美味しいタイムトリップ
100年後から、夜行便で帰ってきた。未来旅行では、お土産を持ち帰る事は厳禁だ。土産話も。しかし、未来で食べた味がどうしても忘れられず、食材を持ち帰ってしまった。ずしりと重い、新鮮なコイツをどう料理しよう。
火星産の無農薬野菜に牡牛座育ちのお肉、極めつけはアンドロメダ発祥の香辛料。未来の食材は賞味期限が早い。悩んでる間にもどんどん鮮度が落ちてゆく。「早く作らなくちゃ!」大きな鍋の中へ食材を全て放り込んだ。
なぜ未来からお土産を持って帰ってはいけないのか?その理由がすぐに分かることになる。鍋から出る鮮やかな煙が高く登るにつれて次第に空が騒がしくなる。匂いにつられて未来からの生き物がやってきてしまったのだ!
せっかくの料理、ゆずれば帰ってくれるか。生き物達は目前に迫る。お腹が鳴ると共に鍋を抱え、お肉を咥え、争奪戦が始まった。あちこちで騒ぎになり、未来パスは停止処分。時を超える美味しさは少し危険な味だった。