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2-­④




 ~ 和葉チームVSアリスチーム 1セット目 スコア1:5 ~


「でやらああっ! スパァァイクッッ!!!」


 大きく振りかぶった片手をボールに叩き付けられ、一閃、自コートに突き刺さる。


「な~によ! なによ!! 全然大したことないじゃないっ」

 輝かせた目から調子に乗った台詞が吐かれるが、膝をついた俺たちには何も言い返せない。


(そういや東雲さんって高校の時にバレーで全国行ってたよな……。怪我でプロになれなかったらしいけど)


 数十年前にあった同窓会でも、がたいの良さから一際目立っていたのを覚えている。


「木内さん……、もしかしてへたくそ?」


「仕方ねえだろっ! こっち仕事終わりだぞ!!」


 肩で息をしている目の前で鼻を伸ばされるのが気に食わないのか、なにやら不機嫌な表情を浮かべている様子。


「なあ、向こうも満足してるみたいだし、作戦的には別にいいんじゃないか?」


「ええーー、まあー、いいんだけどおーー」


(めんどくせえな)


「ほら! 次のサーブいくわよっ! 10点くらい取っちゃおうかしら!?」


 矢継ぎ早に攻撃のモーションに移られ構えを余儀なくされる。

 スマートな所作から放たれるサーブは、およそ小柄な7歳児のそれとは思えない威力でコートに襲い掛かる。


 が、しかし、そこは和葉の目の前。

 コースを読んでいたかのような瞬発力でボールを拾う。


「なっ!!?」


「うわっ、すっげえ!!」

「木内さん! トス!」


「うおっ!? よっしゃ、まかせろ!!」


 ネット際まで走りこむ和葉へと上げようとするも、万年文化部特有の不格好なフォームからはひょろひょろなトスしか上げれない。


「やっべえ」


(崩した!! 拾える……!)


 しかし、その明らかにずれたボールでありながら、一手ジャンプのタイミングを遅らせたことにより完璧にミートさせている。


「!!?」


 コートへと勢いよく放たれたそれを横目に3人そろって驚愕。そして当の本人はこのどや顔。


「ふんっ!! どう、木内さん! すごい?」

「おお、すげぇーすげぇー……」


「ふ、ふふふ、面白くなってきたじゃない。第二ラウンド開始って言ったとこかしら?」


 二人の対決がヒートアップし、挑発するようにお互い睨み合う。ここからが本番といっても差し支えないであろう!


(なんかもう2人で戦ってない?)

(ていうかこれ、僕たちが参加しなくてもよかったんじゃ?)



 ~5分後~



「どりゃあああああああぁぁーーー!!!!!」


「うおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!」



 ~10分後~



「たあああああー!!!」


「こなくそおおおおおぉぉぉ!!!!!」



 ~20分後~



「ぜえ……ぜえええ…………」


「はああ……はああぁ……」


「もう! ばてるの早すぎ!!」

「アリスちゃん、2人で遊ぼ」


 ボールを片手に駆けていく2人に対し、ベンチでは大人らがへたばっていた。


「対決じゃなかったのかよ……、やっぱ子供の考えはわからん……」


「ははは、しかしこの年齢になりますと衰えを感じちゃいますよね。えーと……木内さんはおいくつなんですか?」


「あぁ、自分35です」


「35! 僕より4つ上ですね。僕31です」

(なるほど、じゃあ俺より24歳上か)


 そこまで自己紹介をし終えると、2人の戯れを眺めながら何やら神妙な空気感で語りだす


「有栖って見ての通りあの性格じゃないですか。だから1年生の時にあんまり周りと馴染めなかったらしくて」


「はあ……」


「でも、和葉ちゃんが色々と引っ張ってくれたんですよね。家でも和葉ちゃんと……後、叶芽君? ……の話ばっかりしているんですよ」


(えっ、俺も? 和葉とよく一緒にいたからかな、東雲さんのことうざい女子ぐらいの認識しかないけど)


「だから僕も和葉ちゃんのことは気にかけてたんですけど、ええと、その……」


「いや、まぁ……小清水さん家は色々と有名ですし」


「はい……、ですので木内さんが一応でも保護者を名乗ってくれていて安心しました」


「なるほどぉ」


(ん? なんで俺は28年前の地元でスーツ着ながら嫁の家庭事情について知らんおっさんと話してんだ……? 成り行きだとして保護者名乗ってんのも意味わかんねえし、帰れるなら早くにでも元の時代に戻らないとだろ)


 ここまで順応しているのも怖くなってきたが、正直帰る手段を見つけることが先決ではある。俺はこの時代に用はないのだ。


「ところで、木内さんのお仕事とかって聞いてもよろしいです?」


「ええと………………………………すんません、ちょっと空けます」


「??」


 俺は突然会話をやめ、その場から立ち上がり彼女たちのもとへと向かった。


「おーい! 何やってんだあ」


「あ、おじさん! 木の上にボール引っかかっちゃったから、和葉ちゃんがー」


 細い木ではあるが身軽に上へと登っていく和葉を見上げた。


「和葉ー! 届くかー」


「うん、取れそうだよ。……ほら!」


「っっ!!? 和葉っ!! 危ない!!」


 その瞬間足を乗せている枝が折れ、重力には当然逆らえずに落下してしまう。


「和葉ちゃん!?」


 転落する刹那、砂塵を巻き起こしながらとっさに飛び込んだ。


 地面を蹴り上げ、既の所のダイビングキャッチにより和葉を抱き込むことに成功した。火事場のバカ力だ。


「はあ……はあ……あっぶねえ……。和葉、大丈夫か?」


「…………」


 頬を真っ赤に染め上げ目をかっぴらいて呼吸を整えている最中、なんだか俺には至極法悦な表情にも見えた。


「ん? おい、ほんとに大丈夫か?」


「あっ! う、うん……はい、大丈夫! ……です」


「???」


「木内さん! 和葉ちゃん大丈夫でしたか!?」


「ごめんね、和葉ちゃん!! 本当にごめん!」


「ちょっと顔赤いけど歩ける? よかったら車で家まで送りましょうか?」


「大丈夫だよ……、大丈夫だって。本当、ほんとに。……ありがとうございます」


 俺を除く3人があわや大事故にてんてこ舞いになる中、1人俺だけは別のことで胸騒ぎを感じてしまう。


(……俺は覚えているぞ。小学生の時、丁度俺が和葉を異性として意識し始めた辺りだ)



『あのさ、和葉って好きな人とかいんの?』


『え? 別にいないよ』


『…………じゃ、じゃあ、男の好きなタイプとかは?』


『うーん、一言でいえば頼りになる人、かな』


『なるほど、頼りになる男かあ。和葉らしいな』


『?? うん、そうかなぁ』



 俺の理想の男性像は恐らくここからきている。和葉から好かれたいがためだけの自分磨きに大分と勤しんでいた子供時代。


(頼りになるっていうか間一髪助けただけだけど。あの和葉の態度を鑑みると……? 小学生って案外わかりやすいとこあるし……)


「木内さん! そろそろ帰ろ」


「お、おう……」


 初恋の女の子に容姿そのまま惚れられてしまったっぽい35歳。


 さっきはさらっと流したが、泊りの家政夫ということはこの状態の嫁(7歳)と同居することになるのだ。


 このままもし、元の時代に帰れない日が続いたら本当にどうなるのだろうか、俺よ。


(ていうかこれって過去に戻って自分から自分の嫁寝取ってるってことになるのか? 考えれば考えるだけ意味わかんねえよ……もう)




 お疲れ様です。ここまでが2話となります。


 この手のストーリーなら、2話はもっと現代の生活とのギャップを強調したお話にすべきだし、この内容にするにしても前と後ろを変えた方が続き物として引き込みやすいだろうし、1話でキャラの掘り下げを全然しなかったから地続きにしたけどやってることごちゃついてるしで、自分の構成力を加味しても反省が尽きませんね。反省します。

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