温厚じゃない最強生物
今朝スマホ越しに会話した親友が死んだ…
「ただいま~」
そう言えば綾斗結局さぼりやがったな後であいつの家にお菓子をもって説教しに行ってやろ。
「統也!綾斗くんが」
「どうした、母さんそんな顔して」
母さんが顔を真っ青にして玄関まで走ってきた。
泣きそうな顔をして下を向いている。
「綾斗がどうしたんだ?」
「今日の朝、綾斗くんが事故で死んだの」
「は?何言って…」
意味が分からない、今日の朝?
何を言っているのか分からない綾斗が死んだ?
「電車に轢かれて死んだそうよ」
「いや、意味が分からない綾斗が死ぬ?そんな訳、だって駅のホ―ムについた時遅刻で今から電車乗るからって電話してきた…」
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「今駅だから二時間目には間に合う」
[分かった。それじゃ]
「おう、それじゃまた後で。え、何であんなところに、ヤバい電車が来る」
[どうした?綾斗~綾斗~なんだ切忘れか?]
「ふあふぁふぁあああ」
[うるさっ!電車の警笛?あ、切れた]
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相神 綾斗は何処からか迷いこんだ子猫を助けようと線路内に飛び込んだ。
しかし子猫を抱き上げた時にはもう電車がすぐそこに迫っている、確実に自分は死ぬだろうと思った綾斗は子猫をホ―ムに向かって投げた。
即死だった。
相神 綾斗は17歳という若さでこの世を去った。
只今私、相神綾斗は目の前の景色に猛烈に感動しております!
揺れる緑の木々、黄金色の稲達、農園の見たことのない果実は色とりどり赤、紫、緑、青、耳を澄ませば小川の水が流れ行く音この中を悠々に泳ぐ川魚。
「まるで別世界にいるようだなぁ」
老後はこんな長閑なところに家を買って農家をしながらのんびり過ごしたいな。
俺の園への第一印象はそんな感じだった。
俺は駅を出て暫く景色に見とれながら何もない土道を歩く。
ふと、時間が気になりスマホを取り出し時刻を見るAM9:50折り返しの電車が来るのはPM5:00だ、まだまだ時間がある。
5分程歩きながらこの絶景の写真を撮りまくる。
「おー良い写真が撮れた。と言うかここ圏外なんだ田舎すぎる」
そうこうしている内に俺は木々の生い茂っている、某となりのト○ロで出てくるような道を歩いていた。
うわっ十字路だ、どこに行くか迷うな。
んーここは昔からの方法で。
綾斗は適当な小枝を拾うと、十字路の真ん中に垂直に立てた。
「知らない土地で棒倒しして道を決めるとか、なんだか小学生に戻った気分だ」
ポトッ
小枝は俺が来た方向から見て右に倒れた。
右の道を見ると木々の量が増え、太陽の光があまり届いていない。
暗いところはあまり好きじゃない、でも決まったことは仕方ない道が分からなくなったら引き返せば良い話だし。
そう思いながらスマホのメモを開き、帰り道という項目を作る。そこに十字路を右に曲がったと記しておく。
AM10:14
「さぁ行くか」
なんだか今日は独り言が多い気がする。
ぎゅるぎゅる~
しばらく歩いていると俺の腹の虫が音楽会を開催。
そう言えば今日は遅刻だったから朝ごはん食べてないな。
先程おじさんに頂いた林檎を鞄から出す。
「おじさんは昼のデザートにしてくれって言ってたけど、別に今食べても良いよな」
綺麗な色をした光沢のある林檎を皮ごと齧った瞬間、俺のからだ全身に電撃が走る感覚を覚える。
「うんめぇ!」
口の中に弾けるみずみずしい果汁っ!
ヤバい!
今まで食べてきた林檎は林檎じゃない!
うますぎるっ!
うますぎます!
おじさん!
「おいしかったぁ。おじさん林檎農家で世界一取れるよ」
また独り言を漏らす。
寂しいのかな俺?
取り敢えずここどこ?
進んでいる方向は奥になるにつれて木々が密集しすぎているせいか隙間から差し込んでくる光が殆んど無く真っ暗だ。
これ以上先に行っても何もなさそうだし、正直歩き疲れた引き返して喫茶店でも探そう。
来た道を引き返そうと後ろに振り返る。
「あれ、人だ。さっきまで誰もいなかったのに」
と言うかあの人身長低いな子供か?
こんなところに一人で?
「ん?」
近づくにつれはっきり肌や顔が見えてくる。
顔がはっきり見えた時俺は固まり動けなくなった。
俺が見たのは子供のような体、しかし肌は真緑、一瞬見えた顔は醜くとてもこの世のものではない。
俺が見たのはそう………………
「………ゴブリン」
俺がそう呟くとその声に反応したのか鋭く尖った耳がぴくっぴくっと動く。
そしてこちらに体を振り向かせる。
俺と目が合った。
「ぎけぎゃぁぁぁぁぁああ」
ゴブリンが咆哮を上げる。
「うわぁっ」
俺はびっくりして腰を抜かす。
すると、森の方向からガサガサと音が聞こえる。
「嘘だろ…」
森の中からぞろぞろとゴブリンが出現する。
やばいやばいやばい。
なにこれ?
夢?
まだ寝てんの俺、ありえんだろこんなゲ―ムみたいな状況意味が分からん。
その時綾斗の肩に激痛が走る。
「いってぇぇああ」
肩にゴブリンが振りかぶったであろうこん棒が当たった。
「ぎゃあげげあぁぁ」
ゴブリンが再びこん棒を振りかぶっている。
これは夢なんかじゃない、紛れもない現実だ。
と言うことはあのこん棒をもろに頭で食らえば確実に待っているのは死だ。
よけろっ避けろッよけろ!
綾斗は右側に体を転がす。
こん棒が地面を叩く。
「「「ぎゃあげげああ嗚呼ぁあ」」」
こん棒を避けた事に怒っているのかゴブリンたちは咆哮を上げながら一斉に俺に向かって来る。
「そんな無茶なっ!」
綾斗は急いで体を起こしゴブリンたちから逃げるため森の奥へ走る。
ゴブリンたちはぎゃあぎゃあと絶叫しながら追いかけてくる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
約5分間死に物狂いに走った。おかげでゴブリン達は振り切れた。
吐き気がする、水が欲しいダメだ、もう立っていられない……バタリとそのまま仰向けに倒れこむ。
いつの間にか綾斗は森の最奥の大きく開けた空間に出ていた、そこは何故か木々開けており太陽の光が眩しいくらいに照っている。
「きもちぃ~じゃなくて!何だったんださっきの………ゴブリンだよな多分。ドッキリ!?いや、確実に殺しに来てたよな。ドッキリだったら訴訟もんだぞこれ」
俺は服をはだけて左肩を見る。
大きく腫れて青くなっている。
「うわぁ~痛そう。そっとしておこう」
とは言いながら。
「夢~イタっじゃないよな」
俺は肩をツンツンと突つき痛みを再確認する。
空を見上げる。
「どこの世界でも空は青いなぁ…ん?」
綾斗は先程まで青い空を見ていたのに今では真っ暗な空が落ちてこようとしていることに気が付いた。
「おいおいおい嘘だろ」
すぐさま疲労限界の体を動かし落下物の範囲から出る。
綾斗が避けた一瞬後、落下物はけたたましい音を立てながら着地した。
それは映ったものすべてを吸い込む様な白銀の鱗、何もかも噛み砕く強靭な牙。
そして覇気を感じる赤い瞳、何もかもを覆う巨大な漆黒の翼。
「見るからに最強生物って感じ。この世界のドラゴンさんは温厚で草食どうっ『ごごがぁああぁあ!!』なわないですよね!」
俺のことを気に入ったのかドラゴンさんは立派な牙を俺に向けてくる。
「うわぁぁあああ!」
「待てって!それはヤバい流石に死ぬって!」
改めまして僕は相神 綾斗日本生まれ日本育ちのただの高校生、そんな僕ですがただいま大きなドラゴンに追いかけられています。
どうやら僕、異世界転移したみたいです!
初めまして、神宮 創です!
次回の更新は3月15日になります!