第十四話:俺たちは、知らない運命にすでに振り回されていた
時系列
暖火の十三に転生。歓迎会。
同月十四 ミスラスに町の危機を聞きに行く
同月十五 遠風山脈遠征のための準備 防具屋と市場へ
同月十六 遠風山脈で黒装束を確認
同月十七 ミスラスに確認と能力追加
同月十八 再度遠風への準備
町案内
武器屋店長:バケット(男。武器の鍛冶も)
薬屋店長:メルディ(女。調合も)
今日は暖火の十八。俺の世界では一週間なんて単位があったっけな。
俺がこの世界に来てからまだ一週間たってないんだよな。いろんな奴に絡まれたり、命の危機まで感じたり。人の体だったら絶対寝込んでたわ。
二度目の遠風山脈来訪。今回は……火中の栗を拾う だっけか?我ながらよくこんな言葉覚えてたなと思うが。
しかし栗と呼ぶにはあまりに割に合わなさそうな作戦。火と呼ぶにはあまりに温度が熱すぎる。
今回の準備は、さっちんとトウジが入れ替わる形で二手に分かれて調達。武器屋と道具屋に向かう。
「今日は賑やかだな。そ言えばこないだは一日滞在するとか言ってたんじゃなかったか?」
「やぁ、また来たよバケットさん。明日また同じ時間に出発するんだ」
「ただの武器を新調するなら今からなら間に合うかな。どうする?」
「いや、新調より予備の武器でいいのはないか見に来た。つっても一昨日来たばかりだからなー」
「そうだな。鍛冶なら防具屋のジジィもできるが、仕事の速さは対して違わないしな」
「なんか冷やかしみたいでごめんね? バケットさん」
「一日単位で品ぞろえが変わることもある。気にすんな、嬢ちゃん」
「また来る。すまないな」
「おめーはもちっと愛想よくしろ。それだけだ、ランス」
口数の少なさの安定感抜群だな。
「さて道具屋だが」
「ヒューラーっつったよな。大丈夫かな」
「大人しくしてるさ。前とは違った能力も持ったしな」
「じゃあいくか」
「……またトウジか」
「あぁ、そうだ、今日は普通の紐もらおうか」
「予備も欲しいから……三イーン」
「普通の紐なら三百ペイス」
こないだのことをすっかり忘れてるかのようだな。まぁ俺も自重してるからな。
「あ、薬屋も行くんだった」
「じゃあここではこれだけだな」
「三百だな、まいどあり」
ランスより口数少ないのも珍しいな。
にしても、前回の絡みは何だったんだ。経営が苦しいだけか? ま、どーでもいいか。
「薬屋さんの方がいろいろ用事あるよね」
「用事がいろいろあるときはランスが便利」
「何でだ」
「いらっしゃい。トウジさんとランスさんとミリアちゃんか。今日は何かな?」
「ランス、頼んだ」
「メルディさん、能力強化、能力延長、即効性解毒、麻痺、治癒、痛覚緩和。栄養補給と気力回復。あとはないか……な。遠征延長も考えて三日分ほしいかな。」
「はいはい、ちょっと待っててねー」
なるほど、注文するのに時間かからないのか。納得。
「ちょっとお値段張るけど大丈夫?一万三千ペイス。端数はオマケ」
「あります。オマケしていただいてすいません」
「大丈夫大丈夫。それよりちゃんとみんな一緒に帰ってきなさいよ」
「お気遣いありがとうございます」
「うん、ミリアちゃんも頑張ってね」
「じゃ、失礼しまーす」
ほのぼのしてていい所だな。つくづく居心地いい感じだわ。
「昔はもっといい所だったんだぜ。人ももっと賑わってた」
「濁龍のせいか」
「あぁ。この町に世話になった。俺も生まれは別のところだが、俺の親も冒険者でな。三才ごろから住んでたらしい」
「俺とトウジの両親が同じチームでな」
「それは初耳だぁ。へえぇ」
「チーム結成がこの町だったんだと」
「危機の時は避難所の防衛に当たってた。子供のチームが前線だったという」
「子供といっても、もう大人扱いだったからな」
「そうか……元凶、倒したいもんだな。俺の持ち主のためにもな」
「スタンは……発想が斬新で、いてくれてありがたいと思う」
「ランスから言われると特別にうれしいなオイ」
「そのためにはまず、腰据えて取り組まないとな」
「この先何があるか、一気にわからなくなったからな」
「濁龍倒したら、祝勝会やりたいねっ!町中あげてさ!」
「それはいい。準備は任せる」
「おう!任せ……任せる? 任せろじゃないのか」
「うむ、任せる」
そりゃねーよ と言いながら三……いや、四人で爆笑する。
良い日が続くといいな。こいつらの沈んだ空気、もう見たくねぇよ。
─────しかし、ファイヤー・クラックル六人全員が祝勝会に参加できる日は、永遠に来ることはなかったのである─────




