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チート1武道会  作者: Zyuka
1/8

前哨戦! イルダvsジェナカ

『では、両選手所定の位置へ!!』

『お互い、自身の持つ能力をフルに使って戦って良、武器の使用、魔法の使用も許可されています。手加減は相手に失礼だと思ってください』


 二人の少女が、筋骨隆々の偉丈夫と、派手な魔女に語り掛ける。

 その声はマイクを通し、会場全体に響き渡る――


 観客たちは、試合開始の合図をまだかまだかと固唾を飲んで静かに見守っている。


『では、戦士ジェナカ、魔女イルダ……双方、悔いが残らぬよう全力で戦ってください――』

『それでは、試合開始です!!』



 ドォ~~ン!!



「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


 試合開始のドラの音とともに観客たちのボルテージも一気に上がる!!


「この私、最強チート魔女イルダ様と戦うことになるなんて、運がないようね!! さあ、まずは見境なくあばれなさい!! その間に私は巨大な魔法を使うから!」


 派手な魔女、イルダが両手を広げ、ブツブツと何かをつぶやき始める。


 ペチコン!!


 もちろんそんな隙だらけの相手を、敵の戦士、ジェナカが見逃してくれるはずがない。ジェナカの斧がイルダの頭を叩く。


『まずは戦士ジェナカのファーストアタックがイルダに当たった!!』


「なにするのよ!! 私が魔法を使おうとしているのよ!! おとなしく待ってなさい!!」


 ペチコン!!


 再び頭を叩かれるイルダ。


 ピピピッ!


『おっと、ここで匿名希望のEさんからメッセージが届いております』

 司会と審判をつかさどる、二人の少女の片割れが、スマホを取り出す。

『Eさん? 誰? EROさん? メッセージって?』

『でしょうね。なになに……”イルダと戦う相手は残虐非道な人間なので見境なく暴れて観客、司会者などにけがを負わせるというのはどうでしょう。そしてイルダが試合後に回復魔法を使って治療し、皆が感謝されていう展開はどうでしょう”……なにこれ?』


「やめなさい!! あなたは見境なく暴れて観客を怪我させればいいの!! そして怪我した観客を私が回復魔法で――」


『……この匿名希望のEさんて、イルダの知り合いかな? 訳のわからないことを言ってるよ』


 ペチコーーン!!


 ジェナカの斧がイルダをぶっ飛ばす!!


『なんか、ジェナカの斧の音っておかしくない?』

『うん、それが彼のチートの一つなんでしょ!』


 ピピピッ!


『おや、また匿名希望のEさんからメッセージ、なになに、”イルダのモットーは回復魔法なので、戦いが主体ではない。だからイルダが出てる戦場では、敵がイルダ以外の味方の周りにバリアを張ってイルダの干渉を防ぐというのはどうでしょう”……意味がわかりません。この匿名希望Eさんという方は相当頭が悪いようです!』


 ペチン!!


 相手の斧がイルダの顔面にあたり鼻血と共に吹っ飛んでいく!!


 ピピピッ!


『再び、匿名希望のEさんからのメッセージです、”ジェナカというキャラクターはイルダがでてくるこの大会に登場させない方というのはどうでしょう”――全く意味が解りません、これからこの匿名希望のEさんからのメッセージは無視しようと思います。もう送ってくんなよ~~!』


 ペェチィッコォ~~ン!!


 ジェナカの斧が、イルダを吹き飛ばす!!


 ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!


『あ~~うるさい!! 何なのコイツ!!』

『どうしたの!? アニスちゃん!! ちゃんと司会進行しないと!!』

『あ、ファロちゃん! 聞いてよ、なんかわけのわからないメッセージが次から次へと来るんだけど……!』

『メッセージ?』

『うん、匿名希望のEさんって人から……』

『どれどれ?』


 ファロと呼ばれた少女はアニスの手の中の魔法をスマホを覗き込む――


『匿名希望のE……しかも何この内容……』


 ペ~~チ~~コ~~ン~~!!


 ジェナカの攻撃がイルダに当たるたび、ピピピッ! ピピピッ! と匿名希望のEからメッセージが送られてくる――


『うっとおしい! 何なのコイツ!?』

 アニスは、スマホを投げ出しそうになる!

『仕方ないわね……イルダ!! あなただけ匿名希望のEの言う通りにしなさい!! 暴れるのも、怪我するのも、バリアをはるのもあなた一人でやりなさい!!』

 ファロはマイクを使って戦闘中のイルダに呼びかける――

『そうか、イルダが勝手に怪我をして自分で自分を回復させたらいいんだ!! それなら誰にも迷惑がかからない!』


「ふざけないで!! 勝手に暴れるのはジェナカ、怪我するのは観客やあなたたち、そして怪我を治すのが私の役目です!! 匿名希望のEはそう言ってでしょ!!」


 ファロとアニスの呼びかけに、イルダは反論する――その間にもジェナカの攻撃がヒットしダメージを受け続ける!!


 ペチン! ペチン! ペチン! ペチン! ペチン!


『やだ、私怪我したくないもん!』

『私たちやジェナカは匿名希望のEには全く関係の無いキャラクターよ。身勝手で自分のキャラクターの事しか考えていない、匿名希望のEがどんなふざけたことを言おうと従うこ必要は一切ない――でも、その匿名希望のEがイルダと言う欠陥キャラクターは、匿名希望のEがどんなふざけたことを言ってきても、そのすべてに従うのでしょう?』


 ファロは見下した目でイルダを見て言う――!!


『――? ファロちゃん、イルダが匿名希望のEが生み出したキャラクターって、どういう事?』

『匿名希望のEが言ってくるメッセージは、イルダにのみ都合のいいものばかり――しかも、他のキャラクターのことを一切考えていないイルダのみに有利なご都合主義まみれの愚鈍な物……それを考えれば、おのずと答えは出るわ。イルダは匿名希望のEがそのふざけた妄想で作り上げたキャラクターだって事が……!』


『……でも、それってチートキャラクター全員にいえることじゃないの? よく言うでしょ? ”ぼくのかんがえたさいきょうのきゃらくたー”って』


『それでも、他者の考えたキャラクターの行動や設定に口出しするなんてことはないでしょう? でも、匿名希望のEは違う――およそチートなどという高レベルに達していない最低レベルのキャラクターであるイルダをチートだと思い込みたいからという理由で、他者のキャラクターの行動や設定に口出しをするなんて、ふつうはあり得ない!!』


『……確かに……、周りのキャラクターたちのレベルを下げれば低レベルのキャラクターでもその作品でもチートって言えるね……』


『それでチートって言ってるのって、すっごく残念なキャラクターだこと』


「聞こえてるわよ!! そういうのはマイクのスイッチを切ってしゃべりなさ……ギャゴ!!」


 ペ・チコン!!


 イルダは何かを言い返そうと、口を開くがジェナカの攻撃が激しくて言い返せない!!


『――だから、あばれなさい、怪我しなさいそしてもう二度と私たちの前に家を出すな、匿名希望のEが言ってきた通りに――消えろ!!』


「―――――!!」


『消えろって? どういうことファロちゃん?』

『匿名希望のEは言ってきているでしょ、物語出すなって――ジェナカのこの大会の正式な出場者、イルダはチートでもないのに作者である匿名希望のEが口出してきたから仕方なく、出すことにした似非チートキャラクター、必要ないのはさて、どっち?』

『イルダ』

 即答だった。

『だったら、”イルダが戦うこの大会に登場させない方がいいでしょう”とか言ってきた匿名希望のEの言葉を現実のものにしようとするならばどうすればいい?』

 アニスは少し考えて口を開く――

『ジェナカはこの大会に出場するのは決定事項――となると……イルダがこの大会で登場しなければいいという訳ね』

『そう、だから消えろ! イルダ!!』


「~~~~~~~~~~~っ! げへらげら~~~~~!! だったらその通りやってやるわよ!! バリア!!」


 イルダは突然、下品なほど醜く形相を変え、自分とジェナカを取り囲むバリアを発動する!!


「食らいなさい!! オペレーション49!!」


 ブブブブブブブ…………


 気味の悪い音が、イルダの下半身の後ろの方から聞こえ始める!! だが……


 ベッヂゴゴゴ~~~~ン!!


 それよりも先にジェナカの斧がイルダを、完膚無きまでに叩き潰した!!


「何をする気だったかしらないが、それを待っていられるほど俺も気長では無い」

 ジェナカが、短くそう言い、バリアに向かい軽く斧を振る!!


 ペチバリン!


 イルダの作り出したレベルの低いバリアは、それだけで破壊される――


 その後、アニスがイルダに駆け寄りイルダの様子を確認しようとするが――

『なにこれ!? 臭くてとても近づけない!!』

『バリアの中であんなことされたら……どんな人間でも大ダメージだろうね……オペレーション49……死(4)ぬほど臭(9)い……それがイルダの必殺技、か……』


 バリアの中に自分と相手を閉じ込め、死ぬほど臭いにおいを撒き散らす――自分が出したものならイルダ自身は耐えられるだろう――が、相手は耐えられない――


『でも、バリアを張って自分の逃げ場を無くした時点で、パワーとスピードに劣るイルダに勝ち目はないか……』


 ファロは自分の足元に魔法陣を出現させる――


『ゴーレム、召喚――』


 ゴゴゴゴゴゴゴ!!


 ファロが呼び出したゴーレムはイルダを乱雑にあつかい、ファロとアニスの近くへ持っていく――ジェナカによって完膚無きまでに叩き潰されたイルダは抵抗することはなかったが、


「グヘラゲヘラ……ヒーリング……」


『うん? 回復魔法? まだ戦えるの?』


 ポワッ……


 治癒の光がイルダを包む……


「ゲ、ゲヘラゲラ……力つきた……」


『うわぁ……中途半端な回復魔法のせいで顔がものすごくひどいことになってる……ほんと、怪我をしたとしてもこんなレベルの低い回復魔法しか使えないレベルの低い魔女なんかに治療なんかしてほしくないな――』


 ゴーレムの腕の中に放り込まれているイルダの様子を確認するファロ。そして、少しの時をおいて、アニスと共に高らかに宣言した――!!


『『勝者っ!! ジェナカ!!』』



「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」



 歓声があたりを揺るがし、勝者となったジェナカをたたえる!!

 ジェナカは斧を振り上げそれに答える!!


 敗者であるイルダは、ゴーレムが運んでいく。


『それでは会場内にファブリーズを散布しますのでしばらくお待ちください!!』




「ねえねえ、ファロちゃん…」

「なに? アニスちゃん?」


 会場内にファブリーズが散布されてる間、司会と審判を行っていた少女二人が、あたりに聞こえないようにヒソヒソ話を始める――

 まあ、大歓声の中でマイクのスイッチを切って話をすれば、周囲に声が聞こえることはない。


「あのイルダっての、本当にこのチート1武道会に出場資格あるの?」

「イルダ? あるわけないじゃんあんなのに」

「あ、やっぱり?」

「あのイルダの資料を見てみたけど……作者である匿名希望のEと呼ばれる人物が口出ししてくる以外は大した能力は持っていないわ。オペレーション49は最低最悪の必殺技だけど、能力自体は最下級魔女の以下だしね」

「口出しってさっきのジェナカ戦みたいに?」

「資料によると、イルダは元々とあるシェアワールドのキャラクターだったって。シェアワールドって分かるよね?」


 シェアワールド ―― シェアード・ワールドの略称。

 小説などのフィクションにおいて、複数の著者・作者が同一の世界設定・登場人物を共有して創作する作品群の事。


「誰かが構築した世界観を下に他の人もその世界観で作品を作ることができるってものね? つまりイルダのイルダの作者である匿名希望のEが創造主として作り上げたシェアワールドのキャラクターだったわけ?」


「残念、不正解!! そのシェアワールドは匿名希望のEが創造した世界ではなかったの」

「……ええっと? それじゃあ、匿名希望のEは……?」


 アニスにファロは微笑みを向ける。


「イルダが匿名希望のEによるキャラクターなのはあっているけど、そのシェアワールドは、匿名希望のEが創造した世界じゃなかった。他の人たちが協力して作り上げ、キャラクターたちも一人一人別の作者さんたちが考えて、創造された世界だった――途中参加だった匿名希望のEは、そんなシェアワードにイルダを送り込んだ――自分が他人のキャラクターの設定に口出しできるという、似非チートキャラクターとして……」


「……それって……他の人のシェアワールドの作者さんたちは、受け入れたの?」


「まさか、匿名希望のEの身勝手な設定に対する口出しを受け入れられる人は皆無に近かったみたいだよ! だって匿名希望のEは、イルダをチートするために他の人の作ったキャラクターの設定をイルダに都合のいいように改悪しようとしたから」


「――それって――他の人のキャラクターに弱化補正をかけたってこと!?」


「それもかなりえげつなくね。イルダはそのシェアワールドの登場人物たちが持つ能力の上位互換能力を持っていると、匿名希望のEは設定した――他の人が作ったキャラクターが回復・治療系の能力を持っていたら、イルダはそれ以上の回復能力を持つと言いだし、早く走れる能力者がいたとしたら、それ以上に走ると言いだした」


「うわぁ、他人のキャラクターが持つアイディンティーをを破壊する行為だね」


「それどころか匿名希望のEは、他の人のキャラクターは罪人で、何か犯罪を犯してイルダがそれを勝手に断罪する、なんて物語をいくつも作ったらしいよ。それも他の人がそのシェアワールドで物語を作る時、主役級として扱っているキャラクターをイルダには絶対にかなわない卑怯卑劣な犯罪者として扱う物語をいくつもいくつも書いた。その上、それに報復するような物語は、それを書いた人の許可も取らずに勝手に無断で許可があると嘘をついて削除した――」


「それって、やっちゃいけないことじゃ……」


「結局そのシェアワールドは参加者がどんどんどんどん消えていき、過疎化してっいった――匿名希望のEが現れてから、長い時をかけて作られたシェアワールドは作られた時よりもはるかに短い時間で崩壊――」


「……それでも、匿名希望のEは反省していない――さっき私にメッセージを送ってきて、ジェナカの設定を変えろと言ってたのは匿名希望のEなのよね? このままじゃ作者の口出しというチートで、イルダと匿名希望のEがまた邪魔してくるんじゃない?」


「大丈夫だと思うよ……資料によると……観客として――匿名希望のEが作者として参加したシェアワールドに同じように参加していた作者のみなさんが、この会場に……来ている……?」


「えっ?」


 そういえば、ジェナカに対する歓声の中に何か聞こえる……



「テメェ、まだ反省しなかったか!?」

「ふざけたことをいつまでもやってんじゃね!!」

「いい加減にしろ!!」

「馬鹿の考えた最低の屑キャラクターイルダなどおよびじゃないんだよ!!」



「……ファロちゃん、なんか暴動が起こっているみたいだよ――まあ、このチート1武道会のセキュリティーはきちんとしてから、多少の暴動ぐらいで大会が中止なるようの事はないけど」


「まあ、いくらチートキャラクターを作りたかったといっても、やっていいことと悪いことがあるよね。他人の作ったキャラクターを悪く書いたり、弱化させたりしてレベルの低い自分のキャラクターをチートキャラクターだと言っても、誰も認めてはくれない」


「ファロちゃん……何が言いたいの?」


「……同じように、周りのレベルの低い異世界に行って自分がチートと言ってるのも面白くない……!!」


 ビシッ!!


 ファロは指差すポーズをとる!!


「やっぱりチート持ちの相手もチート持ちであるべきなのよ!! 自分のチートを持って相手のチートを攻略する!! それがチート持ちが登場する物語の本来の楽しみ方なのよ!!」


「それはファロちゃんの勝手な思い込みなんじゃ?」


「違うわ!! チートを持つ者こそ、激しい戦いに身を投じるべき!! そしてこのチート1武道会こそがその舞台!! この大会の出場選手は全員が何かしらのチート持ち!! 主人公補正、ご都合主義、作者の口出しごときでは優勝することなど不可能!!」


「そしてこの大会の司会と審判を、任されたのが、私、アニスとファロちゃん、ってわけ!」


「そう、私たちのこのチート1武道会を成功させる……たとえどんな事が起こっても……!!」


 ファロは再びスイッチを入れたマイクを口に近づける――

 アニスも慌てて同じようにマイクのスイッチを入れる。

 ファブリーズの散布は終わっている。




『皆! チートキャラクターは好き!? 俺TUEEEEEは大好物!?』


「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


 ファロの呼びかけに、観客が大いに盛り上がる!!


『厳しい修行によって身につけた最高の力、果てしなく辛い学習によってたたき込まれた大いなる知識!! それらから生まれるチートのキャラクター!! それらを持つ主人公が活躍する物語は憧れる!?』


『異世界に召喚されて神様からもらったスキルで最強チート!! 生まれ変わったら新たなる強靭な肉体と現代知識で両面チートのハーレムライフは大好きですか!?』


 アニスもファロに負けじと観客に問い掛ける。


「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


 観客たちは盛り上がっていく――!!


『それでは!』

『今ここに!』

『『そんな最強チートキャラクターたちの中でもナンバーワンを決定するチート1武道会の開催を宣言いたします!!』』


「「「「「「「おおおおおおおおおお……!!」」」」」」


 ひときわ大きな歓声が会場全体を揺らした!!


『それではチートな出場選手の紹介です!!』


「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


『先ほどの前哨戦で見事に似非チートのイルダを討ち倒した変な音がする斧を使う豪傑戦士!!』

『じつはその力はとてつもない鍛練の結晶、努力形チートの好漢、ジェナカ!!』


 愛用の斧を掲げ、観客にアピールする寡黙な男、ジェナカ!!


『テンプレは存在する!! 異世界に召喚された日本人は勇者として君臨した!!』

『星を砕く聖剣の勇者、ユージ・トドロキこと轟勇二、本名で登場だ!!』


 光り輝く剣を背負う、若者、勇二が片手を上げる!!


『転生チートで現代知識と高位魔法、強靭な肉体の三本柱を打ち立てた!!』

『クラスト・デュルク!! 転生勇者の登場だ!! 前の名前は忘れちゃった、てへっ!!』


 観客席からあがる黄色い多数の声に、笑顔で答えるクラスト!! どうやら彼のハーレムメンバーが応援に来ているらしい。


『転生した先が人間とは限らない!! それでも活躍できるのは前世が人間であるが故か!?』

『竜人種族ドラゴンニュートの英雄、アルガン!! 今回の出場、魔王軍の仲間には内緒だ!!』


 凶暴そうなドラゴンニュートのアルガンだが、その瞳には知性の色が見える!!


『マナ・クリエイター……魔力の許す限りのアイテムを無限に生み出す力!! 反則に近いその能力、攻略手段はあるのか!?』

『しかも、転生者!! 現代知識も持ってます!! シェリング・テテネ!!』


 複雑な機械がシェリングの手の中に現れては、消える――!!


『召喚も、転生もない!! その世界に生まれたチート勇者!! 勇者の王道は彼が完成させた!!』

『ちゃんとした異世界出身の勇者様、ミラヴィス・オーヴァ、略称ミラ!!』


 険しい顔つきの男、ミラヴィスが油断なくあたりを見渡しながら登場する!!


『召喚者でも転生者でもない!! 普通の公立中学校に通う中学生!!』

『永久之アカリちゃん!! その身に秘めたチートは何ですか!?』


 中学校の制服を着た少女、アカリは右手の人差指を唇に当ててウィンクする!


『来たぞ!! 来たぞ!! 世界を救った偉大なるチャンピオン!!』

『ミスター・ヘラクレスが来てくれた!!』


 ナンバー1!! そうミスター・ヘラクレスが叫ぶと観客がその名を連呼する!!


『ある日突然、フトしたきっかけで目覚めたチートが彼を最弱の妖精から進化させた!!』

『ゴブリンからスプリガンへ、そしてダークエターニアへ!! 闇の妖精王、キュレアム!!』


 元が子妖精ゴブリンとは思えないほど威厳に満ちたキュレアム!!


『あれは、隕石!? それともUFO!? いいえ、あれは空飛ぶガイノイド!!』

『感謝の言葉が彼女のエネルギー! 正義のヒロインニナメル・フィッター、星空の果てから飛んできた!!』


 ヒューン、ドシン!! ド派手に少女型のガイノイドが推参!!


『どんなモンスターも彼には従う! 末は魔王か動物園の園長か!?』

『未来のモンスターマスター、サトル・マサラ!! 今回は相棒はいないけど大丈夫か!?』


 他の参加者より一回り小さな少年、サトル――きょろきょろとなにかを探すようにあたりを見渡す――


『祭りだ!! 祭りだ!! 喧嘩祭りだ!! 性は赤菱名は空牙!!』

『喧嘩と祭りが大好きお祭り番長! 赤菱空牙の登場だ!!』


 ガッハッハッハ!! 大笑いで巨漢の高校生、空牙が現れる!!

 

『持っているスキルの数、なんと千個!! 知る人ぞ知るサウザント・スキル・マスター!!』

『誇り高きナイスミドルな近衛騎士団長ドナルド・カセロイツ!!』


 ダンディなオジサマ、ドナルドの登場に妙齢の女性たちからため息が漏れる!


『次は女神のフィティシア……ええっ!! フィ、フィティシア様ぁ!? なんでこんな場所に!?』

『ファ、ファロちゃんテンパりすぎ……ええっと、女神フィティシア様です!!』


 ファロとアニスに微笑みを向ける年齢不詳の美女フィティシア――


『妖術師集団の一大勢力、天逆衆よりとんでもない刺客がやって来た!! なんと本大会最年少!!』

『天逆衆の天才妖術師少女、黒斗宇佐美ちゃん、なんと御年8歳!!』


 ちょっと緊張した顔で登場するおしゃまな少女宇佐美――


『医者の仕事はどうした!? 手元の資料によりますと、なんと普段はお医者さん!?』

『現代に生きる忍びの集団、皇賀忍軍よりその次期首領が参戦!! 皇君広!!』


 暗き衣装の青年――君広が、ゆらりと立ち上がる!!


『幻想の存在がこの大会に殴り込み!! 最年長だがまだまだ現役――エルフの魔法使いが挑戦状を叩きつけてきた!!』

『エルフレイン・バディット・チョッチョリーナ・アルガバンダ!! 舌かみそうな長い名前ですね!!』


 エルフレインは長い杖をついているが見た目は若そうだ。


『ソーシャルゲームは課金の多さが物を言う!! ゲーム世界が現実と入れ替わった時、最強戦士が誕生した!!』

『ゴージャス・キングの異名そのままに、課金で得た装備で大暴れ!! ママロカ・トポプ!!』


 ごつい装備をいくつも付けたママロカが吠える!!


『どう見てもロボット!! あ、ごめんね!! 果てなき戦いの果てにそうなってしまったんだ!!』

『極限全開サイボーグ!! ペデナート・アルバトロス!! 機械の体に人間の闘志!!』


 機械音と共に鋼鉄の体を持つペデナートが迫力満点で立ち上がる!!


『でっかーい!! 説明不要!! この迫力こそまさしく巨人族の証!!』

『ちゃんと丸太は持った!? では、いざ戦場へ!! エスゴウト・バッハマン!!』


 太い丸太を片手に入場……対戦相手たちを静かに見渡す巨人、エスゴウト!!


『戦いの美麗は死にこそある!! その死を超越した我々ヴァンパイアが戦いの本当の美学を教えてやる!!』

『ヴァンパイアの高位貴族、サーバント伯爵!! 太陽の光には気を付けて!!』


 洒落た服シュッとしたスタイルをしているが、病的までに顔色が白いサーバント伯爵――その赤い唇がニッと笑う――!!


『同じくヴァンパイア!! こちらからはコメントはいただいておりません!!』

『孤高の吸血鬼戦士グア!! やっぱり太陽はお嫌いですか!?』


 何もリアクションを起こさず、ただ立ち尽くすだけという感じのグア! しかしその姿には、とてつもない威圧感を感じる――!!


『強い敵と戦いたいからここに来た!! 男の目指す先は世界最強!!』

『戦闘人類最強と名高き帝王、ゴジット!!』


 今まででできた人間に見えるもの中では最も体のでかい男、ゴジットが腕を組みながら登場する!!


『悪役と名がつくものの、彼女の言葉は超正論!! その上、剣に魔法になぜかハイスペックなチートを持ち、ラスボスに比肩する実力者!!』

『公爵令嬢? いや、悪役令嬢? とにかく……カッチェ家の令嬢エミリア・トゥ・カッチェ!!』


 ドレスの裾を摘んでうやうやしく、気品に満ち溢れた動作で観客に頭を下げるエミリア!!


『父親は天使、母親は悪魔!! 女神にさえ喧嘩を売る、気まぐれ魔王の真意はどこにある!?』

『半天半魔の女魔王、ヴェルバーン様!! ……後でサインください!』


 背中に白と黒の4枚の羽をつけた少女、ヴェルバーンがアニスとファロの方を向いてにっこりと笑う。


『その技術は神からもすべてを奪うと言う!! 様々な世界で様々なものを奪い、この大会でチート1の称号も奪えるか!?』

『全世界指名手配犯、怪盗王シーフロード!! 大会に出場してだいじょうぶなの!?』


 指名手配であろうとなかろうと、常に堂々登場する怪盗王シーフロード!!


『異世界に召喚されたわけじゃない、堂々と乗り込んだ!! 無口なのは言語理解の異能を持たないため!!』

『強烈なる来訪者、サイレントアマゾネス、白川梓!!』


 ギロリと、ファロを睨む梓。言葉が通じないはずなのに?


『極悪非道、最凶最悪――およそ勇者とはかけ離れた性質の持ち主!! もとは平凡な日本人らしいけど、何が彼をここまで変えたのか!?』

『外道召喚者は彼にとっては褒め言葉!! ケンジ・イワモリ!!』


 ケンジに対し、観客席からブーイングが飛び交う!!


『召喚されたその先で見つけたマジカルネットワーク! それを理解した時、彼女は魔女となった!!』

『秋山千雨改めチサメ・オータムマウンテン!! 気まぐれ魔女の魅力が今、爆発する!!』


 眼鏡の奥にある瞳はよく見えないが、魔女チサメは無表情で観客に顔を向けている。


『絶世の美貌はもうそれだけでチート!! その美しさを巡って人と人、国と国とが……ええっ!? 男性なんですか!?』

『美しき青年の二つ名は破壊者――どういう事!? セディウス・F・ウィルスター!!』


 セディウスが現れた時、会場のざわめきが、一瞬止まる――!!


『聖女召喚!! 世界を救う役目は勇者だけのものにあらず!!』

『召喚されし異世界の聖女は女子高生!! ミナ・ミツルギ!!』


 ミナの応援のため、多くの男性が立ち上がる!! でも、彼女がいる男性は控えた方がいい……


『幼児向けの作品で主人公は単純明快で常勝無敗、ご都合主義のオンパレード!! それがこの大会でどこまで通じるのか!?』

『シンプルランドのスーパーヒーロー、タンジュンキッドの登場だ!!』


 大歓声の中、最後の出場者タンジュンキッドが登場する!!




『『以上、32名によってチート1武道会を行います!!』』


「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


『それでは、1回戦第1試合の組み合わせです!!』

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