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捕獲

「付き合ってください!」

授業が終わった放課後、僕は体育館裏に呼び出されていた。日も傾きかけた夕方五時、告白するにはぴったりの時間帯だろう。

高校一年の初夏の夕方、僕は告白されていた。

普通に考えたら「リア充爆発しろ!」と言われても仕方ないぐらい良いシーンのはずだ。

僕の名前は紗倉周(さくら あまね)、県立稲荷宮高校に通う普通の男子生徒だ。

そして告白してきた相手の名前は藤島。

そう、「藤島大輝(ふじしま だいき)」正真正銘、男だった



登下校用の自転車置き場、すぐ近くの体育館からはバスケ部の練習の声が聞こえる。僕は基本的に自転車登校のため、この場所は馴染み深い。

「またか周ちゃん、お前の可愛いらしい見た目も罪なもんだな」

「笑いごとじゃねえよ、高校に入ってから何回目だと思ってるんだ・・・。あと、前から言ってるがそのちゃん付け止めろ、凄えムカつくから。」

「まあまあ、いいじゃねえが呼び方ぐらい、それにこっち方がしっくりくるだろ。」

そう言って自転車の鍵を開け、笑いながら話しかけてくるクラスメイトの武川響(むかわ ひびき)、小学校からの悪友である。

「可愛いらしい見た目」と言われたのは僕のことだ。

肩まで長くのびた黒い髪。

男にしては小さい身長。

毛の生えてない綺麗な肌。

そのほかにも目、鼻、口、手、声。全てが女に見える


僕はこの見た目のせいで今まで苦労をしてきた。

トイレに入れば不審者扱い、銭湯に行けばつまみ出され、はたまた電車にのれば80%の確率でサラリーマンのおっさんに痴漢をされる。

この時点で聞いた人は「女には好かれるんじゃないか?」と思うだろうが、そんな事はなかった。だって女の子からしてみれば、クラスの男子が次々に僕に告白してくるんだ、当然その中には自分の好きな子もいるだろう、好かれるはずがない。

さっきの藤島みたいに告白してくる奴は初めてではなかった。藤島は僕を男だと知らずに告白したみたいだが、中には男だと知ってなお、告白してくる奴もいる始末。

ちなみに、今、隣にいる武川は完全なるアニメオタクなため女になんか告白はしないし、僕に告白するなんて気の狂った真似はまずしないが。というより、そのおかげで僕は武川と友達でいられる訳だ。

「じゃあな、周ちゃ〜ん」

「だから、ちゃん付け止めろって!」

そう叫んだか、武川は自転車をダッシュで漕ぎながら十字路の反対方向に走って行ってしまった。



武川と別れてから数分が経ち、僕は家のすぐ近くまで来ていた。あとこの坂を登れば我が家だ。

「今日は蒸し暑かったから早く風呂に入りたいなー」

そんなどうでもいい事を呟きながら坂を登ろうとしたその時、

「そこの貴方、止まりなさい!」

透き通るような声で僕は呼び止められた。何の疑問も持たず後ろを振り返ると、


それはもう、超絶美少女がいた。


腰まで伸びた長い黒髪ポニーテール。

少しだけ吊り上がった性格の強そうな目。

そして、清潔感溢れるオーラ。

まるで、美術品のように美しいくて儚く時間が止まったような感覚だった。


「あのー、どうかしましたか?」

不覚にも見惚れてしまった僕は、ほんの数秒の間をおいて質問した。

「貴方が紗倉周さん?」

僕の名前を呼んだ彼女は微笑みながら話しかけてきた。僕の名前を知っているのは学校が同じだからだろう、制服が同じだ。

「あ、はい、そうですけど・・・。どうかしましたか?」

彼女に心当たりがなかったため、普通に返事をした。

そして彼女も大きく間をおいて話し始めた。


「私は貴方を捕獲しに来たの。」


そう言って彼女はニッコリと笑った。「笑った顔も可愛いなー」一瞬そう思ったが、今のツッコミどころはそこじゃない。聞き間違いかと思いもう一度聞いた。

「・・・すいません、もう一度言ってもらっていいですか?」

「私は貴方を捕獲しに来たの。」

「・・・・。」

聞き間違いではなかった。

ヤバイ、どうもヤバイ気がする。具体的には彼女の頭が。

「ほっ!?捕獲?!」

「ええそうよ、捕獲しに来たの」

「えーと・・・、何かの比喩ですか?」

一般人なら同じことを思うだろう、というか比喩であってほしかった。

しかし、彼女の答えは違った

「いいえ、文字どうりの意味よ。それでも分からないのなら金田一京介さんにでも聞いて頂戴」

「そんな国語辞典での日本語の意味は分かるよ!」

なんだこの人、頭のネジが飛んでるのか。

「時間が無いわ、早くしましょう。」

そう言って彼女はどこからともなく日本刀を取り出した。

「ちょっと待って!それ本物!?」

「さあ?分からないわ、ただ、何人もの血を吸ってることは知ってる」

「本物だよっ!」

危機を察知した僕は家まで一目散に自転車を漕いだ。

「あら?その程度の速さで逃げられると思ってるの?」

そう言って疾風の如く日本刀を取り出し切りかかってきた。

彼女の足は思いのほか早く、切りかかられた僕は気絶してしまった。

いや、死んだのか?

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