こんな使いにくい魔法はありえないでしょ
真っ暗で何もないまるで無の世界のような場所が視界全体に広がっている。そしてかすかに遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
「優馬さん、優馬さん」
遠くから聞こえていた声がだんだん近くから聞こえてくるようになってきた。
(俺はあの時、迫ってくるイノ獅子に一か八か魔法を試してそれから…)
「イノ獅子は」
そう叫びながら優馬は起き上がった。優馬は周りを見回すと自分がベットの上に寝ていて周りに何人かの人がいる事に気付いた。
「やっと目が覚めたんですね。優馬さん」
そう言って1人の少女が抱きついてきた。
「苦しいよマリー。それよりイノ獅子は一体どうなったの?」
マリーは優馬から離れあったことを話し出した。
「そうですね。それにはまず私達が優馬さんのもとに戻ってからのことをお話します。私達が来たのは優馬さんが目覚める3時間なんです。それからのことを今からお話します。」
〜優馬が目覚める3時間前〜
「早く、急いで 」
大声でそう言いながらマリーは大勢の人を引き連れ優馬が足止めをしている場所に向かっていた。
「見えました。急ぎますよ」
そしてマリー達一行は優馬が闘っていた場所に辿りついた。
「えっ」
辿りついたマリー達が目にしたのは、地面に倒れている優馬、そして優馬の直前で止まっていたイノ獅子の姿だった。
「優馬さん」
マリーは周りのことなど全て目に入らず優馬に駆け寄った。
「誰か光属性の回復魔法を使える人はいないかー」
近くにいた男が周りの人達に呼びかけていた。
「俺が回復させるよ」
そう言って1人の男が優馬の前でしゃがみ胸のあたりに手を当て詠唱を唱え始めた。
「光の加護を持って安らぎを与えたまえ回復術」
そう唱えると男の手が光り輝き、優馬の身体もうっすら光が覆った。少しのあいだ男は優馬を回復させるとその手を止めた。
「大丈夫。命に別状はないみたいだよ。これは魔力の使いすぎだよ。このまま病院に運んで寝かせておけばじきに目覚めるよ。動けなくなったイノ獅子達は他のパーティーに任せてこの子を病院に運ぼうか」
そう言って男は優馬を担いだ。
「では私もついて行きます」
「おう」
そして2人は病院に向けて歩き始めた。
「そして病院に着いて現在に至ります。そしてさっき停止していたイノ獅子達を全部討伐したとの報告がありましたよ。しかし止まっていたイノ獅子だけは私達が離れてすぐ急に動きだしたそうですよ。」
「状況は大体わかったけどどうしてイノ獅子は俺の目の前で止まったんだ?」
今の現状を理解した優馬はどうして自分が助かっているのかすごく疑問に思った。
「優馬さんはイノ獅子が迫ってきたとき何かした記憶はありませんか」
優馬は少し思い出すのに手間取ったがだいたいのことを思い出し話し始めた。
「俺が倒れる前の最後の記憶は”イノ獅子に来るなと叫び拒否と唱えた…」
その言葉を聞いてマリーは1つの答えにたどり着いた。
「多分ですけど優馬さんの魔法の能力がわかりました。膨大な魔力と引き換えに現象などに対する拒否的な発言をほんとうに実行させる能力なのではないでしょうか」
「俺はあの時近づいてくるイノ獅子に来るなという拒否する発言をいい魔法を唱えた。確かにそれだとつじつまが合うな。」
そう言った後少し間をおきまた優馬が喋りだした。
「かなり使い勝手のいい能力かもしれないな。自分に攻撃が当たる事を拒否すれば絶対防御になれる。でも一回使うには膨大な魔力がいるしさっきの話し的に時間制限もあるみたいだからその辺を気をつけて使わないとやばいかもな」
「まあ少し休んで元気になったらパーティーメンバー募集しましょう。私はこれで失礼しますね。」
まだ万全の状態でない優馬にずっと話させているのは悪いと思いマリーはそう言った。
「おう。じゃあまたな」
〜数日後〜
優馬は完全に復帰しギルドの庭でマリーに魔法について教えてもらうところだった。
「マリー。見てくれ。この前のクエストの報酬でビームサーベルを買ってみたぞ」
そう言って優馬は腰にさしてあった丸いつかを取り出しビームサーベルをマリーに見せた。
「なんでビームサーベルなんですか?」
「うーん。なんとなくかな。」
よく考えてみると特に理由もなく買ったなぁと思い優馬はそう言った。
「そうですか。そんな事より魔法についての授業始めますよ」
「おう。」
優馬の回答に少し呆れたこともありマリーは本題を話し始めた。
「優馬さんの肩に乗っている召喚獣。の妖精とできる連携魔法について教えますね。」
「あ、うん」
そーいえばシアのこと召喚獣って言ってたなぁと思いながら優馬は返事をした。
「召喚獣にもよりますが合技などの魔法を使う事も出来るんですよ。」
「そんな事できるのかシア?」
喋りかけて優馬はしまったぁぁーと思った。
(そーいえばシアは喋らないみたいな設定になってたんだった。そもそも召喚獣って喋らないのかな?)
「え、優馬さんの召喚獣喋るんですか?」
案の定その質問をされてしまい優馬は戸惑いながらどう答えればいいか悩んでいた。仕方なく本当のことを言おうとした優馬を1つの声がさえぎった。
「君たちがイノ獅子の群れから街を救った斎藤優馬さんのパーティーですよね?」
呼びかけてきた方に立っていたのは金髪でいかにも剣士という格好をしている優馬と同じぐらいの歳の青年だった。
「うん。そうだけど君は?」
「ごめん挨拶が遅れたね。僕は剣士のアイザック。君と手合わせしたくて来たんだよ。」
「え、なんで俺なんかと?」
「街を救った英雄と手合わせしたくてね、」
(まあ新しい武器と魔法も使ってみたいしやろうかな)
優馬は少し悩んでから返答した。
「いいよ。今からここでやろうか。かなり広いし前にここで戦ってる人もいたから大丈夫だと思うよ」
「よし。じゃあやろうか」
2人は少し間合いをとりマリーもその場から離れた。
「マリーさんあなたに試合開始の合図を言ってもらっても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
優馬、アイザックが構えながらお互いを睨み合いそことは少し離れたところでマリーがどうなるのかと少し期待しながらみている。
「始め!」
マリーの掛け声と同時に2人は詠唱を唱え始めた。
「闇を切り裂く神剣よ我に答え現れたまえ。こい!光剣マスターソード」
先に詠唱を唱えたアイザックの足元から光輝く大剣が姿を現しアイザックはそれを手にとり構えた。そして優馬も詠唱を唱えた。
「アイザックより弱いことを拒否する。拒否」
そう唱えると優馬は腰にさしていたビームサーベルを取り出し構えた。
「行くぞアイザック。これが今の俺の全力だ。」
「イノ獅子から街を救った英雄の実力とくと見せてもらうぞ」
そうして2人の戦いは始まった。