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第一話

 死んだ人の魂はどこへ行くんだろうか。


 多くの人は天国や地獄、幽霊として地上で彷徨い続けることを想像するかもしれない。


 僕も最初は同じようなことを想像していた。だから、小さい頃は地元にあるお城とかで昔争いでたくさん人が死んだから、その付近にたくさん幽霊がいるかもしれないと想像したりして一人で怖がってた事があった。


 僕は、もし死ねば天国で妹と会えるかもしれないと考え自殺をしたが、何故か何も見えない暗闇の中にいつの間にか僕はいた。意識がはっきりとしている。おぼれた時の苦しさも何もなかったかのように感じないし、服とかも濡れているはずなのに、服が肌に張り付く感覚も、髪の毛が濡れている感覚もない。


 (ここは死者の世界か?)


 そう考え、周りを歩こうとしたが、自分の手足が見えないことに驚いた。でも、手の感覚はあるし足でしっかり立っている感覚はあるから、ただ単にここが暗すぎるということが分かった。

 

 しばらく歩いていると、急に体が動かなくなった。

 

 (なんだなんだ?暗すぎて何も見なくてよくわからないのに余計混乱してきたぞ。)


 そう思い、何とかあがき続けていると


 「こんにちわ。八神瑠さん。」


 正面くらいから聞いたことのない年老いた男の声が聞こえた。何も見えない中、自分の足音しか聞こえなかったのに、急に男の声がしてかなり驚いた。しかも、自分の名前を知っているので驚きと同時に警戒心も芽生えた。


 「あなたは誰ですか?どうして僕の名前を知っているんですか?」


 そう聞くと、男は高らかに笑い、


 「君が死ぬ前は、妹が死んで自暴自棄になるくらい精神がおかしくなっていたのに今はかなり落ち着いているようだね。」


 そう言ってきた。 


 確かにさっきまで感覚の事を考えたりして、妹のことをあまり考えていなかったかもしれない。

 

 「確かにそうかもしれない。もしかして僕は自分が思っているほど妹を愛していなかったのか......」

 「そんなことはない。君は妹のことをよく愛していたさ。彼女のことがうらやましくなるくらいにね。」

 「じゃあどうして.......」


 僕は焦りながら男の次の言葉を待った。


 「その理由を答える前にさっきの君の質問に答えさせていただこう。私のことについては詳しくは教えられないからもう一つに質問についてだよ。私は生物の愛について研究をしていて、最初の研究対象として、この世界にいる君たち兄妹を選んだのだよ。兄は妹に対して深い愛情を向け、妹は兄を信頼し、たくさん甘えることで兄の愛情を受け取っていた。そのような美しい兄妹愛を見て感動した私は君たちを忘れないようにするために名前を記憶させてもらったのさ。」


 男は、芸術作品について語るようにそう言った。


 「君が妹のことを考えることがなくなったことには理由がある。それは、『転生』の予兆的なものが関係している。次の肉体に魂が移るとき、前の肉体で未練を残していると、魂が次の肉体に入らなくなるため、稀に本能で未練をなくそうとする者が現れる。ちなみに肉体に入らなかった魂は、未練を残した幽霊と化する。君の場合、妹を守れなかったことに対する未練があったがどんどん薄くなっている。つまり、君は稀な『転生者』となるのだよ。」

   

 .......情報量が多すぎてよくわからなかった。


 「えっと、簡単に言えば『転生者』として選ばれて、その前触れとして妹のことを考えなくなってしまったということですか?」

 「その解釈で間違いないよ。」

 

 大体わかったが、一つ気になるところがある。

 

 「じゃあ転生した後はどうなるんですか?」

 「転生した後は、記憶は次の肉体へ引き継がれるが、未練に関することだけ忘れていることになる。だから、君がどのような理由で自殺したかわからなくなるだろう。そして、赤ん坊の姿で次の人生が始まる。」


 男の口調が真剣なものに変わる。

 

 「そこで、君には次の世界の主人公を見つけて守ってほしいのだ。」

 「主人公とはどういうことですか?」

 「君の世界には漫画などがあるだろう。それに出てくる典型的な主人公と同じだよ。」

 「なるほど?」

 「その主人公は君と妹に近い関係になるはずだから見つかりやすいだろう。君は自分の思う主人公像を想像して頑張って探してほしい。」

 「でも僕はもう死にt......」


 言い切る前に僕の体が急に重くなった。


 「もうそろそろ『転生』が始まるよ。確かに君は死にたいかもしれない。でも、妹を守れなかった未練を主人公を守ることで晴らしてみないか?私も愛がどのように君の力になるのか気になるからね。」

 「ぁ、ぅ、、」


 質問しようとしたがうまく声が出せなかった。


 「さあ、頼んだよ。私のためにも、君自身のためにも。」


 そう言われると、真っ暗だった視界が急に明るくなった。


 

 

 



 


 


 


 


 


 


 

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