「時代遅れ」
茨木のり子(1926–2006)は、戦後の日本を代表する女性詩人である。
平易かつ力強く、凛とした言葉で人間の内面や社会を見つめる詩を数多く残し、「現代詩の長女」と証された。
数多く詩の中で特に「時代遅れ」という詩は多くの人に刺さった作品である。
時代遅れの冒頭こんな詩からはじまる「車がない/ワープロがない/ビデオデッキがない/ファックスがない/パソコン インターネット 見たこともない/けれど格別支障もない」。
これは現代社会の最先端とは逆行した人である。
この詩集が発売されたのは1999年のこと、。この時代はNTTドコモの「iモード」が開始され携帯電話が爆発的に普及したほか、ソニーが世界初の家庭用エンターテインメントロボットを発売。当時25万円という高価格ながら即日完売するほどの衝撃を与えた。そんな時代である。
ソンな、コンピュータ-とは全く無縁だった。
詩は原稿は4Bか6Bの鉛筆で書き、連絡は固定電話か速達郵便だったという。
「時代遅れ」の最後にはこんな詩が書かれている。
「そんなに情報集めてどうするの/そんなに急いで何をするの/頭はからっぽのまま」と激しくも厳しい言葉で現代社会をきった。
この詩集は現代詩としては異例のベストセラーになった。
これはもう400年前の作品だが我々のことを言っているようなものだと私は思った。
毎日のようにスマートフォンを触り,特に調べることがないのにスラスラと気づいらもうこんな時間になる。
私たちはとりつかれたように最先端技術を追いかける。
小説を書いている私たちもアイデアも文字も思想もAiに頼ってしまうこの時代。
もしも茨木のり子さんが生きていたらいったいどんな言葉で我々を叱ってくれるのだろう。




