密室にて
目が覚めたら、僕は見覚えのない部屋にいた。難しそうな本が大量に置かれた本棚、高級そうなソファー、そして47インチの薄型テレビ、あ、テレビには最新ゲーム機「Wil」が置いてある。妙に生活感漂う部屋だな。
窓の外はもう夜だった。
後頭部が痛む、どうやらあの刀は模造刀だったようだ。まぁ、そうで無ければ僕は今ごろ肉片になっているんだろうが。
そうだ、彼女はどこに行ったんだろう?
とりあえず外に出てみようと思った時、僕は起き上がれなかった。
腰が抜けたわけではない、縛られているのだ。しかもその結び方がなんと言うか・・・、かなりエロティックなんだが・・・。多分、亀甲縛りというやつだと思う。
亀甲縛り(きっこうしばり)
縄による縛り方の一つ。現代では荷造り等の実用面よりも、主にSMプレイにおける最も一般的な緊縛様式として用いられる。
拘束感が少ないものの見た目が美しいため多用される。なお、厳密には身体に這う縄が六角形になるものを亀甲縛りと呼び、菱形になるものを菱縄縛りと呼ぶ。完成した全体としての見た目が亀の甲を連想させるという観点から、菱縄縛りも亀甲縛りに含める場合もある。
というのを聞いたことがある、どこで聞いたかって、聞くな僕もこんな見てくれだが男だ。
結び方はさて置き、今は結ばれているという事実の方が大変だ。
そんな事を考えていた時、部屋のドアがゆっくりと開けられ、人が入ってきた。
「あら元気そうね、死んだかと思ったわ」
入ってきたのは、例の僕に襲いかかってきた超絶美少女だった。
「死ぬほど痛かったがな、それよりどういうことだ、ちゃんと説明してもらうぞ。」
「せっかちなのね、そんなのだったら頭ではなく目を狙えばよかったわ」
「ごめんなさい、説明して頂けませんか。」
彼女は美少女などではなく鬼だった。
「よろしい、物分かりのいい子は好きよ、私の名前は椿野雪奈。貴方と同じ稲荷宮高校の二年よ」
年上か、どうりで大人びた雰囲気があると思った。僕には二人のうるさい姉がいるから、年上の考えている事は大体分かる。
「貴方今、私を年増だと思ったでしょ、万死に値するわ死になさい。」
「そんな事思ってねえよ!」
訂正、年上の考えている事は僕にも分からない。
「自己紹介も済んだところで説明してもらうぞ、何故僕は捕獲されてるんだ。」
もう年上とか関係無い、僕は普通にタメ語を使っていた。
「まだ言ってなかったかしら?」
「突然切りかかられたから何も聞いてねえよ。」
「あれは貴方が逃げるならじゃない。」
「誰だってあの状況じゃ逃げるよ・・・。」
「そう、では教えてあげましょう、私が貴方を捕獲した理由、それは・・・」
「それは?」
「私は可愛い物が大好きだからよ!」
椿野さんは高らかに宣言していた。