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チート1武道会  作者: Zyuka
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第1回戦第2試合-1

『さぁ、それでは対戦選手の紹介です! エミリア・トゥ・カッチェ選手!! カッチェ公爵家の長子にて、国防の盾!! 魔法に学問に、軍事にさえもその優れた才能を発揮するスーパー公爵令嬢にて、そのきつすぎる性格から、裏では悪役令嬢と陰口を叩かれる――資料にはそうあります』


 ファロの皮肉まじりの紹介を理解してるかしていないのかその微笑みをたたえた顔からは一切知ることができない――エミリアはスカートの両端を摘んで優雅にお辞儀をする。


『相対しますは召喚者の宝庫、日本出身の女子高生! だけど本人は誰にも招かれず、勝手に異世界へやって来る来訪者!! それゆえ召喚主との知識の共有、異世界言語理解のスキル習得が不可能!! あ、私もアニスちゃんも異世界言語相互理解のスキルは持っているんで安心してね! サイレントアマゾネス、白倉梓!!』


 梓は対戦相手のエミリアを眺める――金髪碧眼、動きやすいようにすその短いスカートをドレスを着ている。


 貴族令嬢――梓の住んでいる日本にも昔は華族っていう貴族みたいなのがいたらしいけど……ああ、公家、だったっけ?

 とりあえず、普通の日本の一般家庭に育った梓には貴族などというものには全くと言っていいほど縁がなかった。

 乙女の恋愛ゲームも、やったことがこなかったし――


 とりあえず、異世界人と話すときによくやる手段をとることにする――これが通じなかったら、後はだんまりだ。


「ワレワレハニホンジンダ」


 喉にトントンと手を当てて声を震わせてそういう――


「エナ、チセヅオサア……」


 エミリアからの返事はやはり梓には訳のわからない言語だった――


「これはやっぱりサイレントアマゾネスをやるしかないようね」

 そう言って梓は右腕の袖をめくる――そこには可愛らしい腕輪が装着されており、一本の鍵が鎖でぶら下がっている――


「ウオヅタヒアキロギンエヅセイ――これでいかがかしら――?」


「へ?」


 突然、エミリアの言葉が理解できたことに驚く梓。


「ご安心ください、わたくしも、言語理解魔法準3級は所持しております――多少なりとも理解不可能な点があるかもしれませんが異世界人と日常会話をするくらいには問題というものはありませんわ」


 優雅にそういい、会釈をするエミリア。


「ああ、そうなの!」


 喉を叩いていた手をあわてて離し、真っ赤になる梓――


「カッチェ公爵家令嬢、エミリア・トゥ・カッチェと申します――白倉梓さんですね、よろしくお願いいたします」


「ははははは、まいったなぁ、あたいは白倉梓だこっちこそよろしくな!」


 ぺこりと挨拶をするエミリアに対し、笑って右手を差し出す梓――


「……? なんですかそれは?」


「へ?」


 梓が差し出した右手を不思議そうに眺めるエミリア――


「あ、握手、知らないのか……そういえば、異世界人だもんな、まあ、しかたないか」


 梓は笑いながら手を引っ込める。


「すいません、違う世界の教養に関しては学んではおりませんので」


 エミリアはジッと梓を眺める――


「何か、良い人そうだな……試合の前に、一つ、聞いてもいいか?」

「はい、なんでしょうか?」


 梓の問いかけに笑顔で答えるエミリア――

 笑っていた梓は、表情を引っ込めると、


「あんたの世界に、何十人もの人間がいきなり召喚された、っていう話はないか?」

 真剣な顔と口調で、そう問いかけた――


「……? 意味がよくわからないのですが、多人数召喚の事ですか? いえ、そんな話は聞いたことありません――」


 エミリアも、相手の真剣な顔に合わせて、表情を作って言う。


「わたくし、召喚魔法勉強したこともございますが、同じ世界の物を召喚するだけでもかなりの魔法力を消費します――異世界から……それも多人数だなんて、それこそ国家規模の召喚となるでしょう――それなら、王家に連なる公爵家のわたくしが知らないなんて事はありませんわ――」


「そうか、そうなのか……あんたの世界じゃないって事か……」


 梓は何かを考えているようだ――


「白倉さん、わたくしからも一つ、よろしいでしょうか?」


「――うん、いいけど?」


「この戦い、負けてくださらないかしら?」

 にっこりと、邪気など全く感じさせない笑顔でそういうエミリア――


「それはできない――あたいには、この大会で優勝して、手に入れなきゃいけないものがある!!」


 梓は、真剣な表情で右手首の腕輪に鎖でつながれている鍵を手に取る――


 ヴン――!!


『おおっと、なんだあれは? 梓選手の持っていた鍵が巨大化!? 鍵の形をした剣へと変化した!?』


 ファロの声が響く――その言葉通り、梓の手には鍵の形の剣がにぎられている!!


「仕方ありませんわね……エロダイネツオヨロニサタ、オヤムザニ……」


 エミリアも両手に雷の魔法をまとわせる。


『二人とも、気合十分のようです!!』

『それでは!!』

『試合開始です!!』


 ドォ~~ン!!


 銅鑼の音が鳴り響き、少女二人の戦いが始まる!!



   ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 



「始まったみたいね――どっちを応援するの?」


 観客席の上席に居座った召喚組三人を嫌々だが代表してチサメが問い掛ける――


「もちろん同じ日本人として、梓ちゃんだよね!」

 ミナが断言する――


「同じ日本人といっても、ついさっき、ほんの数秒くらい話しただけでしょうが」

 チサメはあきれてそう言う。

「それにあの対戦相手のエミリア嬢、かなりの魔法の使い手のようだな――ちょっときつそうだけど、顔や身体は好みだから、俺はあっちを応援する!」

 ユージは正直にそう言っている……

「確かに雷拳魔法なんて、かなり高度な魔法ね、今度教えてほしいわ――」

 そう言いつつ、マジカルネットワークでエミリアの魔法の解析を怠らないチサメ。

「理論上確立されていたとしても、使い手が少ない魔法――そして……」

 もう一つの解析結果、それは――アンノウン――


「梓の持っている鍵の形をした剣……あれは一体、何……?」



   ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 



 バリバリバリバリバリ!!


 エミリアの手から伸びた光が闘技場の壁に貼り付き、


 タンッ!! ビュオン!!


 それをたどってエミリア自身がもう片方の手に宿る雷で拳撃を繰り出そうとする!!

 それは凄まじいスピードで!!


「うわっと!!」


 カチャ!


 梓は慌てて何もない空間に鍵の剣を突きさし、


 バタン!!


 まるで扉でもあるかのように引くと、まるでドアでもあるかのような長方形型の空間の切れ目が出現する――


「――!?」


 梓はその空間の切れ目に中に身をすべり込ませると、その場から消え失せる――

 そしてその遥か前方に同じような空間の切れ目が出現し、そこから梓が飛び出してくる!!


「エロノ!! 空間移動能力者というわけですか!!」


 バリバリバリバリバリ!!


 両手から発せられる雷の魔法で空中に静止するエミリア。その魔力の使い方、センス、コントロール力、どれをとっても一級品に見える!!


「そういうこと!! ちなみにあたいはこういうこともできるぜ!!」


 カチャ!


 再び、空間の切れ目を出現させると梓はその中に入り込み――今度は、同じ場所に出現する――


「ほう、面白い術を使うのですね――一瞬にして服装を変化させるとは――」


 エミリアは素直に感心する――

 さっきまでごく普通の日本の女子高生といった感じの服装だった梓は、今は高級そうな毛皮のコートを身にまとっている――変わらないのは右手に持っている鍵の剣くらいのものだ――


「雷獣のコート――電撃は効かない――!!」


 バリバリバリバリバリ!!


 梓の言葉に、エミリアは右手から飛ばした電撃を梓に当てる!! が、梓の身につけた毛皮のコートはそれをあっさりと弾き返した――!!


『すごい高級そうなコートです!! それも、鑑定してみる限り雷の防御率120%!! 欲しい!!』


 ファロが素直な感情を口にする。


 戦いは未だ始まったばかりだ――!!

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