実に厄日である
「待てって!それはヤバい流石に死ぬって!」
こんにちは。
どうも初めまして!僕は相神 綾斗日本生まれ日本育ちのただの高校生、そんな僕ですがただいま大きなドラゴンに追いかけられています。
何故こんなことになっているのかと申し上げますと…
時は遡り本日の朝。
「あやと~お母さん先行くからねあんたも早く起きて学校行きなさいよ」
母の言葉が一階の玄関から聞こえる。
「分かりやしたぁ…後十分ねてって、ところで今何時?」
枕元にあるスマホに手を伸ばして時間を見る……AM8:19
「遅刻だああぁあぁぁ!」
俺は5分で用意を済ませて自転車を全力で走らせる。
母さんもう少し早く起こしてくれてもいいじゃないかぁ。
しかしこんなことを言ってしまったら「明日から自分で起きなさい、洗濯もご飯も自分で。うふふ」と、怖い笑みをこぼされそうだ。
20分程自転車を走らせて最寄り駅に到着。
AM8:50
あちゃ~完璧遅刻だー
これで三日連続遅刻。
とりあえず連絡入れるか。
[どした?]
「すまん、とーや今日も遅刻するわ」
[はぁ?綾斗お前、今月入ってまだ二週間なのに5回目だぞ!?今月も遅刻指導、決定だな]
「あ~もう最悪だ先月先生に来月も指導だったら指導の課題二倍って言われてんのに」
[遅刻するお前が悪い]
「は、はい、そのとうりです」
[とりあえず先生には伝えとくわ。できるだけ早く来いよ~]
「今、駅だから二時間目には間に合う」
[分かった。それじゃ]
「おう、それじゃまた後で」
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
電話が終わるタイミングを見計らったかの様に電車が来た。
AM8:56
電車に乗る。
運良く席が空いていた。
ラッキー、というかなんだか今日は乗車している人少ないな。
まぁいつもと時間が違うしこの時間はこんなものなのかな。
────────────────────
[しゅ~てん~しゅ~てん~]
無機質な音声で目が覚める。
えーっと俺が通っている学校は終点の一つ前の駅でありまして、乗車時間が長い訳で自転車を先程まで全力で漕いでいたわけで電車の中は静かで、暖かく実に心地が良い。
そう、僕はそのまま二度寝をしたのだった…
「はぁ…遅刻して更に寝過ごすとわ今日は厄日だな」
窓の外を見るが、折り返しの電車の姿は無いようだ。
と言うかこの駅のホームは1本の電車しか停車できないように作ってある。
「はぁ仕方ない、この電車が折り返すを待つか」
[なお、この電車は回送電車に変わります。…]
おい、嘘だろ今日は本当についてない。
そう思いつつ電車を降りる。
彼此10分程スマホゲームとにらめっこしておりますが、一向に折り返しの電車が来る気配がしません。
と言いますかこの駅に降りてから、駅員さんは疎か人っ子一人見かけない。
流石に田舎過ぎるだろ、まるで俺だけしかいない世界にでも飛ばされたかと不安になる。
そんな仕様もないことを考えているとホームの階段を男性が上ってきた。
第一村人発見です!!
男性はホームをキョロキョロと見回している。
そして俺と目が合った[目と目が逢う瞬間~♪]と古いフレーズが頭をよぎる、すると珍しいものを見るような顔をして男性が近づいて来る。
男性は近づくにつれ悲しそうな顔になっていく。
「ちょいとお兄さん」
男性は寂しい笑顔で話しかけてくる。
なかなかハンサムである年は40歳手前といったところだろうか。
「はい、なんですか?」
「なんでこんなところに?」
「あ~それがですね…」
俺は朝からの出来事と寝過ごしてこの駅に来たことを簡単に説明した。
「えーそれは災難だったね」
「そーなんですよ。折り返しの電車も一向に来ないですし」
「え、お兄さん時刻表見てないの?」
「見てないです」
気さくなおじさんは驚いた顔をする。
なんだか嫌な予感がする…俺は急いで木製の時刻表を見に行く。
「嘘だろ、嘘だと言ってくれ」
少年は時刻表の前で泣き崩れる。
「田舎だから5時まで電車は無いんだ」
信じたくない事実をおじさんが優しく教えてくれる
「そんなことあるかぁぁぁ」
「事実だ少年」
芝居じみた言動で泣き崩れた俺の肩をたたく。
5時ってそんなことあるか?
もー最悪だ今日は学校休みだわ、母さんに怒られるんだろうなぁ、あー憂鬱だ。
しばらくの間落ち込んでいる俺を励ましてくれた駅員さん。
「本当に災難な一日だな」
「本当に…はぁ」
「まぁ人生に一日ぐらいこんな日があっても良いじゃないか、幸いこの辺りは自然に囲まれて空気もきれいだ都会には無い良さがある観光でもしてきなさい」
「そ、そうですねいつまでも落ち込んでいる訳にもいかないですし、この辺りを観光してきます」
「そうだ、これも何かの縁だ君にはこれをあげよう」
そう言ってポケットから手書きの地図と光沢のある林檎を手渡してきた。
「その林檎は私が愛情込めて作った物だすごく美味しいから昼のデザートにでもしてくれたまえ」
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ、それでは是非とも園の自然を堪能していってください」
そう言っておじさんは階段と逆方向に歩いて行ってしまった。
「さてと俺も駅を出るか」
階段の方に足を向ける。
途中,駅名標に違和感を覚えたがその正体はすぐに分かった。
「公共機関が文字間違えることなんかあるんだ」
綾斗は珍しいものを見たと思いながら階段を下りていくのだった。
終 焉
園
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