第十話:俺たちは俺たちの作る雰囲気に振り回されている
登場する主要云々
ダブルヘッド:十人編成。数名欠けた二チームが合併。ファイクルとは友好的。
パイルブ:リーダー。男剣士。合併前の一チームのリーダー。
スピッツ:副リーダー。男剣士。パイルブと別チームの元リーダー。
ウィード:女射手。まだ未登場。
パレットカラーズ:七人編成。未登場。
翌朝。ミリアは食欲がないとか言いながら食事を摂るが、普段は人並み以上の食事量。ようやく人並みになった感があるのだが。
それでも住民の食事と比べると五割増しという感じなのは、俺も彼らに感覚が毒されているとも言えるんだろうな。
日が変わっても沈んだ空気は変わらない。言葉少なに玄関から出る辺りで、ひと際大きい声でまた呼びかけられたっぽい。
「よーぉ、ファイヤー・クラックルの面々のみんな、元気だったかー」
「パイルブにスピッツか。久々だな」
「遠征兼ねて里帰りしてたんだよ。ようやく戻れた。にしても朝に宿へ到着ってーと、時間の感覚がずれそうだよな。そちらはこれからお出かけか」
片方はしゃべった後に豪快な笑い声。仲がいいチームってことだな。
「こっちも遠征が終わってな。ミスラスのところに報告に行くとこだ」
「てぇこたぁ夜遅くに戻ったのか。そいつぁご苦労さん。で、そのあとはここに戻るよな?」
「あぁ、だがいつ戻るかわからねぇ。ちと込み入った話になるからさ。どっかに付き合うって話なら、後日改めてお願いしたいかな」
「なんか様子がいつもと違うな。何か問題でも?」
「あー……まぁそんなに大したことねぇよ。それよりそっちは二人だけ?」
「夜が明ける前に到着したもんだからここで飯食えなくてな。まだ閉店してねー飲み屋で飯食ってきたとこ」
「ほかのやつらはついてすぐ部屋に行った。まだ寝てんじゃねーか?」
「ま、それも構わんさ。報酬も高めだったから二つ三つ仕事休みにすっから」
二つ三つ?あぁ、二、三日ってことか。
「にしても部屋の予約も取れなくなりそうで焦ったわ。闘陣組帰ってきてたっぽいな」
「昨日帰ってきたら組長さんとお話ししたよ。一昨日は市場で組員さんたちと立ち話しした」
「組長、組員って」
ミリアの言葉に二人が爆笑している。
「だがそちらも大所帯だから部屋割り大変だろう」
「組もそうだったけど、パレットカラーズの七人全員も宿泊してた。」
闘陣組は帰ってきたときに助け舟してくれた二人が所属してたチームだったな。今ミリアが市場でって言ってたな。あの二人も同じチームだったか。パレットカラーズは初めて聞く名前だ。
「闘陣組は八人だっけ? でもおめーらのダブルヘッドだって勢ぞろいしたら十人くらいになるだろ? ごちゃごちゃしすぎだわ」
「ほかにもシングルで動いてるやつも泊まってるしな。ま、賑やかなのは何よりだ」
「トウジ、そろそろ行かないと。じゃまた機会があったらご一緒しましょ?」
「さっちんの美しい顔を見れないなんて寂しすぎるぜー」
「俺はミリアの方がいいなー」
「そんなこと言っていいのかなー? ウィード達に言っちゃうよー?」
「「ごめんなさい勘弁してください」」
会話だけでどんな連中かわかりやすいってのは安心できるな。特定の相手に長時間ほのぼのとした雰囲気ってのは初めてじゃないか? いつかおしゃべりに混ぜてもらいたいもんだがなぁ。
「じゃあまた」
「おぉ、達者でなー」
「あの人達はね」
近くから人の気配を感じなくなってからミリアから話しかけてきた。
「ダブルヘッドっていうチームなの。さっきの二人は昔は別々のチームリーダーだったんだけど、濁龍との一戦でお互い何人か仲間を失っちゃって」
「それで合併したってことか。なるほど大所帯なのもわかる」
「みんなとてもいい人達だよ」
「頼りになるお兄さんって感じだよなー」
「あぁ、マイトの反応からそんな感じなのがすぐわかった」
「あの人達からも、随分世話になった……」
「濁龍が絡むとトウジは必ず声が沈むな」
「町全体の危機だったからな。トウジのせいではないのだが」
「責任は感じるよ。忘れたくない、いつまでも教訓にしなきゃいけない事だからな」
「真剣になるのはいいんだけど。でも落ち込むのはまた別の話だよ?」
「ミリアの言う通りだよ。元気出そっ?」
「ミリアにはいつも励まされるな。さっちんもありがとな」
ミリアは今、満面の笑みなのが見なくてもわかる。昨夜から出発前まで暗く沈んだ空気は、彼らのお陰で薄らいだ感じだ。
「そうだ。パレットカラーズってのは何者だ?」
「あぁ、彼らもサポートで前線に立ったチームだ。ダブルヘッドとかのように仲がいいわけじゃないが険悪ってわけでもない」
「危機の前は別名のチームだった。だがやはり危機で彼らも仲間を何人か失って、募集かけたり抜けたりを繰り返してた」
「心機一転ってやつだよな。チーム名を今のにして、メンバーの名前も改名して色の名前にしてた」
「短いわかりやすい名前にしたせいか、仕事の効率も良くなったって評判だよ。うちら仲良しではないけど、腕前は信頼していい七人組よ。何かあったら頼りになるチームの一つね」
「にしても、一体チームっていくつくらいあるんだ?」
「全体ではわからん。ここには10チームくらいはあるんじゃないか?全部知り合いってわけでもないしな」
「スタンが加入してから対面チームは五つくらいじゃない?トリスと姫と組長たちとシュートとヘッドね」
「組長と呼んでいるのはミリアだけだな。面白いが」
口調が面白がっていないぞ、ランス。
「名前を知ってて会ってないのはパレットとかいうチームだけか」
「じゃあ十五チームくらいはあるか?我々みたいに定住してるチームもあればペライント地方全域を回るチームもある。危機のことをまったく知らないチームもいるだろう」
「結成、解散、合併もあるからなぁ。年齢からの体力の衰えで引退とかあるしよ」
「チーム登録ってのもないよねぇ。冒険者同士でのやりとりだけで決めちゃうもんだからね」
「でも個々で動いたりパーティ組むよりはかなり効率がいいな。以心伝心できると突然の変化にも全体で対応できたりするし」
「目配せ一つでお互いやりたいこと全部わかる なんてこともできたりね」
「ちなみに今では、チームっていうと三人以上だね。二人だとチーム名言うより相手の名前言った方が手っ取り早いから」
「でも単騎で活動し続ける人もいる。合わせるのが苦手だったり、周りがついてこれなかったり、周りについていけなかったりでな」
「パーティもおんなじだ。結局効率と損得の話になるよな。経済的理由じゃなくて、気持ちの上でのな」
レクチャーを受けながら工房に到着。連日の訪問となる。
「ミスラス。報告と相談があってきたんだが」
ドアを開けながらミスラスに呼びかける。
「毎日ここに来るな。……どうやら深刻な話のようだな。客間にいくか?」
「あぁ、かなりよくない話かもしれない」
前話では、設定の作者の誤認での修正編集失礼しました。本筋に戻りました。




