第五話:俺はミリアの本性に振り回される
今日で投稿を始めて五日目です。
お出でいただいてありがとうございます。
物語を楽しんでいただけたらとてもうれしいです。
「トウジさ~ん?一覧お持ちしましたー」
ノックの後に続いて依頼窓口の人の声。部屋の入り口で受け取った後全員で閲覧。
「さっきみたいにヘンに絡まれて、結局マッチした依頼を先に誰かに取られることもあったり、時期によっては依頼が全部捌けてなくなってることもある」
「でもさっきのミスラスみたいなこともあるよね。依頼人と直接やり取りすることも」
「トラブルが起きるといろいろと拗れたりすることもあるから、組合通して依頼受けるのが無難だけどね。でも相手によってはこっち側を見定めてくる場合もあるし、ミスラスみたいに無条件で依頼がくることもあるの」
「窓口での依頼の報酬はお金だが、依頼の入手経路によっては道具や食糧など様々。さっきのミスラスからの件は、冷の時期に寒い思いをせずにすむ特殊な衣類」
「信頼度次第って感じだな。そういえばバレンってなんだ?」
「重さを表す単位だな。俺は67バレン……くらいかな?体重きちんと計ったことないな」
元の世界ではキログラムっての使ってたのを思い出した。同じくらいと判断していいな。
「ところで俺、言葉通じてるよな?別の世界の言葉となんで語り合えてんだ?」
「何言ってるの? ペライント語普通に使ってるよ?」
「問題ない。というか、なぜ今頃その疑問?」
「なんだそのペライント語って」
「海の向こうはわからないけど、この大陸では六つくらいの言語が使われてて、自国語とペライント語をみんな普通に使えるの」
「この大陸がペライント大陸。周りにある島々も含めてペライント地方と呼ばれてる。大陸の共通語だな」
「ひょっとしてスタンのいた国の言葉と関係ある?」
ミリアが瞳を輝かせる。
「わからん」
ぶっきらぼうに短く答える。というか、他に答えようがない。ミリアはがっくりの反応。だが遠慮なく物を言っても気持ちが伝わることはありがたい。
それと、ミスラスが雪綿って言ってたな。
「雪はあるんだな」
「何をいきなり。あるにきまってんじゃん。寒い時期に雲から降る水が凍った結晶……」
「言葉だけじゃなく、定義も一緒なのはありがてぇ。だが単位とかは別らしいが」
「雪綿か。毛が長い動物で、大きさはうさぎっぽいんだが形はわからん。それほど毛が長い」
元の世界でも使われてた言葉がここでも使えるのはめんどくさくなくていいな。
「そうだ、思い出した!」
「え?何か思い出したの?」
いきなり立ち上がるほど喜ぶミリア。
「この世界にハリセンはあっても鉄砲はないんだな」
「ハリセン、スタンの世界にもあるのか」
「扇子みたいな形でな」
「おんなじだ。ジグザグになっててな」
「そうそう」
「けど鉄砲はわかんねぇな」
「じゃあ紙鉄砲もわかんねぇのか」
「わかんねぇな。どんなんだ?」
「えーとな」
「あ・な・た・た・ち……」
この世界にきて初めて俺に向けられる殺気を感じた。
「ミリア……お前……その姿が……」
「いや、勘弁。でもさ、ほら、情報のやりとりはさ……な、なぁトウジ、ランス、何とか言ってくんねぇ? さっちん、ボーッとしてねぇでさ、ホラ……つかなんでさっちん教えてくんねーのさ」
この後俺はマイトと二人で二分ほど地獄を見せられた。ミリアの期待がでかすぎただけだろうに。
「何か言うことは……?」
「「ごめんなさい」」
傍観してた三人がため息の効果音を出してくる。
「話が進まないでしょ! で、どうするの!」
「あー……濁龍は見ておきたいかな。期間はどれくらいかかるかな」
「宿から麓までは馬車で半日か。濁龍が見えやすいところまで登って、大体の大きさと様子を把握できたら下山という計画でいいだろう」
「ミスラスの依頼も受けながら、ついでにそこしか手に入らないアイテム採集もやろう。天気は変わりやすいが、岩肌を登っていくわけじゃない。雪道を散歩という感じでいいんじゃないか?」
「濁龍に向かって魔法出したりするのはやめとこう。依頼の方は採集だけだけどレア度はあるから簡単じゃないから注意しよう」
「採集っつっても、たまたま落ちてるのを見つけたから拾った って程度でいいだろ。幻獣が出なくても遭難の可能性はいつでもあるんだからさ」
「じゃあ防寒とちょっと多めの食料の準備ってとこね」
「どっか連中が後つけてくるかもわからん。肉弾戦防御対策もだな」
「じゃあ今日一日の予定はそれらの準備。明朝一番の馬車で出発でいいか?」
全員が異議なしの一声。
「じゃあ今朝やついさっきみたいなこともある。二手に分かれよう。ミリアとさっちん、ランスは全員分の防寒具とそれぞれの食糧の調達を頼む。スタンも頼むぜ」
俺を掴んだミリアは宿に入った時と同じように、ローブを纏う前にホルダーを着ける。
「じゃあ俺とトウジで治癒アイテムと食糧調達だな」
「あぁ。それと山では異空間倉庫は使わないようにしよう。それが濁龍の刺激になるかもわからんからな」
「倉庫使用禁止かよ。危険地域じゃなきゃハイキングだな」
「倉庫だけじゃない。さっきもちらっと言ったが、周りに変化を与えそうな武術、魔術、アイテムも使用禁止にする。スタンの力も、強いやつは厳禁だ」
「するとあたしのアンテナフル稼働ってわけか。大丈夫かなぁ。濁龍の件はなしだったら楽なんだけどなぁ」
「問題なし。アイテム収穫と観察のみで敵討伐はないからな。異変を察知したら即座に帰還でよかろう」
「その通り。敵からも俺らからも視界に入りそうだったら、『もうちょっとがんばる』はなしですぐ帰る。わかりやすくていいじゃん」
「ならさっちんも問題ないよね?スタンも大丈夫?」
「何もしなくていいのは楽だな。ミリアが本性出さなければ平気だ」
「……あのねぇ、スタン……」
ミリアも割と怖いじゃないか。敵よりも怖いぞ、うん。
「じゃあそういうことで、向こうで不足がないように準備を整えてくれ」
トウジの呼びかけで全員が動く。ミリアのこともある。俺にとっても、ここでの生活の目的達成への第一歩というわけだ。




