プロローグ
僕はただ逃げることしかできなかった。
父さんも母さんもアンノウンに殺された……。
父さんと母さんだけじゃない、僕の友達も隣に住んでいたおばさんも……みんなアンノウンに殺された。
僕以外の人間は誰もいない、他の人はみんな殺されてしまった。
僕は怖かったんだ、アンノウンに殺されるのが。
だから、逃げてきてしまった……。
僕はなんて卑怯者なんだろう、自分だけ助かろうとして……。
でも、僕を卑怯者だと罵る人は誰もいない……みんな死んでしまったから……。
僕は、ひとりぼっちなんだ……。
ひとりぼっちがこんなに寂しいなら、僕もあの時死んでおけばよかった。
「キャアァァァ‼」
突然、後ろから女の子の声が聞こえた。
僕はおもわず振り返った。
するとそこには、ひとりの女の子を襲うアンノウンの姿があった。
その子は、足に怪我をしていてアンノウンから逃げることができない様子だ。
「うわぁぁ、お母さぁぁん‼」
その女の子が泣き叫ぶ声で、僕は我に帰った。
僕は何で立ち止まっているんだ、早く逃げないといけないのに。
でも、僕の体は逃げようとはしなかった。
それどころか、その女の子の方向に走っている。
もしかしたら、僕はもう二度と誰かを見捨てることはしたくないのかもしれない。
いや、そんなキレイ事なんかじゃない、僕はただひとりでいるのがイヤなだけなんだ。
僕は全力でアンノウンに立ち向かった……もうひとりはイヤだから。
けど、子供の僕がたったひとりでアンノウンに勝てるわけがない。
僕は勢いよくアンノウンに飛びかかったが、その鋼鉄の腕で弾かれてしまった。
体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「ぐっ!
はぁ、はぁ……」
身体中に激痛がはしる、呼吸をするたびに胸が痛くなる。
痛い……苦しい……。
アンノウンは、さっきの女の子からこちらにターゲットを変え、ゆっくりと近づいてきた。
そういえば、さっきの女の子……ちゃんと、逃げられたのかな……。
体が言うことをきかない……僕は立つことすらできない。
けど、不思議と意識はハッキリとしていた。
僕は……殺されるのかな……。
そう思い、僕は目を閉じた。
このまま殺されたら、父さんや母さんのところへ行くのかな……。
そんな事を考えていると、突然金属同士がぶつかり合う激しい音が聞こえてきた。
この音は……?
僕はおそるおそる、目を開いた。
するとそこには、とても大きな剣を持った男がアンノウンと戦っていた。
あの人、アンノウンと戦ってるの……?
僕は、ただぼうぜんとその戦う光景を見ていた。
僕は何が起こったのかわからなかった。
「これで終わりだ!」
男は剣を振り上げ、勢いよくアンノウンに向けて振り下ろした。
「……」
僕はただぼうぜんと、彼を見つめていた。
すると彼は、アンノウンに突き刺さった剣を引き抜きこちらに近づいてきた。
「君大丈夫かい?」
その男はこちらに手を差し伸べてくれた。
「う、うん……」
僕は彼の手を握り、立ち上がった。
「君、まだ子供なのにすごいね。
女の子を助けたんだって」
男の人がそう言うと、物陰からさっきの女の子が出てきた。
「さっきはありがと……お礼に、これあげる」
そう言うとその子が持っていたポーチからキラキラと光る銀色のペンダントを取り出し、僕に渡してきた。
「さっきそこで拾ったの。
えへへ、キラキラしていてキレイでしょ」
僕は、そのペンダントを受け取った。
その瞬間、電撃のような衝撃が僕の身体を巡った。
「ぐ・・・」
「ど、どうしたの?」
その女の子が僕の肩に触れると、その衝撃はより強力になり……。
「うわぁぁぁ‼」
そして僕の意識は、遠のいていった。
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