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序幕

 難しい単語は読み飛ばしていただいて構いません。平安時代の雰囲気を少しでも味わっていただければ嬉しいです。

 ゆらりゆらりと、萌黄色の大袖を振るい、背に背負った胡蝶の羽の飾りを、大きく広げる。

 四人の舞手の姿は、優雅にして幽玄で。

 篳篥(ひちりき)の音も華やかに、舞楽・胡蝶が興じられる。

 時の帝は舞楽を好む。

 舞手はいずれも上位貴族の子息たち。その中に一際目立った存在があった。

 

 彼の名を知らぬものは、恐らくいない。


 いずれは賢帝となるだろうかの御宮も、今はまだ美しき胡蝶の宮として知られるばかりだが。


  

 縹色(はなだいろ)の空に、一筋の曙の光が差す─────




  ********




 隣で寝ていた男が体を起こしたのに気付き、女は男の夜着の袖をつかんだ。


 「どうかいたしましたか?宮様。」


 「いや、(ぬえ)が……」


 「鵺?」


 女が首をかしげる。黒髪がさらさらと流れ、夜着の合わせからのぞく細い喉が一つこくりと動いた。


 ひょう。


 鵺が鳴く。その物悲しい鳴き声から不気味、不吉だと言われる鵺鳥の声を、二人は耳をすませて聞いていた。


 ひょう。ひょう。ひょう。


 男───宮がふいに口を開く。


 「(もがり)……か?」


 ひょう。


 宮の問いに返すように鵺がないた。

 先程まで室内に届くほどの光を放っていた月は、今は雲にその姿を隠している。

 虫の音もしない静寂の中、鵺の声だけが哀しそうに響いていた。


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