15-④
洗面台の前にたつ俺は、それはもう酷い顔をしていた。
15人に聞けば、15人とも醜いと呼ぶだろう。
目尻が落ちて、唇がたるんで、顔を洗えど洗えど変化はなし。
こびりついたわけではない、もとより俺は、こんな顔だったと、囁かれているかのよう。
だが俺は、この顔をみた人間のうち、おそらく俺だけは、その顔に一筋の光を感じた。
泥の中の蓄光石だ。
明るければなにもみえないが、暗くなることで姿を現す。
昨日の俺と、今日の俺。
なぜゆえか、なにが違うのか。
「…………俺は……、俺の感情は、もう……」
時刻は午後の12時だった。
玄関にローファーが置いてあるので、和葉は学校を休んだのだろう。
彼女の自室から響く小鳥の囀りほどの物音が、俺にとっては爆音のドラムロールにすら聞こえた。
この選択は間違えている。
非難を浴び、後ろ指をさされる行為だと、重々理解している。
だが、なら、正解とはなんなのか。
あらがって、あらがって、あらがい続けて、報われた瞬間だけが正解なのであれば、俺の8年間はまったくの無意味だったとでもいうのか。
いまにして思えばわかる。
この決断をくだすための8年間だったのだ。
後悔はない。
代替でもなく、押しつけでもなく、心の底から求めていた。
血も、肉も、この地に落ちた瞬間から、潜在的に求めていた。
彼女は和葉だ。
俺が、世界で1番愛おしい存在の、木内和葉なんだ────。
「──………………」
「…………」
「──いや、世界で1番がふたりいても、なんらおかしくはなく、一香も和葉も同じくらい愛しているのであって、家族の扱いに差があるなんてことは微塵もありませんので」
「そもそも俺は和葉の言葉を表面しか理解していないといいますか、まぁあの時の言葉が原動力ではあるのですが、俺にとっては家族はみんな平等に愛しているのであって」
「和葉を自分のために巻き込んでいることへの免罪符だなんて思ってもないし、ここで断られる可能性もあるし、そしたら無理強いするつもりもないし」
「相手のことを想っていないかもですが、それはもう彼女に直接聞いてもらわないと、わからない部分────」
ガチャッ!
「……!!」
「木内さん、どうしたの? さっきからずっと、ぶつぶつと」
「か、和葉……さん……、えと、なにしてた……?」
「ん? 靴下、靴下編んでた。木内さんが使ってたの、ボロボロだったし」
「…………」
「うん、安心して、だいじょぶだから。今日、もっかいお母さんと話してみる」
「…………」
「……」
「……和葉」
「……? なに?」
「少し、話がある。いま、いいか……」
*
………………
…………──────
「──え……、あの……」
「俺はこの家をでていく。高校3年間、和葉はちゃんとここにいろ。聖子さんに心配はかけんな」
「…………わ、私、なにがなんだか……」
「俺は和葉のことが好きだ。家族としてとか、娘としてとかではなく、ひとりの女性として愛している」
「……っ!! ……そ、それは……私も……だから」
「うん。だから、卒業したその時、俺は和葉をむかえにきたい」
「……え?」
「和葉……、俺と、結婚してくれ……!」
やっぱ次回!!
やっぱ次回が最終回!!
前いってたこの回が最終回って嘘だから!!!




