これが今の全力だぁーー!
開始の合図と同時にザックが地を蹴った。一瞬で間合いがつまりそこからはものすごいスピードで剣の応酬が始まった。
ザックの剣が優馬の顔面を切り裂こうとすると優馬はそれを完璧なタイミングで受け流した。そして優馬は二度のフェイントをまぜつきを狙うとザックはそれを完璧なタイミングで突き落とした。
2人は一歩も後退せずに斬撃を続けていたがほんの一瞬2人の斬撃が止まった。その一瞬でザックは構えを中段にした。
(なんで構えを変えたんだ?)
そう思った一瞬が優馬から隙を生み出してしまった。
その瞬間ザックの剣が優馬の手首を断ちにきた。しかし優馬の反応スピードはかなりのもので地面を蹴って後ろに跳んだ。しかしザックはそれすらもよんでいた。ザックの蹴りが優馬の右手首を直撃したのだ。
「しまった」
優馬がそう呟いたときには優馬の剣はかなり遠くに飛ばされていた。
(ラトーラの能力を持ってしても歯が立たないのか…)
「終わりだ。」
ザックが優馬に向かって突っ込んできた。
(やばいこのままじゃ)
そう思った優馬だったが苦しまぎれに一言ザックに言い放った。
「お前みたいな雑魚には絶対に負けない。」
そう言い放った瞬間突っ込んできていたザックがその場に立ち止まった。
「俺が雑魚だと…」
当たりの空気が一瞬にして変わった。
「俺は弱くない!俺は最強だ!」
その瞬間優馬の勘がこいつはやばいと察知した。
「逃げろマリー。こいつ我を忘れてやがる」
そう優馬が叫んだと同時にザックが両腕を前に伸ばして手を開いた。
「闇をも照らす怪光よ我に宿りてこの世の全てをうちはたん。これが光属性の上級魔法。怪光の一撃。」
詠唱を唱え終わるとザックの手の先からとてつもない大きさの光の光線が放たれた。
(やばい。どうする?よけるか?いや待て俺の後ろにはギルドがある避けたら中の人達は…)
優馬は何か覚悟を決め光線の方を向いて前に手を出した。
「俺だってイノ獅子の騒動があってから何も成長しなかったわけじゃない。これが俺の新しい魔法だ!初級魔法無属性のカウンターだーー!」
そうして光の光線は優馬の手の前で止まった。だが本来のカウンターなら跳ね返すはずがはね返せず、しかも優馬はだんだん後ろに押されていた。
「くっそう。負けてたまるかー!」
優馬の叫びも虚しく優馬は押され続けもう少しでギルドの建物に体が当たるところまできていた。その時後ろから誰かが背中を押した。
「優馬さん頑張ってください。絶対に跳ね返しましょう」
そういってマリーは全力で優馬の背中を押した。
「逃げろマリー。このままじゃお前まで巻き込まらてしまう。」
「何を言っているんですか優馬さん。パーティーっていうのはいつだって一緒なんですよ」
そう言ってマリーはにっこり笑った。マリーを守りたい。その気持ちが優馬の脳を最高レベルに回転させた 。
「成功するかもわからねぇ。だが今はこの方法にかけるしかない。もってくれ俺の体。俺はこの攻撃にやられることを拒否する。拒否」
優馬は自身に二重にラトーラをかけた。
「よし。これでいける。カウンターだーー!」
優馬は全ての力を出しそう叫んだ。そして光の光線は空中に向かい跳ね返された。
「やった」
すべての力を使い果たした。優馬は一歩も動くことが出来ずその場に立っていた。だが光線をはね返せたという喜びは一瞬にして消えた。
「俺は強い」
優馬の視線の先には手を前にしたまま立っているザックがいた。
「やばい」
優馬はとっさにザックが詠唱を唱えようとしていることに気づいた。
(俺の魔力はもう尽きた。このままじゃ…)
自分の能力のすべてを出し切った優馬はもうその場に立っていることしかできなかった。
「くらえ!ライトニングクラッ…」
終わった。そう優馬が思った時だった。
「そこまでだよ」
そう聞こえた時にはすべてが終わっていた。ザックは後ろの壁に吹っ飛ばされ目の前にはマントを羽織った1人の男が立っていた。
「魔力をほとんど使い果たした君も結構やばそうだね。弟子の失態は師匠である僕が片付けるべきか。」
そう言って男は右手を優馬の方に向けて開いた。
「王宮術式、超回復術」
詠唱を唱え終わると優馬の体が光輝いた。
「動ける、魔力も戻ってる。ありがとうございます。こんなすぐに回復させられるなんてあなたは?」
優馬はぴょんぴょん跳ね動けることを確かめながらそう聞いた。
「僕は国王直属の近衛兵で国王軍第2連隊連隊長のアイリッシュだよ。そしてそこにいるアイザックの師匠でもある。」
「国王軍のアイリッシューー」
そこに最初に食いついたのはマリーだった。
「マリー知ってるの?」
「知ってるも何もこの方はこの国で一、二を争うほどの剣士ですよ。そのスピード光の如く、その攻撃雷鳴の如し。閃光の異名を持つアイリッシュさんを知らないんですか?」
マリーはいつにもなく暑く語った。
「まぁとりあえずだけど、アイリッシュさん助けていただきありがとうございます。」
「礼には及ばないよ。自分の弟子の失態を師匠が見逃すわけにはいかないからね。私はこの後少し用事があるからアイザックを連れて去るとするよ。また後日アイザックには謝罪に行かせるからね。じゃあ」
そう言うとアイリッシュはザックを抱え、一瞬にして消えた。
「すごい、あれが王国で最強クラスの剣士か…」
〜そして王宮アイリッシュの部屋〜
「アイザック、やっと目が覚めたかい」
ベットから起き上がったザックにアイリッシュそう言った。
「師匠が何故いるのです?確か俺は斎藤優馬と戦っていたはず」
「また君が暴走したんだよ。それを僕がとめて王宮に連れ帰ったってわけさ」
何回も暴走をしたことがあったザックは記憶がないあいだにどんな事をしてしまったのかその不安でいっぱいだった。
「よしアイザック。お前には今から特別任務を頼む。」
「俺なんかが任務なんか受けてもいいんでしょうか?」
先ほど暴走してしまったことからザックかなり自信をなくしていた。
「もちろんだよ。僕の一番弟子の君だから頼むんだ」
少しの沈黙をおきザックは返事をした。
「はい!ありがとうございます。」
師匠に実力を信じてもらえている。それだけで今のザックは満足だった。
「任務の内容だけど、斎藤優馬のパーティーに入って彼の事を調べて欲しいんだ。」
なぜ師匠が優馬に興味を持つのかザックは全く理解できなかった。ザックが疑問に思っているのを見るとアイリッシュはさらに話を続けた。
「彼の能力ラトーラ今までに存在したどの魔法にも当てはまらない能力なんだ。だから君にはラトーラの能力について調べてきて欲しいんだ。」
「謹んで任務をお受けいたします」
〜数日後〜
優馬とマリーはいつも通り宿舎で朝食をとっているとひとりの男が話しかけてきた。
「おはようございます。斎藤優馬さん。この間は失礼しました。」
「おお。久しぶりだなザック。あれくらいあんまり気にしてないからそんなに気にするなよ」
この間は酷い目にあわされたなぁーと思い返しながら優馬は答えた。
「それは良かった。ところで1つ提案なのですが私を優馬さんのパーティーに入れてもらうことはできないでしょうか?」
優馬は一瞬反応に戸惑ってしまい。少し間をおき話し出した。
「ちょっと待って少し考えさせて」
そう言うと優馬の脳裏にはこの前のことがよぎった。
(たしかに実力は一級品だろう。でも前みたいに暴走されたらどうする?俺はあれをとめられるのか?でもやっぱり入れる事でのメリットはかなりあるな…)
「マリーはザックがパーティーに入ってもいいと思うか?」
優馬の結論はマリーに任せるという事だった。
「私は歓迎ですよ。ザックさんほどの実力の人が入ってきてくれたらクエストも周りやすくなりますし」
「よし。俺たちの答えは決まった。ようこそ俺たちのパーティーへ」
2人は満面の笑みでザックを歓迎した。
「これからよろしくお願いします。優馬さん、マリーさん」
優馬とマリーは一度アイコンタクトをとって何かを確認した。
「俺のことは優馬でいいよ」
「私のこともマリーで」
「では改めてよろしくお願いします。優馬、マリー」
〜そして同時刻王宮〜
コンコン
「国王様アイリッシュでございます」
「はいれ」
ドアを開けると大きな部屋に真っ直ぐと赤いカーペットがひいてありその奥に椅子に座るたくましい白髭を生やした老人とその椅子の横に1人の男が立っていた。アイリッシュはカーペットを真っ直ぐ歩いていき国王の少し手前でひざまづいた。
「面を上げろアイリッシュ。お前が呼び出しもなしに来るなど珍しいではないか何かあったのか?」
「はい。少しお伝えしたい事がございます。よろしいでしょうか。」
アイリッシュは顔を上げそう聞いた。
「ああ。申してみよ」
「例の許可系の魔法の継承者を見つけました。」
「なに!それは本当か?してどちらを見つけたのだ。」
今まで落ち着いて喋っていた国王がかなり興奮気味になっていた。
「拒否の魔法。ラトーラです。」
「そうかラトーラか。良く見つけたなアイリッシュ。ラトーラの保有者は一体どこにいるのだ?」
国王は再度落ち着き保有者について詳しく聞いた。
「今現在ラトーラの保有者斎藤優馬は始まりの地イニティウムにいます。とりあえず私の部下のアイザックにラトーラの能力について調べるように言い見張りにつけております。」
アイリッシュがそう言い終わったとき今までずっと黙っていた国王の横の男が口を動かした。
「アイリッシュ。見張りがアイザックで大丈夫か?国王様、私ならもっと優秀な見張り役を部下から出すことができます。」
「 口を慎めアルカナ。国王の御前であるぞ。貴様が1番隊の隊長であるからと言って私の部下を愚弄したことただでは済まさんぞ?」
2人が睨みあっているところに国王の声が割って入った。
「そこまでじゃ!今回の件はアイリッシュに全てを一任する。そしてだお前ら2人はかりにも帝国の治安と秩序を守る騎士のトップなのだぞ。もっと意識を持て!」
「はぁ!」
2人は同時にそう言った。
許可系の魔法の継承者、国王もが意識するその力とは一体。そしてそれがなぜ優馬に。
次章:優馬、ザック、マリーの新パーティーで挑む初クエスト。そして新たな街へ