異世界ってこんな厳しい世界なの?
窓から日が差し込み部屋全体が明るくなっていた。まぶたの間からも日の光が明るく照らし優馬は目を覚ました。
「はぁーあ」
ゆっくりと起き上がりのびをしながら優馬は周りを見回した。今までの事が全て夢だったのではないかと少し期待していたからだ。そんな期待もむなしく昨日と同じ光景が周りには広がっていた。
ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ
急に部屋に鳴り響いた音が寝起きでぼーっとしていた優馬を完全に目覚めさせた。音がしている方には電話があった。こんなところに電話があったのかー、と思いつつ優馬は受話器をとった。
「もしもし、そちら優馬様のお部屋でお間違いないでしょうか」
それはギルド受付のカンナの声だった。
「はい。そうですけど。」
「では用件の方なのですが、優馬様のパーティーに参加希望者がおられるのでその方との面接を午前10時頃からお願いできますでしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ。」
意外と早いんだなあと思いつつ優馬は即答した。
「では相手の方にもそう伝えて起きますので10時頃になりましたらチェクアウトの機械の隣に御座います階段から二階に上がり第2会議室にてお待ちください。」
「はい。わかりました。」
そう返事をすると受話器からぷーぷーという音が聞こえたので優馬も受話器を置いた。
電話を切ったあと身支度を整え優馬は部屋のドアを開けた。
「うわぁ〜」
ドアを開けた瞬間目の前に立っていたシアに驚き優馬は声を上げた。
「おはようございます。優馬さん本日もよろしくお願いします。」
「おはよう、シア。今日もよろしくね。」
驚いてしまった事を恥ずかしく思い少しおどおどしながら優馬はそう言った。
そうして二人は地下一階のレストランへ向かった。
「そういえばレストランは有料って言ってたけど、この世界のお金持ってないじゃん。」
唐突に思った疑問だったがよく考えてみると食事が食べれないという事を思い優馬はかなり焦っていた。
「そこは心配ありませんよ。」
シアがにっこり笑いながらそう言った。
「へ?」
「この世界に転生された方は最初の1ヶ月だけですが必要最低限のお金が神様から支給されていますのでギルドカードにクレジットとして入っていますよ。」
ギルドカードってクレジットカードとしての使い道もあるのかぁと考えながらも優馬はほっとした。
そうして食事が終わり会議室に向かった。
「突然ですが面接の相手の方が私について聞いてきたとき説明が面倒だと思うのでこれから私は姿を変えてガイドとしての役目を果たしたいのですがよろしいでしょうか?」
「別にいいよ」
特に断る理由もなかったので優馬はすんなり返事をした。そう答えたのを聞くとシアの周りが光り輝いた
「シアその姿は…?」
「はい。とりあえず妖精の姿になって見ました。面接の時に聞かれたら召喚獣ということにしといて下さい。」
シアは5センチくらいの羽のはえた薄ピンクの妖精に変化しちょこんと優馬の肩の上に乗った。
「では部屋に入りましょう」
シアの声は 小さくなって少し声も幼い感じになっていた。
そうして部屋に入ると椅子が二つ向かい合っておいてあった。優馬は奥の椅子に座りパーティー参加希望者を待っていた。
トントントン
「どうぞ〜」
「失礼します。」
ドアを開けて入ってきたのは長い白髪で目の色も白い、肌も白いおどおどした女の子だった。
「どうぞ座って下さい」
「では失礼します」
礼儀正しいくていい人だなぁと思いながら優馬は面接を続けた。
「とりあえずは基準とかもないから加入はいいですけど職業と名前だけ教えてもらっていいですか?」
「名前はマリーネです。職業は魔法使いをやっております。」
「オッケー。マリーネさんこれからよろしくね。」
優馬は明るくそう答えた。
「あのー。1つお聞きしてもいいですか?」
シアがおどおどしながら質問した。
「ん?なに?」
「肩の上の妖精は優馬さんの召喚獣なのですか?」
「うんそうだよ。あと優馬さんじゃなくて優馬でいいよ」
マリーネはすごく驚きおどおどしていたのが興奮へと変わり優馬に聞き返した。
「そ、その年で最高ランクの召喚獣の1つ妖精を召喚できるなんて。す、すごいです。あ、私の事もマリーと呼んで下さい。」
「うん。よろしくねマリー」
最高ランクの召喚獣が初心者の冒険者の肩に乗っていたら逆に怪しまれるんじゃないのか?と思いながら優馬は返事をした。
そして2人はギルドカウンターに行ってパーティー申請をすませた。
「なあマリー。今から魔法って教えてもらうことできるか?」
「別に大丈夫だけど私で大丈夫かなー。」
パーティー申請の間いろいろ話してるうちに2人はかなり仲良くなってお互い敬語だったのもだんだん消えてきていた。
「大丈夫だと思うぞ。とりあえず1時に中庭集合でそこで魔法の練習ということで」
「了解!」
そして1時になり2人は中庭に集合した。
「優馬は魔法のことについてどれくらい知ってるの?」
「ほとんどなにも知らないかな?」
マリーはどこから教えようか考えていたのか少し間をおきもう一度話し始めた。
「じゃあ魔法の種類と属性について話すね。」
「あぁ。よろしく頼むぞ。」
優馬は魔法とはどんなものなのか早く試してみたくてうずうずしていた。
「じゃあまず魔法の種類について説明するね。魔法は全部で3種類あって、1つ目は攻撃魔法。文字通りモンスターを攻撃する魔法だけどその他に防御の魔法もこれに入るわ。2つ目は支援魔法。これは味方の攻撃力や防御力を上げたりするほか敵の攻撃力、防御力を下げたりする事もできるわ。最後の1つ回復魔法は味方のMPや体力を回復できる魔法。質問はとかってあるかな?」
「とくにないよ」
結構わかりやすい説明だなぁと思いながら優馬は話しを聞いていた。
「じゃあ次は魔法の属性について話すね。魔法に属性があるのは攻撃魔法だけで同じ属性でも人によって呪文は全然違ってくるの。属性には炎、水、氷、風、雷、光、闇の6種類の他に個有魔法という部類があるの。」
「へぇー。それでマリーは何の属性なの。」
「私は個有魔法の中の灰の属性で触れたものすべてを灰に変えたりできますよ。」
(だからかぁ。魔法使いって人数が少ないって聞いてたのになんでこんなパーティーに入ったのかと思ったらそのよくわからない能力のせいなのかぁ)
優馬は心の中でこう思っていた。
「では優馬さんの属性も見ていきましょう。今からやるのは水晶診断です。水晶に手を当て中に出る模様を見ます。もし炎なら中に炎の模様が出てきますよ。ではどうぞ」
というとマリーはポケットの中から小さい水晶を取り出し近くにあった石の上にのせた。
「よし。」
そういって優馬は水晶の上に手をのせた。
「え、嘘でしょ。」
「何属性だった?」
ここで見たこともない属性を出し伝説として語り継がれるのではと思いかなり期待しながら優馬は聞いた。
「何も出てないんです。」
「え?」
優馬は少し戸惑いながらもぽかーんとしていた。
「これはすごいことですよ。どんな才能がない人でも絶対何かの属性は出るのになにも出ないなんてこれは、何千万人に1人いや多分人類始まって以来のことだよ」
マリーはかなり興奮していたが優馬は魔法を使えないということにかなり絶望していた。
「どうしてこうなったーーーー!」
優馬の叫び声は庭全体に広がっていた。