第5話
更新が遅くなり申し訳ありませんでした。
ジーニーの後を追う形で佐山は獣道を歩く。
最中、先ほどのジーニーの言葉を思い出し、尋ねた。
「そういえば、気になったんだが……冒険者とはなんだ?」
数歩先を行くジーニーが足を止め、佐山の方へと向き直った。
その顔に浮かんでいるのは困惑で、えっと、と言葉に詰まり。
「……えっと、サヤマ、さん? 私てっきりサヤマさんは冒険者の方だと思っていたんですが……」
同じく佐山も歩みを止めた。
「……少なくとも、そう自称したことはないな。 あるいはそれらしいことをしたときがあるかもしれないが」
所謂クエストというものである。
が、ゼロサムオンラインにおいて冒険者などと言う物は存在せず、クエストも条件を満たしNPCから直接受注するものが全てであった。
それでもクエストをしている以上、冒険者らしいといえばらしいのだろうが、そんなものがゲームの中だとしても一般的な職業としてあるとはとても思えない。
「……えっと、ですね。 冒険者というのは、ギルドから依頼を受注してそれを達成する代わりに報酬を貰う人たちのことなんですけど……」
(ギルド、ギルド……か。いやはや、何がどうなっているのやら)
佐山の記憶の中にあるそれは、プレイヤー同士の集まりであり、目的を同じくするものか身内同士で固める物……というイメージがあるのだが、それはゲームによってことなるのが実際である。
プレイヤーとしての集まりが大体と占めるが、中には単に生産や売買を行うNPCキャラが構える店の総称につくものもあり、勿論それ以外にもある。
が、ファンタジー小説にはよくあるギルドというものだが、実際にファンタジー系統のオンラインゲームにおいて、ファンタジー小説にあるようなギルドはないといってもいい。
で、ある以上疑問を持つのは当然ともいえる。
「ギルド、か。 俺の記憶にあるそれはあくまでも友好関係を主としたものだったんだが……違う、のか?」
その佐山の言葉に、ジーニーはその瞳を大きく見開いた。
「サヤマ、さん……それは数百年前の認識です……よ?」
まさか、と佐山は思った。
ゴクリ、と喉が鳴る音。
「……っ、この国の名前は? ヴィルムという国名に聞き覚えはあるか?」
「嘘、信じられない…………」
手を口に当て、やがて意を決したようにこう言った。
「サヤマさん……貴方は、300年前の消失時代の人、かもしれません」
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VRMMO――それは既に確立されたジャンルだ。
雛形のVRMMOはMMOの代表的なものに習った王道的なものであったが、やがてVRというジャンルに参入する企業が増えるたびに、過去に流行したMMOというジャンルと同じように多種多様なものが増えていく。
例えば転生システムの導入されたものや転職システムの導入されたもの、そういうものが最たる例だが近年ではそれだけでは個性足り得ない。
故に、それが生まれた。
対人戦とストーリーを主軸としたVRMMO――ゼロサムオンラインという名前で発表されたそれに人々は熱狂した。
それはプレイヤーに限った話しではない。
ゲームに興味のなかった一般層でさえ、だ。
何故か? 簡単である。
そこには健全な殺し合いがあったからだ。
流血もなく、魔法などという非現実的なものがあり、これは殺し合いではないと認可された戦いが。
そしてその戦いをもっと見たいという需要が出来た。
故に新規に対人を主としたVRMMOを作ろうとする企業が出現し、上級プレイヤーの流出による質の低下を恐れたゼロサムオンラインの運営陣は決断する。
一部の上級者プレイヤーを雇い入れよう、と。
これによりVRMMOというジャンルにプロが生まれた。
佐山 式はプロプレイヤーである。
そのLvは97、尚、レベルキャップは現在限界の100まで開放されており、残されたアップデートはラストダンジョンと隠しフィールドのみ。
既に年末に運営の終了と年始に次回作のクローズドベータの開始が決定されており、佐山は次回作においてもプロとしての雇用が決まっていた。
ストーリーのクライマックスに向けて白熱した空気の中、プロプレイヤーとしての佐山は攻略組みとしても注目され、しかし、ある日突然その姿がゲーム上で見受けられなくなった。
時を同じくして大手ギルドのマスターなどもオンライン上から姿をくらまし、人はそれを神隠しと呼んだ。
短いですがキリがいいのでこれにて。
7月4日にプロローグを投稿しましたのでよければよんでやってください。
あ、諸事情で女性プレイヤーの名前を変更しました。