第5話 冒険者の街
帝都アルタイルを出発してから3日目。俺たちがオリンの関所まで行くと、マヨが何やら文字の書かれた金色のプレートを出した。
そのプレートを役人に見せると、いとも簡単に中に入ることができた。
「なんだそのプレート」
「まぁ、簡単に言えば上位階級の特権よ。自国の街だけでなく、他国でも使える優れものよ」
「へぇ〜、伊達にお姫様してないんだな」
そんな話をしながら冒険者ギルドへ向かう。
オリンは帝都より賑わっており、剣や弓、杖などの装備を持った冒険者と思われる人たちがたくさんいる。まさに異世界らしい光景だ。
「たっくさん人がいるね!」
「そうだな。あっ、お前と同じ獣人もいるぞ!」
「パーティは3人から組めるんだけど、周りを見るに5人が主流みたいね」
新鮮な雰囲気を堪能しながら歩き、やがて冒険者ギルドに着いた。俺は何も知らないので、登録は全部マヨ任せだ。
「失礼します。ギルドの新規登録に来たんですけど」
「はい、ではこの書類に詳細情報をご記入ください」
受付の人に紙を渡され、そばにある席に座って書類を書く。
「役職……私とミリアは魔法使いでいいけど、テンコはどうしようか……魔法使い3人じゃ変だし……」
「役職ってどんなのがあるんだ?」
「そうねぇ……」
俺が尋ねると、マヨは少し考えて口を開いた。
「加護系の役職だと、身体強化系のスキルを持つ戦士や、剣術、槍術、弓術スキルを持つ剣士、槍士、弓士など、他にも色々あるわ。魔法系は基本魔法使いね」
「う〜ん……この際適当でいいか?」
「あぁ、それなら加護使いってのはどう? 別名『神聖魔法使い』とも呼ばれていて、テンコの創造の力にピッタリ。別に表面上だけだから、ダンジョンでは魔法も使えるし」
「バランスが悪そうなのは変わらない……が、いいねぇ。じゃあそれで!」
役職も無事決まり、マヨは続きを書いていく。
「年齢は?」
「16歳にしようかな」
(この世界では知らんが、実際16歳だし……)
「私と同じね。ミリアは……」
「あたしは9さい」
「9ね」
マヨは素早く書類を書き上げる。
「何級ですか……か。私が4級でミリアはだいたい3級くらいね……パーティの階級が高い方がいい仕事貰えるし、テンコは1級でいいわよね?」
役職の階級を記入するところで、マヨが俺に視線を向ける。
「1級? あぁ、加護使いの階級の事ね。でも証明になるもの持ってなくね?」
「ちゃんとあるわよ。パパからもらった加護使い1級の腕輪」
「……犯罪者」
「違う、これは特権よ!」
「便利な言葉だな」
そして、なんやかんやあったが無事手続きも終わり、冒険者の証である青紫色の魔石が着いたペンダントをもらった。
ちなみに青紫色は2級パーティの証らしい。
「よしっ、これで一安心ね」
「じゃあ、さっそくダンジョンにでも行きますか」
「たくさん魔物狩ろう!」
まだ昼前だったので、俺たちはさっそく空いているダンジョンの予約をとり、そこへ向かった。
――目的のダンジョンへたどり着くと、そこにはしっかりとした石積みの入口があった。
「今回は中級のダンジョンっぽいな」
俺たちは中へ入っていく。
ちなみにダンジョンは危険度順に低級、中級、上級があるようだ。
今回のダンジョンは前回のとは違い、しっかりとした迷宮といった感じだ。
「なぁ、階級って1級が最高なのか?」
ダンジョンに入ると、俺は不意に質問する。
それを聞いて、マヨは詳細を話し始めた。
「いや、加護使いなら5級~神星級。魔法使いなら5級~魔星級まであるわ。ちなみに1級の上が超級でその上が神星、魔星級よ」
「へぇ〜、やっぱり超級とかだと騒ぎになる感じ?」
「そうね。少なくともこの国に超級の称号を持つ者は100人もいないんじゃないかしら。魔星級なんかは魔王レベルとほぼ同義だから、騒がれるなんてレベルじゃないわ」
「ほぉ〜」
「あたしもいつかは魔王になって、テンにぃより強くなる!」
「おぉそうか、俺が鍛えてやってもいいぞ!」
そんな会話をしていると、目の前に分かれ道が現れた。
俺が真ん中の道を見ると、そこには古代文明の痕跡がちらほら見える。
「……このダンジョン、古代系のようね」
マヨはそう言いながら壁に刻まれた模様や、微かに光るルーン文字を指差す。
「古代系? ダンジョンに種類があるのか?」
「元々ダンジョンっていうのは、古代の神殿や儀式の祭壇などがある迷宮や遺跡のことで、それを模してレベル上げ用につくった近代系ダンジョンの2種類が存在するわ。ちなみに前回のも恐らく古代系よ」
「なるほど……あっそうだ」〔解析〕
【古代アース神殿】
古代アース帝国の宮殿にあった地下迷宮。最奥部にはかつて儀式に使われた祭壇がある。
俺は解析を使って調べてみる。
「おぉ〜、テンにぃすごい」
「あんたの能力、そんな使い方もできるの!?」
「あ、あぁ、薬草の効能を調べたり、基本何にでも役に立つぞ」
「当然と言うべきか、腐っても魔神王ね。にしても聞いた事のない国だわ……まぁ、とりあえず進みましょ」
俺たちは直感で選んだ真ん中の道を進んでいく。
道には至る所に壁画やルーン文字の書かれた柱などがあり、まさに古代ダンジョンといった感じだ。
「壁に魔物らしきものが張り付いてるが、あれはなんなんだ? とりあえず……」〔解析〕
【古代監視獣:記録体バット】Lv.5
MP:100/100
HP:50/50
〈〈詳細〉〉 古代文明が記録用に作った魔物。迷宮侵入者の行動パターンを記録する。記録中は攻撃力が低下するが、データ取得後は自己防衛優先行動に切り替わり、襲ってくることもある。
俺が解析を使うと、壁にいるコウモリのような魔物が通常より高度な戦闘アルゴリズムで行動していることがわかった。
「……この魔物、俺たちを試してるみたいだな」
「試練って感じ?」
ミリアが少し興奮気味に声を出す。
「さぁ、どう出るか……」
俺は魔物と目が合うと、
「試してみるか……」〔雷光〕
と、俺は溢れる稲妻のオーラを右手からバリィ!っと放つ。
攻撃が魔物に直撃すると、すぐに倒れたものの体内のルーンが光り、壁の模様も反応する。
そして、ゴゴゴゴゴゴッと地響きが鳴り始めた。
同時に、後ろの道が塞がった。
「!? ……なるほど、どうやら魔物の倒し方で仕掛けが変わるみたいだ」
「まるで生きているダンジョンね」
俺は、魔物のルーンを解析してみる。
「『古代の警鐘。不用意に全ての魔物を排除すると、迷宮の封印が解除され、内部の構造が変化する』か……これが古代系ダンジョン……」
「一歩間違えたら、迷子になるわけね」
マヨは少し眉をひそめた。
その後も、俺たちはダンジョンを進み続けた。
先に進むにつれて、古代魔法の罠や迷路の分岐が現れる。
小型の『記録体スライム』も壁や天井に張り付いて、俺たちを観察している。
「これも古代文明の監視用の魔物か……」
「スライムさんがいっぱいいるね!」
ミリアがスライムを指差す。それを見て、
(このダンジョン、開放されたのは割と最近かもしれないな)
と、俺は考察する。
「なぁ、ダンジョンの階級ってどうやって測るんだ?」
「う〜ん、ウワサでは普通は入口から漏れ出る魔力の総量で決まるみたいよ」
「もしかしたらこのダンジョン、上級かそれ以上の価値があるかもしれないぞ。恐らく俺たちが一番乗りだ」
マヨの話を聞き、俺は確信したように口を開いた。
「!? 言われてみれば確かに……普通ダンジョンは先駆者たちが残したマップや詳細情報があるはずなのに、私たちは何も貰わなかった。つまりこのダンジョンが未開の地であり、ギルドの見立てよりもっと特殊な可能性もあるわね」
マヨもその意見に賛同する。
そして俺たちは、少し警戒を強めながらさらに奥へ進んだ。
しかし、奥までたどり着くと、そこは行き止まりになっていた。前の壁にはルーンと何かのシンボルが描かれている。
「行き止まり……か?」
俺が疑問に思っていると、
「この先に何かある……風の音が聞こえる」
と、耳をピクピクさせながらミリアが言った。
「風? この先に何かしらの空間があるってことか」
俺はルーンを解析する。しかし、書いてあるのはなにかの呪文のようだ。
「古代の封印魔法か何かか?」
俺がおもむろに壁に手を当てると、その瞬間、
――ドドドドッ……
と、突然壁が崩れ、古代の祭壇が姿を現す。
「な、なに!?」
「こ、古代の祭壇!?」
天井の高い、広大な神殿のような空間の中央にある祭壇の上には、何やら聖典のような本が開かれた状態で浮いて、光っている。どうやらこの祭壇が最奥部のようだ。
「……これは、一体……」
「すごい空間ね」
その空間内部に足を踏み入れると、空気が一変する。どこか静かで、神秘的で、その奥に潜む圧倒的な"何か"を感じる。
「このダンジョン、ただものじゃないわね」
「ひろ~い」
俺たちは中央の祭壇へと進んでいく。声と足音の反響が、静かに空気内を駆け巡る。
「わぁ〜、きれぇ〜」
「古代文字……ルーンとも違うな」
「なんの本なんだろう?」
俺たちは祭壇にたどり着き、本を覗き込む。
「とりあえず」〔解析〕
俺は、おもろにその本に手をかざし、解析を試みた。
しかし、
〈ピピッ! エラー。この書物の解析に失敗しました。現在の力ではこの書物を解析することは不可能です〉
と、エラーメッセージが表示された。
「なッ!? 解析できない!?」
それを見たマヨは、
「この本……もしかしなくても超重要な資料なんじゃ……すぐにギルドに報告しましょ!!」
と、その本の価値を確信し、本を取ろうとすると、
――バチィッ!
と、謎の結界のようなもので弾かれてしまった。
「ッたぁ!?」
「マヨ!?」
「マヨねぇ、大丈夫!?」
(なぜだ? 俺よりは手を近づけてなかったのに……)
俺はもしやと思って本に触れてみる。
すると、あっさりと本を手に取ることができた。本からはただならぬオーラが溢れ出ている。
「……取れた」
「……取れたわね」
(この感覚……どこか懐かしいような……)
あっさり取れて反応に困っているマヨを横目に、俺は本を手にして、どことなく既視感を覚えていると、
――ゴゴゴゴゴ――ッ
と急にダンジョンが揺れ始めた。
「きゃぁ!?」
「こ、今度はなによ!?」
俺たちが困惑していると、たちまち辺りが光に包まれ、気づくとダンジョンの入口に飛ばされていた。
「……なんだったんだ、このダンジョン」
「……そうね」
俺とマヨは、何が起きたのか理解が追いつかず、唖然とする。
そんな中、しっぽを振りながら、
「あ~、楽しかった!! 大冒険みたいだったね!!」
と、ミリアが笑顔でそう言い出した。
それを聞いて、俺もゲームのような刺激的な体験ができたことを嬉しく思った。
「そ、そうだな!! よしっ、次はもっと難しいダンジョンに挑戦だ!!」
「うん、頑張ろー!」
「そうね。私も楽しかったわ!」
みんなの笑顔を見て俺は静かに微笑む。心の奥で、この世界が奥深く、まだまだ広いことを実感した。
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〈主な登場人物〉
テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。
マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。
ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。




