第一章4 悪夢であってくれ
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あの夢と同じ、放課後の緑地公園。
街灯がチカチカと不規則に瞬く。
拓海は、隣を歩く結の横顔を盗み見ました。
彼女のカバンには、あのアリバイのようなストラップが揺れています。
(夢では、ここで……)
「……ねえ、拓海君。今日、会えて本当に良かった」
結が足を止め、柔らかく微笑みます。そのセリフも、表情も、あの日——僕が「悪夢」だと思い込もうとしている記憶と、寸分違わず重なりました。
「……ああ。僕も、だよ。結さん」
拓海は、自分の声が震えていることに気づかないふりをして答えました。
夢が現実になるはずがない。ここでストラップが壊れるなんて、そんな漫画みたいな不吉な偶然、あるわけがない。
——カラン。
乾いた金属音が、冷たいアスファルトの上で跳ねました。
「あ……壊れちゃった……」
結が困ったように眉を下げ、足元に落ちたストラップの連結器を見つめます。
拓海の視界が、一瞬で白濁しました。血の気が引き、指先が氷のように冷たくなります。
(嘘だ。……嘘だろ。なんで、同じなんだ……!?)
結がそれを拾おうと身を屈めます。
拓海の脳裏に、あの夢の「死」の光景が、強烈なフラッシュバックとなって突き刺さりました。
あれは、本当に夢だったのだろうか。
背後の闇が、生き物のように蠢き始めます。
「結、ダメだ! 拾っちゃ……!」
叫びながら手を伸ばそうとした、その瞬間でした。
闇の中から、音もなく「死」が溢れ出しました。
夢、一回目と全く同じ、形のない影。それが結の背中を無慈悲に貫きます。
「——っ」
結の声にならない悲鳴。
飛び散る鮮血が、拓海の頬に熱くこびりつきます。
(……ああ。やっぱり、夢じゃなかったんだ)
崩れ落ちる結の体。それを見下ろす自分の視界も、次の瞬間、背後から突き立てられた鋭い衝撃によって反転しました。
激痛。内臓が焼けるような熱さ。
地面に這いつくばる拓海の目の前には、血に染まったストラップと、そして——。
公園の入り口に、あの時と同じ青白い魔法陣が、冷酷な光を放って広がっていました。
『……残念。やっぱり、二回目も守れなかったわね。拓海君』
光の中に立つ、少女の影。
その言葉が耳に届いた瞬間、拓海の意識は激痛と共に、再び真っ暗な淵へと叩き落とされました。
「悪夢」という逃げ場は、もう、どこにもありませんでした。
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