第一章5 逃避という名の断絶
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【注意】
この話には、残虐な描写(自殺を表現する描写など)があります。苦手な方は、閲覧をお止めください。
「——っ!!」
拓海は、弾かれたように跳ね起きた。
喉の奥にこびりついた鉄の味。胸を貫かれた、あの熱く鋭い衝撃。震える手でシャツを捲り上げたが、そこには傷ひとつない。
(……夢だ。あんなの、絶対に夢だ)
そう自分に言い聞かせるが、心臓の鼓動が早鐘のように鳴り止まない。
カーテンの隙間から差し込む光が、あの公園の街灯と同じ色に見えて吐き気がした。
「拓海、早く起きなさい! 学校遅れるわよ!」
下の階から聞こえる母親の声。いつも通りの日常だ。
けれど、拓海は言いようのない恐怖に支配されていた。あの夢があまりにもリアルで、外に出ればまた「何か」に襲われるのではないかという予感に足がすくむ。
「……無理だ。行けない」
拓海は布団を頭から被り、掠れた声で叫んだ。
「お母さん、頭が痛い……。今日、休む……」
心配して部屋に来た母親を「放っておいてくれ!」と追い返し、拓海は暗い部屋の中で膝を抱えた。
外に出なければいい。誰とも会わなければ、あの恐ろしい結末に飲み込まれることはないはずだ。
(これでいいんだ。家から出なければ、僕は死なない……)
拓海は一日中、スマホも電源を切ったまま、外界を遮断して過ごした。
夕方になり、部屋が不気味な橙色に染まる。
「やっぱりただの悪い夢だったんだ」と自分を納得させるため、拓海は震える手でテレビをつけた。
『……続いてのニュースです。本日午後五時頃、市内の公園で女子中学生が倒れているのが見つかりました』
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
画面に映し出されたのは、あの夢の中で自分が死んだ、駅裏の公園。
『亡くなったのは、本日この街に転入してきたばかりの——』
「……嘘だ」
膝の震えが止まらない。
自分は家から一歩も出ていない。あの女の子……「結」さんとも会っていない。なのに、ニュースの中の彼女は、夢と全く同じ場所で、全く同じ最期を遂げていた。
(なんで……。僕は行ってないのに、なんで死んでるんだよ……!?)
誰がやったのか。なぜ自分はあの光景を「夢」で見たのか。
何も分からない。ただ、この世界が自分を逃がしてくれないことだけが、冷酷な事実として突きつけられた。
それから数日、拓海は生ける屍のように過ごした。
学校へは行けず、食事も喉を通らない。
目を閉じれば結の死に顔が浮かび、目を開ければ「次は自分かもしれない」という正体不明の影に怯える日々。
中学生の心は、もう限界だった。
何が起きているのか分からない。
どうすれば助かるのかも、誰に助けを求めればいいのかも分からない。
ただ一つ確かなのは、このまま息をしているだけで、心臓が恐怖で削られていくということだけ。
「……もう、嫌だ」
拓海は震える足で、数日ぶりに体操服とジャージを着て、数日ぶりに外に、学校へとでかけた。
何もかもを終わらせたい。この理解できない恐怖から、自分の意識を消してしまいたい。
その一心で、この辺りで一番高い建物である学校へと向かった。
今日は、普通なら部活動のある日だ。外からは、運動部の元気な掛け声が聞こえる。僕は、誰をいない職員室から、生徒会室の鍵をとって、階段を上った。一段一段がいつもよりも重く感じた。
生徒会室の鍵をあけ、窓を開けベランダへとでた。
「ごめん……なさい……」
拓海は目をつぶり、暗闇の中へとその身を投げ出した。わかっていたのに、知っていたのにあの子を救えなかった。このループから、死から助け出してあげたい。そんなことだったのに、もうその現実から逃げることになってしまった。
お母さん、お父さん、ごめんなさい。こんな風に人生を終わらせてしまって。終わらせようとしまって。
重力に逆らえず地面へと降り降りていった。
最後に見えた景色は、アスファルトの地面が、赤色で染まっていたものだった。
激痛で身動きが取れないなか、もがくこともできず、人生は終わった。
ーーーーーーー
「あぁぁ。せっかくの私のお気に入りの玩具壊れちゃった。 前の玩具の方が、長くしぶとかったのに、今回は、これだけか。」
「さて、またこの魔方陣を使って遊ぶ、次の玩具を見つけないとね。」
「でも、前の玩具とは違う面白さがあったわ。さて、みんなの記憶から消すの忘れずに」そう言って、ユキは、杖を振り上げて『記憶消去の魔法』をかけこの地を立ち去っていった。
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