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洗礼の日

この世界の通貨


銅貨=100円

大銅貨=1000円

銀貨=10000円

金貨=100000円

白金貨=1000000円

 

「姉さん!この子産まれたばかりなのに産声をあげないわ!」


 まぁ俺も産まれたばかりの赤ちゃんが泣かずに真顔だったら死んでんのかと思うわ。

 あ、どうも生まれ変わりましたアヤトです!

 取り敢えず一芝居うっておくか。


「あ、泣き出したわ!」


「大丈夫よアルシャ、うちのエクスなんて産まれて一分程いびきかいて寝てたんだから」


 そんなことあり得んのかよ。


「ふふ。またまた、姉さんは冗談が好きね」


 冗談なんかい。

 と言うかこの部屋広すぎるなー50畳ぐらいあるんじゃないか?


「あらあら部屋が気になるの?けど、まだベビーベットからは出ちゃダメよ」


「まぁ大丈夫でしょ。逆に0歳児がいきなりハイハイしたりベビーベットの柵を乗り越えたら怖すぎるわよ。と言うかまだこの子視力ないでしょ」


「それもそうね姉さん。ふふ」


 キョロキョロする俺を抱きながら笑いかけてくれる。

 アルシャさん、もといお母様。


「それだけ好奇心があれば4、5歳には森でゴブリンでも狩ってくるんじゃないか?はは」


「それは、さすがに無いわよ。あなた」


 部屋に誰かが入ってきた。

 声的には好青年位だか、お母様が「あなた」と呼ぶってことは俺のお父様ってことかな?

 ダメだ眠い。

 おやすみ。


「将来の夢は何かしらね?この子が大きくなるのが楽しみだわ」



───────────────



 時が過ぎるのは早いもので俺は四歳になった。

 それまでになにかあったんじゃないかって?

 そりゃ色々ありましたけど。


 例えば。

 俺が産まれて一週間ぐらいだったかそれくらいにエクスお兄様がボールを持って俺をあやしに来てくれてきたんだが。

 俺がボールを天井に向かって投げたらボールが天井を突き破り青空が見えるようになった。

 エクスお兄様は怒られた尚ボールは行方不明です。


 例えば。

 この世界では魔法というものが基礎概念のひとつにありまして。

 魔法は炎、水、風、光、闇の五属性が基本にある。

 他に一般的な便利な魔法、生活魔法。

 現在は失われし太古の魔法、古代魔法。

 超希少で世界でも数えるほどしか使える人が居ない、時、空間を操る魔法、時空魔法。

 他にも魔法の種類はあるが今は良いだろう。

 一歳児の俺にお母様が『アヤトはいくつ魔法を使えるのかしらね。私や姉さん、あなたのお兄ちゃんが二属性、あなたのお父さんは天才と言われる三属性使いだからね。洗礼の日が楽しみね。ふふ』と寝る前に話してくれる。普通の乳児ではとても理解できないが、俺は中身17歳そんな話を聞かされたらもちろんワクワクと興奮が止まらない。

 と言うことで皆が寝静まった頃に魔法の練習しようと。



 アヤト一歳。

 ベビーベットの中だから火は危ないし、風を起こしたらお父様達が起きてしまうかもしれない。

 光や闇はなんか想像つかないから却下で。

 水なら少しぐらい濡れても尿や汗と判断されるし音も出ないであろう。




 俺はこの後そんな軽い気持ちでするんじゃなかったと反省した。


 結果的に言うと俺の魔力量が多すぎて部屋は水浸しになったのだ。

 そして朝起きたお父様達が水魔法の得意なエクスお兄様が悪戯したんじゃないかと嫌疑をかけた。

 流石にこのままエクスお兄様が怒られると可哀想すぎるので俺が泣いてお父様達を呼び止め手から水をジョバジョバと出した。

 するとお父様達が口を開け唖然としていた。

 お母様は俺を抱き上げ『あなた、この子は天才よ!』等と言っていたが。

 レックとケルディーはこの異常な光景を理解するのに少し時間を要した。

 その後の事は魔力枯渇による疲労で寝てしまい知らない。




 まぁそんなこんなで色々な事がありましたが、明日で俺は五歳になる。

 つまり教会に洗礼を受けに行ける年と言うことだ。


「ただいま戻りましたぁ」


 屋敷の扉を開けて玄関で家用の靴に履き替える。


「坊っちゃんお帰りなさいませ。お風呂はもう沸いておりますのでお先にどうぞ」


 俺が帰って来ていつもすぐに迎えてくれるのはこの屋敷で執事長をしているセバス。

 もうそれは完璧な執事でございます。

 元はSクラス冒険者で昔は剣聖何て呼ばれていたそうだ。

 セバスは俺の剣の師でもある、三歳の足腰が少し丈夫になった頃から剣を教えてもらっている。

 ある日お父様が俺には剣の才能があるのかとセバスに聞いたとこ『坊っちゃまが八歳ほどになった頃は私など足元に及ばないでしょう』なんて過大評価していた。


「セバスただいま。ありがとう。でもお風呂は剣の修練とコイツらを解体してからにするよ」


 そう言って()()()からゴブリンを五体、猪を二体出す。


「これはこれはまた、今日は金猪ですか。これだけ上物でしたらさぞ、奥様も喜びになりますね。解体の方は使用人どもでやっておきますよ」


 金猪とは普通の猪とは違い、毛並みが金色で凶暴で有名らしい。

 しかしその肉は溶けるほど柔らかく、高い時で一頭金貨五枚分くらいになる。


「いいよ、どうせ暇だし。それよりセバス剣を教えてよ」


「左様ですか。それでは庭に行きましょうか」



 三時間ほどセバスとの修練が終わり風呂に入り、夕食の時間となった。


「アヤトとうとう明日は洗礼の日だな。楽しみか?」


「はい、お父様。すごく楽しみです!」



 俺に優しく話しかけてくれる好青年はこの世界での俺の父親、テンシャ・ヘル・レック・ベネレー。

 ベネレー領地の領主であり、領主内でのナンバーワンSランク冒険者だ。


 元々は他国の伯爵家の長男だったレックは堅苦しい貴族社会に嫌気がさし15歳の時、家を出て冒険者になった。


 元々魔法と剣の才があったレックは次々に称えられる功績を上げて行った。

 レックが二十歳の時に寄り道したこの国、ケケルに滞在していた時、王都に古代龍(エンシェントドラゴン)が原因不明の暴走を起こし王都に迫っていると言う報告を冒険者ギルドで聞いた。


 当時冒険者ギルドで唯一のAランク冒険者だったレックが先陣を切った。

 しかし、仲間は大天災と呼ばれる龍の前にバッタバッタと倒れて逝った。

 そこでレックは勇者と言うスキルを発現させた。

 その後死闘の末に見事古代龍(エンシェントドラゴン)を撃ち破った。

 この功績によってそれまで一代限りの名誉伯爵だったレックは永久貴族の公爵へと陞爵した。


「エクスは完全に代官や領主に向いた性格だからなぁ。お前は冒険者として名を上げるのが似合っているな。はは」


「はい!将来は冒険者としてお父様の様な人になりたいです」


「おーそうかそうか。まぁアヤトは俺よりすごくなりそうな予感がするな」


 まぁチートスキルをたくさん貰っているそうなので期待しておいてください!


「アヤト今日の金猪すごく美味しいわ、ありがとうね。最高の誕生日プレゼントよ」


 そう言えば今日はお母様の誕生日でプレゼントとして金猪を狩ってきたのだ。

 本当は一頭で良かったのだが張り切りすぎて二頭狩ってきてしまった。


「喜んでもらえて嬉しいです。お母様」


「明日のお返しを楽しみにしていてね」


「はい!楽しみにしておきます」





「今日は皆、本当にありがとう!最高の誕生日だったわ」


 お母様は美しい笑顔だった。


 そんなこんなでお母様の誕生日は盛大に終わり、明日のためにと子供達は早めに寝るのだった。



 次の日、早朝俺とお父様はセバスと共に馬車で教会に向かう。

 15分程で教会についた。

 教会の前に一台の馬車が止まっていた、馬車に家紋が付いている。

 何処かの貴族のようだ。


「ん?この紋章はアルデ公の。あ、そう言えば今日はアルデ公爵家のご令嬢が五歳の誕生日だったな」


 アルデ家と言えばお父様が冒険者の頃色々なバックアップしてくれて大変お世話になったと聞いている。

 何度か家に来たこともあったなそう言えばいつも同い年の女の子がいたな名前はえーとアルデ・クン・ミーシャだったかな?


「しかし、自分のサブリー領にも教会はいくつもあるのにわざわざ家の領地に来ているんだ?」


「まぁ、それは会ってから聞けば良いか」



 お父様がそう言った後セバスが教会の扉を開ける。


 祭壇のそばにアルデ公爵とミーシャ嬢が居る。


「久しぶりだな、勇者レック」


 アルデ公爵は笑顔で俺たちを迎える。


「お久しぶりです、アルデ公。それとミーシャちゃんお誕生日おめでとう」


「お久しぶりです、アルデ公爵様、ミーシャ様。お誕生日おめでとうございます!」


 そう言って教会の前で用意していた物を渡す。


 ミーシャ嬢が目をキラキラさせて箱を開ける。


「これはなんと!?ダイヤモンドの原石ではないか、それにこの大きさ相当な価値であろう」


「アルデ公それがですね……」


 お父様がアルデ公爵へ近づいて行き耳打ちをする。


 何やら色々と話しているようだ。


「アヤト様!素敵なプレゼントをありがとうございます!ミーシャは一生大切にしますね」


 そう言って俺の腕に絡み付いてくるミーシャ嬢。


「気に入ってもらえたようで嬉しいです。ミーシャ様」


「それでは私もお返しに」


 そう言って隣に居たメイドからなにか受けとる。

 ミーシャ嬢。


「これ、私が焼きましたの。良かったら受け取ってください」


 顔を真っ赤にしながら袋を渡してくる。

 なにこの生き物可愛い。


「これは?」


「東方で伝わるお菓子と言うもので、それはクッキーと言います。甘くて美味しいですよ。紅茶に合うと聞きました」


「ありがとうございます。家に帰って紅茶と一緒にいただきます」


「あ!」


「どうしました?」


 両手を繋いでモジモジするミーシャ嬢。

 なにこれ可愛い。


「あ、いえ、その良ければ一枚だけ食べてアヤト様の感想が欲しいです」


「あ、はい分かりました。では、失礼していただきます」


 俺は綺麗にラッピングされた袋からクッキーを一枚取り出し、丁寧にいただいた。


「これは!」


「やはり、お気に召さなかったでしょうか?」


 ミーシャ嬢が上目遣いで俺を見る。

 可愛い。

 と言うかこのクッキー旨すぎる!


「いえいえ、ミーシャ様あまりにもクッキーが美味しかったので思考がストップしていました」


「そ、そうですか、お気に召されたようで嬉しいです」


 またまたモジモジしている。


「アヤトくんミーシャは君にそれを渡すためだけにここの教会に来たんだよ」


 アルデ公爵とお父様が俺達を見てニヤニヤしている。


「もう!お父様!」


「ミーシャ様本当にありがとうございます。ミーシャ様はいいお嫁さんになりますね」


 俺は冗談を言いながら笑顔を飛ばす。


「それなら……アヤト様の…お嫁にぃ」


 ミーシャ嬢が下を向いて顔を真っ赤にしながら小声でなにか言っている。


「どうしました?大丈夫ですか?」


 顔を下から覗き見る。


「ひゃい、はい!大丈夫です。なんでもないです」


 何やら慌てている。

 体調でも悪いのだろうか?


「そろそろ、初々しい夫婦の語らいをやめて洗礼を受けようか?」


 アルデ公爵がニヤニヤしながら俺達に言う。

 夫婦とはなんの事だろうか?

 ミーシャ嬢は真っ赤である。


「それではこのお二方にホブギテの創造神ナクル様のご加護を授ける」


 そう言って神官は俺達の肩に錫杖のようなものを振る。


 すると頭の中に何やら文字が浮かんできた。


「ミーシャ、ステータスの確認はできたかい?」


「はい、お父様。ステータスオープン」


 ミーシャ嬢がそう言うと、指先に文字が浮かび上がる。



 アルデ・クン・ミーシャ


 種族:人族

 性別:女

 称号:聖女 天性の魔術師


 通常魔法


 炎魔法Lv1

 水魔法Lv3

 光魔法Lv4


 固有魔法


 生活魔法Lv5



 通常スキル


 回復士Lv4

 剣術Lv2


 固有スキル


 聖女Lv1

 聖母神の加護Lv1


 レベル:9


 体 力(HP):600

 魔力量(MP):4000

 攻撃力(ATK):1200

 防御力(DEF):2000

 俊 敏(AGL):1000

 (LUK) :2000


「ほお!通常魔法が三属性、それに聖女スキルが発現するとは!魔力量も平均の三倍以上もある!」


「将来は大魔術師、もしくは賢者にもなりうる可能性がありますね!」


 アルデ公爵とお父様がすごく盛り上がっている。


「アヤト様はどうでした?」


 ミーシャ嬢が俺に聞いてくる。


「えーと」


 これは他人に見せて良いものか否か…



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