無能だと追放された俺、実は世界で唯一のマジック・リサイクル保持者だった件
抜けるような青空の下、重厚な石造りのギルド本部の門前で、俺は地面に膝をついていた。
目の前には、さっきまで仲間だと思っていた三人の男女が、冷ややかな視線で見下ろしてきている。
「悪いな、レント。お前みたいな魔力枯渇症をこれ以上連れて歩くわけにはいかないんだ」
リーダーの剛剣のザックスが、肩に担いだ大剣をいじりながら吐き捨てる。
「待ってくれ、ザックス! 俺の支援魔法があれば、みんなの継戦能力は上がるはずだ!」
「ハッ、笑わせるな。お前の魔法は燃費が悪すぎるんだよ。一発撃ったらすぐに魔力切れで座り込む。そんな荷物、Sランクを目指す俺たちには必要ない。じゃあな、無能さん」
三人は一度も振り返ることなく、華やかな王都の大通りへと消えていった。
◇◆◇
俺は重い体を引きずりながら、街の外れにある森へと向かった。
この世界では、魔力は食事や休息で自然に回復するものだ。だが俺の体は特殊で、自然回復が一切行われない。
だから、一度魔法を使えばそれで終わり。
世間ではそれを『魔力枯渇症』という欠陥品として蔑んでいた。
(……腹が減ったな。魔法で火でも起こして、魚でも焼くか)
俺は指先に意識を集中させる。
体内に残った、最後の一滴と言ってもいい魔力を振り絞った。
「火球!」
ボッと小さな火が灯った瞬間、俺の視界がぐらりと揺れた。魔力が完全に空になった証拠だ。
その時だった。
『条件を達成しました。固有スキル魔力自給自足が覚醒します』
頭の中に、聞いたこともない無機質な音が響いた。
驚く俺の視界に、不思議な半透明のパネルが浮かび上がる。
『本スキルは、消費された魔力を自動で回収・精製し、最大値を突破して還元します。現在、放出したエネルギーを再吸収中……』
次の瞬間。
空っぽだったはずの体の奥底から、熱い濁流のような力が湧き上がってきた。
「な、なんだこれ……!? 力が、どんどん溢れてくる!」
『魔力回復完了。さらに過剰供給分を加算。現在の魔力:一万五千/百』
どうやら俺の能力は、魔力が「回復しない」のではなく、一度「ゼロ」になることで周囲からエネルギーを無限に奪い取る、とんでもないバグスキルだったらしい。
◇◆◇
その直後。
森の奥から「ギャアアア!」という耳をつんざく叫び声と、聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。
(……ザックスたちの声か?)
駆けつけた先で見たのは、絶望的な光景だった。
そこには、王都付近には現れないはずの災害級モンスター地竜が、ザックスたちを追い詰めていた。
「ひ、ひぃっ! なんでこんな化け物が……! ミーナ、魔法で動きを止めろ!」
「無理よ! もう魔力が空っぽだわ!」
ザックスの剣は折れ、仲間たちは腰を抜かしている。
地竜が大きく口を開け、彼らを丸呑みにしようとしたその時――。
「――極大消滅破」
俺の放った閃光が、地竜の巨体を一瞬で塵へと変えた。
轟音が止み、静寂が訪れる。
呆然とするザックスたちが、ゆっくりと俺の方を振り返った。
「レ、レント……? お前、今の魔法は……」
「ああ。魔力が切れたおかげで、新しい力に目覚めたんだ」
ザックスの目が、卑屈な期待に輝いた。
「そ、そうか! さすが俺の自慢の仲間だ! さあ、早く俺たちに回復魔法をかけろ。それからギルドに戻って、この手柄を報告してやる。お前をパーティーに戻してやってもいいぞ!」
その厚かましい言葉を聞いて、俺は心から笑った。
「断るよ」
「……あ?」
「お前たちが言ったんだろ? 『無能を連れて歩くわけにはいかない』って。今、俺にとっての無能は――魔力が切れて動けない、お前たちのことだ」
俺は背を向け、一歩踏み出す。
「ま、待て! 見捨てるのか!? ここはまだ魔物が出るんだぞ!」
「大丈夫だよ、ザックス。お前なら『自慢の剛剣』でなんとかできるだろ? ……あ、もう折れてたっけ」
泣き叫ぶかつての仲間を置き去りにして、俺は夕焼けの中を歩き出す。
溢れる魔力があれば、どこへだって行ける。
俺を必要とする場所は、きっとこの広い世界のどこかにあるはずだから。
(おわり)
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