魔物だけではなくすべての人に嫌われたみたいです
異世界。
それはネット小説など読む者には憧れの場所。
異世界。
それは夢と希望と剣と魔法の国がある場所。
異世界。
それは知識・チート・無双・俺TUEEEE・ハーレムありとあらゆる要素が詰まった場所。
異世界。
獣耳っ娘。エルフっ娘。ゴブリンっ娘。オークっ娘。幼女っ娘。魔物っ娘。かわいい要素がありまくる世界。
そんな異世界にいつの間にか転生した1人のサモナーの物語。
◇◇◇
「よくぞ。よくぞ産んでくれた!」
喜びの涙を流しながら、男が後ろから女を抱きしめた。
「みて、あなた。あなたにそっくりな子よ。将来はきっと立派な召喚士になることでしょう」
女は軽く腕に抱く赤ちゃんをゆすった。男が赤ちゃんのほほをなでながら言う。
「そうだな。私たちの子供だ。きっと歴史に名を残すことになるに違いない!そうだ!!この子の名前は初代帝国を築いたプリン大帝から授かってリンプと名付けよう」
「素晴らしい名前ね。あぁ、みて笑ってる。気に入ったんだわ」
のどかなる平穏な村に1つの生命が宿る。
親兄弟共に素晴らしい才能をみせている一家の子である。
この子もきっと…
それが当たり前のように思われ
そして皆から愛されて育つこととなる。
◇◇◇
あたりは緊迫する空気でピリピリと張り詰めていた。
「さぁ、リンプよ。契約の儀を」
「はい。父上」
少年が、一歩前に足を踏み出して唱える。
「《コールサモン》」
瞬間、少年の目の前に魔方陣が描かれ、その場は白い光で塗りつぶされた。
発光が終わり視界がよくなった。
少年が魔法陣に目を向けると、そこにいたのは…
「ぐぎゃ」
魔法陣の上にいたのは、緑色の子鬼…ゴブリンだった。
「ご、ゴブリン」
「続けなさい」
うろたえた息子を父親は叱咤する。
「は、はい。《汝、我が問いかけに答えし者よ。我と盟約を結び我に使えよ》」
ゴブリンの頭の上に朱い魔法陣が描かれ、ゴブリンが赤いオーラに包まれる。魔法陣が消えて、契約が成功したと思われたそのとき、だれもが予想していなかったことが起こった。
「ぐぎゃ。ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ」
「えっ。っがは」
契約を交わしたはずのゴブリンが、少年を攻撃したのだ。
「リンプ!!」
家族・親戚・友人
誰からも愛されて育った子は10歳の誕生日を迎え少年となっていた。少年リンプは契約の儀を行う。それは10の誕生日を迎えた者が魔物を呼び出しパートナーを作る。このとき適正などあるがそれはおいおい説明しよう。
ここで重要なのは
そのパートナーを作る極めて重要な儀式を失敗したということである。
リンプは己の呼び出した魔物であるゴブリンに予想外の攻撃を受け倒れた。
呼び出した魔物とは意思疎通が出来るものであり
例え呼び出した魔物が世間一般から嫌われやっかまれている魔物であってもまずは話し合いから始まり、交渉となるのが当たり前であるにも関わらず…だ。
リンプを殴ったゴブリンは召喚者が気を失ったことにより強制的に還された。この場合ここに残っていたらリンプの父親に殺されていただろうからゴブリンは助かったと言えるだろう。
◇◇◇
リンプは一命を取り留めていた。
だがしかし今までの環境は大きく変わることとなった。
それは親しかったもの達の態度から如実に現れた。
今まで優しかった家族。
親友と呼べる友人。
ほのかに恋心を抱いていた女の子。
仲良くはなかったが知り合いと呼べるぐらいには知っていた人達。
みんなみんな
態度が一変したのだった。
愛されていたのは期待だった。
期待されていたのはその才能だった。
だが、
だけれども
リンプが呼び出した魔物はゴブリン。
これはほぼ最低の魔物だった。
リンプが倒れたのは呼び出したモンスターによって殴られたこと。
これはどんなに才能が無くてもありえない。ただその一言に尽きることだった。
呼び出したモンスターがせめて高位のモンスターであれば。
交渉が決裂してただ帰って貰ったのであれば。
どちらかが違っていたらこんなことにはならなかっただろう。
だがしかしリンプは愛を期待を全てを裏切る形になってしまった。
例え自分の意志がどうであろうと関係ない。
人が勝手に期待して
勝手に絶望しただけだ。
ましてや
当たり前のことが出来ない。
そして通常では起こりえない出来事が起こった。
…異端なのだ。
人は異なることを恐れる。
リンプは全てを踏み抜いてしまった。
このときリンプが目覚めたときに、
前世と呼んでいいものか。
こうなることがわかっていた記憶が入ってこなければ
彼は一生狂ったまま生きて行くことになったであろう。
そんなリンプを言葉を呟く
「ステータスオープン」
【サモナーLv1】
【魔物からの嫌われ者LvMAX】
なぜ、ステータスオープンと言ったのかわからない。
でも更にわからないことは【魔物からの嫌われ者LvMAX】
「なんだよ…これ。。。」
リンプは狂わなかった。記憶があったから。
でも肉体は。精神は10歳のままである。
理解しているが理解できるはずもない文字。
これではサモナーとして絶望的ではないか。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」