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妹の現実・戸隠秋穂の場合 4

「なあ、なんでお前そんなに春香の事尊敬してるんだよ」

「愚問ね。妹が姉を尊敬するのに、どんな理由が必要だというの」

「おい、なら妹が兄をするのにも理由はいらないはず…」

「ああ、ないない。だってあんたキモいじゃん」

「……」

 注……は「絶句」と読みます。

「まあ、あんたのキモさは論外として、比べるべくもなく本当に春香姉さんはすごいわ。10歳の男の子から、年老いた老女まで演じ分けられる高い演技力。聴衆をひきつける、天使のような声。物語の世界へといざなう、絶妙の間。私のような人間が言うのもおこがましいけど、全てにおいて完璧なのよ、春香姉さんは」


 ああ、なるほどね。妹の秋穂は、春香の演技力に憧れてるわけか。たしかに、あんな鬼畜の権化たる姉だが、その実力は本物だ。アイドル声優などと呼ばれてるが、アニメやゲームだけでなく、洋画の吹き替えから舞台までこなす本格的な女優なのだ。


「今まで言ったことなかったけど…この世界に入ったのだって、春香姉さんの舞台を見て憧れたからなの。春香姉さんみたいな女優になりたい、そう思って芸能界の門を叩いたわけよ。今はグラビアやバラエティの仕事がメインだけど…いつか春香姉さんみたいな女優になるわ、絶対に。そして春香姉さんとダブル主演で…ふふ…むふふふふ…ぐふふふふ」

「ああ、はいはい、わかったわかった。妄想ストップ!なんで途中までわりと良い話だったのに、最後気持ち悪い話し方になるんだよ。なんだよぐふふって」


 口からヨダレを出し、とろんとした目で姉との共演を妄想する妹。おいおい、その共演作、どんな内容なんだよ。大丈夫?18禁じゃないの?

 ヨダレという指摘で、ハッと目覚めたようにスイッチが入り、元にもどる妹。少し頬が赤い。どうやら、俺に姉の話したことが恥ずかしかったらしい。顔を横にぷいっとさせる。


「とにかく、春香姉さんは特別。私にとって神に等しい存在なの。ギャルゲーに出てようが、それは何ら変わりないわ」

「はいはい、わかりましたよ」


 春香の事を、まさかここまで尊敬していたとは。俺はため息をつき、姉の事を思い浮かべる。普段の姉貴…ううん、どうなんだろ。本当にこんな努力家の妹が尊敬するほど、それに値する人物なのだろうか。ううん…と俺がもう一度マジマジと妹を見てると、ふいに……。


「アッーーーー」


 ウッホ!妹よ、いつからお前はつなぎの作業服で公園のベンチに座って狩りをする、あの男みたいな声をあげるような人間になったのだ。お兄ちゃんびっくりだよ。そんな兄の気持などしるよしもなく、妹がにわかに慌て始める。


「ねえ、今日ってもしかして22日?」

「ああ、そうだけど」


 俺は壁にかかったカレンダーを指さす。


「やばい…どうしよう…すっかり忘れてた…うわ!もうこんな時間だし!どうしよう…もっとちゃんと準備するはずだったのに…」

「おい、どうしたんだよ」


 いつも気丈な妹の様子が、あきらかにおかしい。


「何かあったなら、兄ちゃんに相談してみろ」


 一応、兄として心配なんかしてみる。


「本当に?相談していい?」

「おっ…おお、何でもいいぞ!」


 なんだ、てっきりあんたの力なんか借りないわよ!とか言われるのかと思ったら…。意外すぎる、妹の殊勝な態度。ますます心配になる。

「ねえ、あのさ…」

「おお、どうした」

「えっと、うん、家から」

「家から?」

「家からさ、消えてよ、今すぐ」


予想より妹編が長い!けどもう少しです…


兄を家から追い出したいそのわけとは!?次回明らかに!

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