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無能だと追放された俺、実は世界で唯一のマジック・リサイクル保持者だった件

作者: 塩野さち
掲載日:2026/02/24

 抜けるような青空の下、重厚な石造りのギルド本部の門前で、俺は地面に膝をついていた。


 目の前には、さっきまで仲間だと思っていた三人の男女が、冷ややかな視線で見下ろしてきている。


「悪いな、レント。お前みたいな魔力枯渇症(マナ・ドレイン)をこれ以上連れて歩くわけにはいかないんだ」


 リーダーの剛剣(ごうけん)のザックスが、肩に担いだ大剣をいじりながら吐き捨てる。


「待ってくれ、ザックス! 俺の支援魔法があれば、みんなの継戦能力は上がるはずだ!」


「ハッ、笑わせるな。お前の魔法は燃費が悪すぎるんだよ。一発撃ったらすぐに魔力切れで座り込む。そんな荷物、Sランクを目指す俺たちには必要ない。じゃあな、無能さん」


 三人は一度も振り返ることなく、華やかな王都の大通りへと消えていった。


 ◇◆◇


 俺は重い体を引きずりながら、街の外れにある森へと向かった。

 この世界では、魔力は食事や休息で自然に回復するものだ。だが俺の体は特殊で、自然回復が一切行われない。


 だから、一度魔法を使えばそれで終わり。

 世間ではそれを『魔力枯渇症』という欠陥品として蔑んでいた。


(……腹が減ったな。魔法で火でも起こして、魚でも焼くか)


 俺は指先に意識を集中させる。

 体内に残った、最後の一滴と言ってもいい魔力を振り絞った。


火球(ファイア・ボール)!」


 ボッと小さな火が灯った瞬間、俺の視界がぐらりと揺れた。魔力が完全に空になった証拠だ。


 その時だった。


『条件を達成しました。固有スキル魔力自給自足(マジック・リサイクル)が覚醒します』


 頭の中に、聞いたこともない無機質な音が響いた。

 驚く俺の視界に、不思議な半透明のパネルが浮かび上がる。


『本スキルは、消費された魔力を自動で回収・精製し、最大値(マックス)を突破して還元します。現在、放出したエネルギーを再吸収中……』


 次の瞬間。

 空っぽだったはずの体の奥底から、熱い濁流のような力が湧き上がってきた。


「な、なんだこれ……!? 力が、どんどん溢れてくる!」


『魔力回復完了。さらに過剰供給分を加算。現在の魔力:一万五千/百』


 どうやら俺の能力は、魔力が「回復しない」のではなく、一度「ゼロ」になることで周囲からエネルギーを無限に奪い取る、とんでもないバグスキルだったらしい。


 ◇◆◇


 その直後。

 森の奥から「ギャアアア!」という耳をつんざく叫び声と、聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。


(……ザックスたちの声か?)


 駆けつけた先で見たのは、絶望的な光景だった。

 そこには、王都付近には現れないはずの災害級モンスター地竜(アース・ドラゴン)が、ザックスたちを追い詰めていた。


「ひ、ひぃっ! なんでこんな化け物が……! ミーナ、魔法で動きを止めろ!」


「無理よ! もう魔力が空っぽだわ!」


 ザックスの剣は折れ、仲間たちは腰を抜かしている。

 地竜が大きく口を開け、彼らを丸呑みにしようとしたその時――。


「――極大消滅破(エクス・プロージョン)


 俺の放った閃光が、地竜の巨体を一瞬で塵へと変えた。

 轟音が止み、静寂が訪れる。


 呆然とするザックスたちが、ゆっくりと俺の方を振り返った。


「レ、レント……? お前、今の魔法は……」


「ああ。魔力が切れたおかげで、新しい力に目覚めたんだ」


 ザックスの目が、卑屈な期待に輝いた。


「そ、そうか! さすが俺の自慢の仲間だ! さあ、早く俺たちに回復魔法をかけろ。それからギルドに戻って、この手柄を報告してやる。お前をパーティーに戻してやってもいいぞ!」


 その厚かましい言葉を聞いて、俺は心から笑った。


「断るよ」


「……あ?」


「お前たちが言ったんだろ? 『無能を連れて歩くわけにはいかない』って。今、俺にとっての無能は――魔力が切れて動けない、お前たちのことだ」


 俺は背を向け、一歩踏み出す。


「ま、待て! 見捨てるのか!? ここはまだ魔物が出るんだぞ!」


「大丈夫だよ、ザックス。お前なら『自慢の剛剣』でなんとかできるだろ? ……あ、もう折れてたっけ」


 泣き叫ぶかつての仲間を置き去りにして、俺は夕焼けの中を歩き出す。

 溢れる魔力があれば、どこへだって行ける。


 俺を必要とする場所は、きっとこの広い世界のどこかにあるはずだから。


(おわり)


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