者: 伊住茉莉
1/3

1始まりの始まり

もし私がもっと可愛ければ

もし違う学校に行っていれば

もし私に彼氏がいれば

もっと恋愛が充実していたかもしれない!と私、 文月澪(ふみつきみお)が考えていたのは中学生の時までだった。


小さな頃は、世の中の人には全員に許嫁がいると思っていたし、高校に入ればイケメンと恋に落ちると信じていた。しかし、私の思っていた常識が、ほとんど存在していないのを知ったのは、中学校に入ってからだった。それまでイケメンとのラブロマンスも信じて疑うことはなかった。


しかし、入学して気が付いた。”イケメンはいるけど、そもそも知り合いにならない”

つまりは、恋愛へ発展することがないということだ。

その現実に気がついて、1週間くらいご飯がのどを通らなかった。


そんなときに出会ったのが、乙女ゲームだった。

出会ってすぐにその世界にのめりこんだ私は、どんなゲームでも好きになったキャラは常に同担拒否になり、ひたすら毎日ゲームに明け暮れる日々を送っていた。


そんな乙女ゲームオタクへと成り果てた私は、高校へと入学式の帰り道で寄ったアニメショップで運命の作品と出会った。その作品こそ「君に捧げる

Sweetmusic」だ。

主人公の新田梨奈(にったりな)がなんやかんやあって兄の代わりに人気3人組アイドル「Sugar」のメンバーとして活動して、メンバーの森川海人(もりかわかいと)安堂千早(あんどうちはや)野島雄太(のじまゆうた)の3人と仲を深めていき、色々な苦難を乗り越えて最終的にその3人の中の1人と結ばれてハッピーエンドを迎える話だ。


そのゲームに出会ってから私の乙女ゲームライフは一変した。

今までは、最推しのキャラを見つけて、そのキャラのルートをやりこみ、公式コンテンツや夢小説を読み漁って完璧な同担拒否に成り果てていたが、今回はなぜだかそうならなかった。


とにかく梨奈とそのほか3人のメンバーの絡みが好きになってしまったのだ。

梨奈がいるからこの3人のいいところが引き出されているようにしか思えなかった。


特に私が推していたのは、王道中の王道。海人とのカップリングだった。

神経質で気難しい海人と不器用ながらも距離を詰めていく梨奈が何ともかわいらしく、最終的にはくそ面倒くさい性格をしている海人を落とし、恋人にしてしまうのだから本当に頭が上がらない。

今まであんなにつんけんした態度をとっていた海人が恋人になった途端に、プレゼントを梨奈に渡したり、甘い言葉をささやいたり、ロマンチックなデートを提案してきたりなど心の入れ替え方というか、態度の変わり方が潔すぎて爆笑してしまった。


あまりにも好きすぎるが故の、カプ推し。初めての経験だったし、このゲーム以外は普通に同担拒否になってしまうことは変わらなかった。

そういった意味でこのゲームは本当に私にとって特別なゲームだった。

できることならば来世は是非、Sugarがみんなで同居している合宿所の壁とかになって梨奈と海人(別キャラでも可)の恋模様を見届けたいところである。


「君に捧げるSweetmusic」は発売から5年がたった。

発売当初は高校1年生だった私ももう大学2年生になっていた。

人生の夏休みとも揶揄されるこの学生生活を存分に使って、今まで以上に乙女ゲームに全魂をささげている日々だ。


「君に捧げるSweetmusic」もスピンオフ作品が2作品ほど作成されてまだまだ熱量をもって更新され続けているコンテンツだ。乙女ゲームという界隈は熱しやすく冷めやすい場所であるため、運営の皆さんが熱量をもってこの作品を続けていてくれていることには感謝しかない。

そして、つい昨日にはテレビアニメ化が決定されて、ファンとしては今一番脂がのっているコンテンツと豪語していきたいところだ。


そんなご機嫌ルンルンなバイトの帰り道、歩道橋の階段で足を滑らせてしまった。


何度も地面にぶつかりながら下まで落ちて行く。


薄れていく意識の中で、これ私死ぬなと思った。


そんな中最後に私が考えたことは、もしこれで漫画みたいに転生できるなら、「君に捧げるSweetmusic」の世界線に生まれ変わりたい。ということだった。





—————————————


「・・・で、結局どういうことか教えてくれる?」


間違いなく私、文月澪は死んだはずなのに意識がはっきりとしていた。

目の前には白銀の髪の毛を緩い三つ編みにして流し、白色のドレスを身にまとった女神のような人が、ザ・玉座みたいな椅子に足を組んで座っていた。


「どういうこと、と言われましてもお話しした通りと言いますか」


そうだった。この女神様みたいな人に今までの人生と、今後の希望を問われていた。それなのにいつの間にか話が脱線して、私の大好きなゲーム語りをしてしまったのだった。


「なるほどなるほど、っていうことは文月澪さんは、大好きなゲームの世界に転生したいなーって感じなわけね?」

「できるのであれば・・・」


っていうかそもそも自分の次の人生を自分が決めてしまうのはアリなんだろうか?

そんな都合がいいシステムだったのか、この世は。


「そういうことなら転生させてあげたいんだけど、今この天界も忙しい時期でさ、普段は転生希望の人は転生専門の神様のところに飛ばされるはずなんだけど、あなたは手違いで私のところに来てしまったみたいで」

「と、言いますと?」

「私、世界を新しく作る専門の神様なのね、だから完全に同じ世界にすることができなくって、あなたの希望通りにはいかないかもしれないの!」


え、この女神様創造神ということ?なんかそのほうがかっこいいし、なんかレベルが高くない?


「それでも大丈夫なら、あなたの希望を叶えることができるわ」

「全然気にしないです!大丈夫です!本当にSugarの合宿所の壁とかでいいので!」

「そっかそっかー。壁、壁ね。ちょっ...と無機物に生命をもたせるのは高難易度だから、そのSugarってのに近しい人間でもいいかな?」

「梨奈ちゃんでなければ大丈夫です!」

「了解!じゃあパパっと作っちゃうね!前世を丁寧に生き抜いたあなたに祝福があらんことを!えい!」


”パパっと”とか”えい!”とかちょっと不安になるワードが紛れていたが、それは気にしないことにしておこう。前世では不意に終えてしまった人生。

次の場所では丁寧に生きよう!そう心に決めてギュッと目をつむった。





———————————————


「・・・ちゃん。・・・おちゃん。澪ちゃん」


誰かに声をかけられている。そのことに気が付きゆっくりと目を開けた。

私に声をかけ続けていたのはなんと、「君に捧げるSweetmuisc」の主人公。新田梨奈。その人だった。


「よかった!目を覚ましてくれて!もう授業終わってるから移動しようか!」


どうやらここは物語の始まりの場所、新田梨奈の通っている専門学校のようだ。

ここから始まる推しカプ道。全力サポートさせていただきます!!!!

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