第一章ビッグバン~宇宙誕生~
第一章【ビッグバン~宇宙誕生~】
「・・・ロン」
寡黙な大男は小声でそう呟くとそっと卓を後にした。
カーテンの隙間からくさびのように差し込んだ光がピスのあがり牌をいやしく照らしている。
「どういうことだ?」
親であった天野にはまだ現状が理解できていない、困惑と焦燥から渋そうな表情をしていた。
「どういうことだって聞いてんだよっ!!」
天野は己が拳を斧のように振りかざし、卓強くを叩いた。
参謀である宇野・森安は口をへの字にして崩れた牌を見つめている。
明らかに有利・明らかに仕組まれた麻雀だったのにもかかわらず
3人は1人の雀士を止めることができなかった。
「なんでだ? どうしてお前ら俺を止めなかった!?」
「止めましたよ! 何度も止めたじゃないですか!」森安は今にも泣き出しそうだ。
その横では天野と同じく2人を打ち破ったはずの天野の弟もうつむいている。
「ああ、もういい…………」天野は力なく椅子に腰掛けた。
そして天井を見上げながら深いため息をつく。「またか…………」
この日、日本中にある雀荘という雀荘で同じことが起こっていた。それは全国規模で起こる"ある事件"の始まりにすぎなかったのだが、この時はまだ誰も知る由もなかった。