第八話:俺に振り回されたあいつが町中を振り回している
主な主要云々
トリス・プラス
ペイラー:女魔術師。
ダブルヘッド
眠り姫たち
セイザー:リーダー。別名姫。女魔術師。
ニール :女狙撃手。
乱舞シュート
ポイル :リーダー。
ジャバー:副リーダー。
パレットカラーズ
パープル:男猟兵。リーダー。
闘陣組
ティーバー:リーダー。男剣士。
カッシュ :副リーダー。男剣士。
小間物屋 店長ヒューラー(ヒーターとクーラー)
防具屋 店長マッシュ、弟子チョッカー。
武器屋 店長バケット
薬屋 店長メルディ
依頼窓口 ショーン
食堂 ヨッカー
宿屋ロビーには大勢の冒険者たちがごった返している。人酔いしそうだな。
さて、トウジの演説だな。どう切り出すか。そしてトウジはどんな切り札を持ってんのかね。そしてみんなどんな反応するもんかね? 楽しみで仕方がない。
「今回は騒がせて済まなかった。まずお詫びを申し上げる」
一同静まり返っている。
「さらにはミリアを通じての依頼に応えてくれた、トリス・プラス、ダブルヘッドのフルメンバー。そして眠り姫たち、乱舞シュートの参加してくれたメンバーたち。さらに、情報収集に駆け回ってくれたパレットカラーズ。感謝申し上げる」
全員だが、特に名前を挙げられたチームは疑心暗鬼の様子。ありゃ、報酬出せるのか? という顔つきだわ。
「報酬……というか、謝礼というか。物納だが用意はしてある。みんな満足してもらえる内容であることを確信している」
「あたしはあんたらが持つ術具の方に興味あるんだけどねー」
「ペイラー、私だって興味あるの! でも今はトウジの話聞きなさい!」
「姫ぇ、本音はまだ出さない方がいいですよぉ」
「術具の話題はまた後程。その報酬、謝礼も含めた新たな……そう、提案をしたい」
さて、どんな話がくるかね? 身内にも明かしてないんだよな。
「濁龍についてだ。俺たちファイヤー・クラックルは、濁龍討伐に向かうつもりだ」
「寝た子を起こすな という意見もあるぞ。説明聞かせてもらおうかな?」
「もちろんだ。カッシュ。濁龍を討伐する切り札は俺たちファイヤー・クラックルが持っている」
ざわついてんなぁ。ま、しょーがねぇか。
「だが問題がある。黒装束の連中だ。奴らの目的は龍を守るということもあるようだが、それ以上に、下手に濁龍に近づくやつからいたら殺す という意識があるようだ。追い返す、討ち払うなどではなく、具体的に息の根を止めにかかるということだ」
「お前らの容態で、そいつらは普通じゃねぇとは思ったが、やべぇやつだったんだな。俺たち闘陣組はヤボ用でいなかったから手伝えなくて済まなかった」
「気にしないでくれ、ティーバー。しかし奴ら相手にまともに一対一でかかっても倒せる相手じゃないと思えた。だから、全員に黒装束殲滅に当たってほしいと思っている」
「奴らが気が変わって町に向かって襲ってきたら非常事態だからな。濁龍云々は聞かせてほしいところはまだあるが、黒の連中は全滅させないとまずいな」
「その通りだ、パープル。まず濁龍討伐の手順を言うと、一番目に黒装束を全滅させる。二番目に討伐のための魔法陣を作るための場所の確保。三番目にそのための整地。四番目に魔法陣作成。五番目に濁龍に術をかける。五番目は討伐にすぐにつながる。失敗することはない」
「五番目は疑わしいねぇ。手順としてはわかりやすいが、話はそれだけじゃねぇだろ?」
「あぁ。みんなには黒装束討伐のための準備の大部分を、ファイヤー・クラックルからも負担するつもりだ。今回の依頼の報酬とこの濁龍討伐の報酬も併せたいと思う」
「そいつぁ無理だろうよ。無理無理。巨額だぜ? どこにあんのよ、そんだけの物資が」
「ジャバー、それがあるんだよ。ただ、ここでいきなり見せるのもちょっと問題がある。合理的に進めたいので……誰か武器屋、防具屋、道具屋、薬屋の全員も呼んできてほしいんだが。それからヨッカーさん、玄関前の広い場所を借りたいんだが」
「そ……それはいいけどよ……大風呂敷すぎねぇか? 大丈夫か? 店の人呼び出すのはショーンに頼むけどよ……」
何というか……みんな、まともな人間じゃねぇって見てんぞ。大丈夫か?
「みんな、外に出てくれ。謝礼、報酬の件の説明もしたいので」
チーム所有の財宝の話してたっけな。まだ見たことないが、どんだけだよ。
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「年寄りに長く歩かせるなや」
「年寄り扱いすんなっていつも言ってるじゃないですか。わがままですよ?」
「やかましいぞチョッカー!そんなんじゃまだ店任せられんわ!」
「で、何で呼ばれたんです? しかもこんな大勢揃って。めんどくさいんですけどね」
「すまない、ヒューラー。バケットさんもメルディさんも来てくださってありがとうございます」
「いえいえ、ところで何をするんです? 話によると、濁龍退治するとか。できればなるべく触れない方がいいと思うんですけど……」
「まずチョッカーさん、ヒューラーさん。これから出すモノの鑑定を願います」
「はぁ?」
「ここで? そんな用件は店で依頼してくれ。なんでこんなとこで」
「ミリア、アレを全部出す。崩れないように杖で縦横百イーン、高さ三百イーンの枠を作ってくれ」
「は、はい」
杖の力なんだろうが、使うのはミリアだ。どんどんできあがってくる。様になってんなー。
えーと、つまり縦横百メートルで高さが三百メートルか。
箱は出入り自由らしいな。トウジの手の先からなんか変なものが・・・・・・。
「あれはゲートだね。異空間倉庫の扉だよ。わたしは全部は見たことないけど」
「で、そのゲートを広げて一気に箱の中に出すってことだ。久々に全部見るな。どんだけ残ってるかな?」
「ほとんど使ってないから、手にしたときとあまり変わらんと思うぞ」
「よしっ。あとは出尽くすのを待つだけだ」
「お疲れ、トウジ」
見る見るうちに枠に隙間なくゲートから現れる宝石の塊の数々。全員呆気に取られている。
「うそぉ……何これ……」
「お……おいコラトウジ!い、いつこんなに宝石手に入れたんだよ!……まだ出てくんのかよ……」
「依頼を受けて帰る途中で地盤が崩れて、さらに底に落下して。そこで五体くらいの……濁龍に比べりゃかわいいもんだったけど、宝石で出来た幻獣を何とか全部倒したらこれになって」
「ちょっとトウジ!枠からあふれそうよ!」
「どうしよう……付け足せる? 枠……」
ミリア、苦笑い。
「謝礼、報酬、すべて賄えるだろうな。だが……」
「こいつで何かを買うとなると……あぁ、なるほどな、そういうことか」
「どういうことよ? ポイル」
「トウジは物納っつったんだよ。金銭の額で満足する報酬ではなく、物としてだ。そして合理的に次の依頼の報酬も兼ねて、ということなんだよ。ところが次の報酬の依頼はあの黒づくめ」
「あぁ、並の腕前や道具……あっ!」
「そゆこと。こいつで道具や武器を作れってこった。だから店の連中も呼んだんだ。額の鑑定も兼ねた素材の選別のためにな。トウジの奴も考えるじゃねぇか」
「……武器としては額は下がる。だがそれでも……悪くねぇな。とりあえず救出の謝礼分に不満はねぇ」
「黒装束二十四人討伐を改めてみんなに依頼したい。ただし、この依頼の報酬はここにあるすべての宝物を前払いで」
「俺たち全員にこれ全部……。足りねぇと思ってたら、多すぎるなんてモンじゃなかった……」
「不満は出るわきゃねぇけどさ……」
「アレを全部あげる か。道理で任せてくれって言ったわけだ」
「姫、闘陣組、パレット、乱舞、色々チームがいて、それぞれリーダーすごいけどさ。うちのリーダーのトウジも十分リーダーしてんじゃん」
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある って言い方思い出した。相変わらずどんな世界だったか思い出せねーけどな」
「生還直後の雰囲気が一気に逆転した感じするね、スタン!」
「で、全額前払いの条件は、全員の無事の生還。準備と報酬、前回の依頼合わせて十分間に合うと思う。お店の皆さん。装備や道具などの素材に適したものの選別、鑑定をお願いできますか?」
「今日中には終わりそうもないです。明日一日中かかりますよこれ……。なんという膨大な用件……。私達にも報酬をいただくレベルですよ」
「たわけがあぁぁ!」
「ちょ、爺さんいきなりでけえ声出すなや」
「鑑定眼を鍛える絶好の機会ではないか! ましてやこいつらを加工して品物を揃えるのも、鍛冶や小細工士として腕を磨く修行にもなるわ! それを感謝こそすれ、報酬だぁ? チョッカー! 貴様何様のつもりじゃ! そんな意地汚ぇやつを弟子にしたかぁないわ! 出てけ!」
「爺さん、公衆の前で興奮しすぎだし、そゆことは内輪で言ってくれ」
「じゃかましいわ! 横から口挟むな、ジャバー! いいか、チョッカー! 町の危機を救おうとあれこれ知恵を働かせて、あげくテメェの体まで張って何とかしようとしてくれた若ぇモンに向かってその文句は一体何だ! そんな無礼モンのお前ぇを追い出して、この仕事をわしが引き受ける! その若ぇモンのためにこの老いぼれがしてやれることなんざこれしかねぇわ!」
「マッシュさん……」
「名前で言うな! ジジィでええわ! いいかトウジ、わしゃ全身全霊かけて取り組むわ。ワシとて鑑定眼は並じゃねぇ。お前さんはお前さんで頑張んな。そっちの手が足りんなら、わしとて前線に立てるからな」
「いや待て待て。決めつけんなやじーさん。龍は俺たち冒険者……」
「もちろん龍を倒してもらうのが一番いいんじゃがな。じゃがなポイル、お前さんらが頼まれた依頼は龍を倒すことじゃなく、黒装束とやらを倒すことじゃなかったかの?」
「あ……」
「そういえばあの映像では、濁龍は黒装束のために何かをするってことはなかったよね?」
「濁龍の身代わりとなって暴れることを目的とするなら、もうすでに被害は目に見えてておかしくはない。そもそもトウジたちと戦ったときに、四、五人くらいで相手にする必要はないんだ。一人くらいが離脱してアジトに戻って全員引き連れて全滅させることだってできたはずなんだから」
「つまり黒装束の全滅は龍が動き出すきっかけにならないということだ。逆に、黒装束の健在は、濁龍が動き出す手助けをしている、とは言える」
「濁龍への片思いってやつか。復活の手伝いを目的とするなら、そいつらがいなくなりゃ復活までの期間が伸びることにもなるし」
「……師匠、すいません。選別にかかります」
「……チョッカー。この者たちに失言をした罰じゃ。今は昼過ぎの時刻。宿の朝食時間前まで、すべての石を硬度別に武器各種、防具各種、道具各種、薬剤各種に振り分ける作業とそれぞれの店の加工場への運搬を終了させろ」
「はい!任せてください!」
「熱血だねぇ……めんどくさい仕事はとっとと終わらせたいから、道具だけにしか適さないものを選別させてもらうよ。どんな道具を作るかは、素材の質量を優先してこっちで勝手に決める。欲しい人の都合に合わせてたら、品物が劣化しちゃうからね。ま、今回の用件に合わない道具は極力避けるから心配無用だよ」
「すいません、ヒューラーさん。お願いします」
「俺らもやるか。ねぇメルディさん」
「はいバケットさん。住民は町中のことを受け持って、あの人たちをしっかり支えましょうか」
「じゃあここ、お任せします。よろしくお願いします」
「はい、任されました!」
「みなさん、もう一つ提案があります。また中へ」
「出たり入ったり、呆れたり驚いたり、忙しい一日だな、ティーバー」
「だが、弟分が成長していくようでうれしいかぎりじゃないか。スラック」
トウジを見る。部屋を出る前に見た、引き締まった顔つきがまだ解けない。まだ何かやらかすか? 楽しみじゃねーか。
だんだん物語が終わりに近づいてます。




