第2話 不思議な世界
(異世界といえば...チート、隠れ最強、ハーレムetc.だよなぁ。宮殿を飛び出したものの、何しようか...)
皇宮を出発した後、街に向かって歩きながらそんなことを考えていた。
皇宮は自然に囲まれているため、俺はピクニック気分で歩く。
「そういえばマヨって、第一皇女なんだろ?街に出たら騒ぎにならないか?」
「大丈夫よ。そもそも私は表に出ないから、皇族と一部の貴族以外に顔は知られてないわ。この隊服も私のオーダーメイドだし。」
「ふーん。」
「それで、旅のアテはあるの?」
「アテ...かぁ...」
もちろんこの旅にアテなんてなく、強いて言うならば、異世界っぽいことがしたいとしか言えない。
「まずはこの世界のことを知るところからかな。ほら、5000年も眠ってたんだし、記憶も曖昧だし...」
俺は何となく話をそらす。
「かなり抽象的な理由だけど...まぁ、テンコが眠っていた間に起きた出来事といえば、『バグ』の発生かな。」
それを聞いて、マヨは戸惑いつつ話を始めた。
「ばぐ?」
「理由とかはよくわかってないんだけど、あなたが眠りについた後に突如として世界に不具合が起きたの。それが『バグ』よ。
バグが発生すると、予兆として魔物が突然変異したり暴走したりして、次にバグによって生み出される『ゴースト』が出現し、最後に――」
「ちょ、ちょっと待って!なぜそれを今ごろ?めっちゃ重要なことじゃねぇか!」
マヨがすました顔でエグいことを言い出し、俺は急な情報量に頭がパンクしそうになった。
「だって、テンコが起きるや否や旅に出るとか言い出すから...」
「そ、それはごめんだけど。」
「まぁ、バグの発生は数百年単位で不定期に起きるし、場所も定まってないから、そんなに焦る必要もないわよ。」
「それめっちゃフラグ発言...」
さてそんなこんなしていると、帝都『アルタイル』の街が見えてきた。
街は多くの人で賑わっている。
「なんかこんな格好じゃなんだし、服でも買っていくか?」
「うーん、そうね。私服は持っておいた方が良さそうだわ。」
街に着くと、俺たちはその辺にあった良さげな仕立て屋に入る。
「まぁ、こんなもんか。」
そして、異世界にありがちなコスプレのようにごちゃごちゃした服に着替えると、店を後にした。
「そういえば金はあるのか?」
それから俺たちは、これからの予定について話し合う。
「銀貨100枚くらいしか持ってきてないわ。食事代と宿代で3日ってところね。」
「お金ねぇ...何か稼げるものないのか?」
「うーん...無難なのはダンジョン攻略ね。そこにある宝や鉱石などを取ってくれば高く売れるわ。」
(ダンジョン攻略きちゃ〜!)
俺は異世界っぽい発言に、テンションが上がる。
「だ、ダンジョン!どこにあるの!?」
「いや、今日は遅くなるから明日にしましょ。」
「あぁ、そ、そっすね。」
だが、今すぐに行きたかった俺は、即テンションダウンしてしまった。
「まぁ、ダンジョンは逃げないんだから。夕飯でも食べて、今日はこの辺で宿をとりましょ。」
「まぁ、そうだな。」
日も傾き始めていたので、俺たちは飯屋に向かう。
「あっ、節約のため部屋は1つでいいからね。」
「は、はぁぁぁ!?あんた何言って――。」
「あぁ、違う違う。俺に睡眠は不要なの。」
「...そうなの?」
「おん。だって5000年寝たしね。」
「...」
その後、俺たちは(マヨだけ)宿をとって、明日の朝にダンジョンへ向かうことにした。
――朝になると、俺たちは宿の人に貰った地図を元に、ここから1番近いところにあるダンジョンを目指した。
「あんた夜中何やってたの?」
「ちょっとね、森で能力が正常に作動するかの実験を...」
「暴発したらどうすんのよ。」
そんな話をしながら歩いていると、前に少女がうずくまっているのが見えた。
ボロボロの服。茶色い毛並み。猫耳。しっぽ。
「獣人!?だ、大丈夫か!?」
俺たちがすぐに駆け寄ると、その少女はこっちを向いて、
「だ、だいじょうぶ、だよ...」
と、元気のない声で返事をした。どっからどう見ても大丈夫ではない。
「ちょっと待ってろ。」
(こういう時は魔法のポーションだよな。薬屋のおばあさんが言ってた万能薬を使えば...)
〔創造:オムニポーション〕
俺は自身の能力を使って薬を生成した。1日1回しか使えないがHPが全回復するらしい。
ちなみにHP云々はゲーム世界ということで、特に説明は聞かずスルーしていた。
「よしっ、成功だ!ほらこれを飲んで。」
その薬を少女に飲ませてあげる。
薬を飲むと、少女はすっかり元気になった。
「あ、ありがとう。」
「それで、こんな所で何してたんだ?」
それから俺が尋ねると、震える声でゆっくりと話し始めた。
「実は...あたしが捕まってた奴隷売買の店が魔物に襲われて、その隙に逃げ出して来たの...」
(うっ、急に重いな...)
奴隷という言葉に俺は眉をひそめる。
「魔物から逃げてここまで来たと言うことね...ここは帝都の聖域だから魔物が入って来れない結界が張ってある。だから無事だったのでしょう。」
「それにしてもどうする?身寄りがないんじゃ置いていく訳にも行かないし...」
そんな話をしていると、その女の子がしがみついてきて、
「あたしを置いていくの...?また...独りぼっちに...」
と、可哀想な顔で語りかけてきた。
(...この子安全を考えたとき、奴隷売買する輩がいる世界で1人にさせるべきじゃない...なに、悩むことじゃない。俺が守ってやればいいんだよ。
――だって俺は魔神王なんだから。)
「大丈夫、俺たちがしっかり守ってやるから。そうだろ、マヨ。」
「そうね。」
それを聞いて、その女の子はみるみるうちに笑顔になっていった。
「ありがとう!!あたしはミリア。お兄ちゃんたちは?」
安心したのか、すっかり声も明るく元気になっている。元々活発な子だったのだろうということが、ひしひしと伝わってきた。
「俺はテンコ。魔...旅人だ。」
「同じく、私はマヨよ。」
「あはは!じゃあテンにぃに、マヨねぇだね!!」
「わ、私をマヨねぇって呼ぶんじゃない。」
何やかんやあったけど、俺の仲間は2人に増え、ダンジョンに向かうのだった。
「ここがダンジョンの入口かぁ。」
しばらく歩いて、ダンジョンの入口とされる場所まで来ると、そこには洞窟の様なものがあった。
「そういえばミリア。お前って魔法か何か使えるのか?」
「うん!できるよ!!獣人は魔力の高い種族だからね。」
「マヨは?」
「うん、水魔法をね...弱いけど。」
「ほーん。なら問題ないな、行くぞ!」
そして俺たちは、ダンジョンの中へと入っていった。
ダンジョンの中は普通の洞窟といった感じで、雰囲気があまりない。どうやら低級ダンジョンのようだ。
ダンジョンは攻略されても、新たな魔物が住みつけば、その魔力で魔鉱石や薬草なんかが再び取れるようになるらしい。
「なんだか少し寒いね。」
「日光が入らないからかしら。」
「そうだミリア、そんな格好じゃいけないから服をやるよ。」〔創造:衣装〕
俺はそういうと指をパチンと鳴らす。
すると、ジジジッと綺麗な衣装が生成された。
「ほら、どうぞ。」
「わぁ!ありがとう、テンにぃ!」
ミリアはその少し動きやすい服を手に取り、嬉しそうに俺を見てくる。
「あんたドラ○もん?」
その傍ら、マヨは真面目な顔でぶっ込んできた。
「どッッ...」
(なんで俺の世界のアニメを知ってんだよ。ゲームマスター遊んでるな?世界観が壊れるだろ!)
俺は心の中で、そうツッコむ。
「てか、服出せるなら、私たちの私服買わなくてよかったじゃない。」
「いや、あの時はまだ能力の調整してなかったし...」
そんな風にワイワイしてると、奥の方から足音が聞こえ始めた。
「!!」
見ると大量のゴブリンが襲ってきている。
「ゴブリンか...」
俺は剣を生成した。マヨも腰の剣を抜き、構えている。
「相手は10体ちょっとといったところか...2人ともいける――」
「「うぉーー!!」」
「...え?」
しかし、2人は俺が言い終わる前に、ゴブリンに向かって駆け出してしまった。
「はっ!!ふん!!」
「あたしも!!」〔魔獣の爪〕
マヨは剣でゴブリンを切り倒し、ミリアは魔力で作った、大きな紫色の爪でゴブリンを切り裂いている。
「これで、とどめよ!」
「グギャァァァ!!」
そして、あっという間にゴブリンたちを倒してしまった。
「2人とも...強くない?」
「何驚いてるのよ。私は国のお姫様よ!」
「あたしの爪は最強なんだよ。エッヘン!」
2人はドヤ顔をして見せる。
(なるほど、こんだけ強けりゃここまで逃げて来れるわな。)
俺はハハハっと苦笑いをする。
その後も俺の出番が来なくて、少ししょんぼりしながら奥に進んでいくと、いかにもボスが居そうな扉の前にたどり着いた。
「ここが最奥部みたいだな。」
「思ったより短いダンジョンだったわね。」
俺がギギィッと扉を開けると神殿の様な薄暗い空間が広がっており、真ん中に小さな黒いドラゴンらしき魔物が寝ている。
「ど、ドラゴン!?」
その姿を見るなり、マヨは驚いたようにそう言った。
「どうしたんだマヨ?」
「ドラゴンは魔物の中でも最強の種族。どうしてこんな所に...」
どうやらドラゴンはかなり希少な魔物らしい。しかし、俺はその姿を見て、またもや懐かしい気持ちになった。
そして、俺たちが部屋に入るとドラゴンが目を覚まし、こちらの存在に気づき、飛び立つ。
「ちょっと、あんた魔神王なんでしょ!?何とかしなさいよ!」
「何とかって、俺まだ自分の能力がなんなのかわかんな...いや、覚えてなくてさ。」
「能力なんて使わなくてもワンパンでしょ!!」
「むちゃ言うなよ...」
そんな話をしていると、ドラゴンはものすごい咆哮と共に黒炎を、後方の2人目掛けて放ってきた。
「あっ、危ない!!」
俺は2人を押し倒し、すんでのところで黒炎を回避した。
ズドーン!!と黒炎は壁に激突し、壁からは煙が上がっている。
(なぜ後ろの2人を狙った?弱いからか?)
その攻撃には、ほんの一瞬だけグリッチが見えた。
ドラゴンはドス黒いオーラを放ち、ピピピッとノイズを放っている。
「まだ小さいのに、こんなに強いなんて...」
「痛たぁ、これはやばいわね。」
(くそっ、空を飛んでたんじゃ剣は通用しない。どうする...ん?そういえば俺のサブスキルって...!?)
俺は自分がもつもう一つのスキル、『破壊者』のことを思い出した。
さっき良い所を見せれなかったこともあって、嬉々としてドラゴンの前に踊りでる。
そして俺は左手を前に突き出すと、
「くらえ!」〔破壊〕
と、能力を発動した。
その瞬間、ドラゴンは、
「ギャァァァァッ!!」
と叫び、グリッチとノイズを発しながら、光の粒子となって消えていった。
「もう、やればできるじゃ――。」
しかし、マヨも安心したその時、
「ぐはぁ!!」
と、俺は左腕から血が吹き出し、吐血しながらその場に倒れ込んでしまった。
(は...?何が...)
「て、テンコ!?」
「テンにぃ、どうしたの!?」
(い、意識が...)
体が燃えるように熱い。1ミリも動けない。
2人の呼ぶ声は届かず、俺の意識は次第に薄れていった――。
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〈主な登場人物〉
テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。
マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。
ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。




