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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
13話
55/66

13-②




「あれでしょ? バックチゥーザなんとか、ってやつ。私みてないからしらないけど」

「ああ……、まあ、うん……」


 実際、超常的なものをみさせられたとき、人間は案外、冷静でいられるものなのだと、俺は身をもって体感している。


 だが、なんだこの妙は。


「あんた、いまいくつ?」

「え、35だけど」

「うわっ! 私より年上じゃん! おっさんか」


 どうして俺は、年下の母親と、当時の実家で、世間話をしているのか。

 胃袋に毛でもはえた感覚だ。


 母の誘導によって通された部屋は、青のタイルがひかる、ダイニングキッチン。

 薄汚れて、人が通ることさえ一苦労なその空間は、俺にとっての王国そのもの。

 埃のかぶった戦隊モノのソフトフィギュアが、物悲しそうにこちらをのぞき、冷蔵庫にはられたキャラクターのマグネットへと哀愁をおくる。

 すこし、青のタイルが目にささる。


「コーラでいい?」

「いや、話の席でコーラなんかのますなよ。お茶か水道水でいいよ」

「あらそう? 昨日、私パシらせてまで、買いにいかせたじゃない」

「覚えてるわけないだろ……。こっちは30年たってんだぞ」


 こうして、むかいあって座ると、当たり前だがスッキリする。

 においも、肌をなでる空気も、すべてが俺のためにあるようだ。

 ひと口お茶をのんだ母は、ニタリとしながら、顔を近づけてくる。


「で、あんたどうなのよ。仕事は? 結婚は? まさかプータローじゃないわよね」

「働いてるよ。普通にサラリーマン。結婚もしてる。って、こういうの、あんまいわないほうが、いいんじゃないか?」

「いいわよ別に。叶芽にさえいわなきゃ、どうってことないでしょ。あ、あんたじゃないほうね」


 つけいる隙がないくらいに、言葉をつづける母は、井戸端の主婦そのもの。

 なんだか無性に対抗意識が芽生えた俺は、いっきにお茶をのみほした。

 ごく一般的な麦茶。

 ほんのり苦く、ほんのり甘い。


「そっか、そっか、35で既婚者ねえ。じゃあやっぱ、子供もいんの?」

「いる」

「男の子? 女の子?」

「娘」

「ダレ似?」

「嫁似」

「奥さんだれ? 私しってる?」

「………………、……和葉」

「あらっ!? へぇーーーっ、やるじゃない」


「…………なぁ……」

「てかあんた、和葉ちゃんのとこに住んでんでしょ? 変な気おこしちゃダメよぉー」

「なあ!!」


 荒げた声に、母の肩がピクリと反応した。


「なんなんだよ、この時間。なんでかーちゃんと世間話に花さかせないと、いけないんだよ」

「なによ……、せっかくあんたが、しょげた顔してたからっちゅーのに」

「いや、しょげたって……、あぁーー……」


 頭をかきむしる俺を、それはもう、なにもいわない表情でながめてくるので、俺はさらに頭をかきむしる。


 ごめん。


 その言葉が、やたら脳みそを沸騰させてきて、身体の震えをとめられない。

 鮫島さんや白雲さん相手だとわかない、負の感情とよぶのもおこがましいほどのエゴが、胸のあたりをつつみこむんだ。


 俺ももうアラフォーで、1児の父。

 この感情の名前も、正体も、わかっている。

 だからこそ、不甲斐ない。


「……悪い、もう帰る」

「え、ちょっと!」

「ここにきたとき、ごめんって、謝ったってことはさ、かーちゃん、俺の目的もわかってんだろ? 話せたのは嬉しかったけど、もう、もういいんだよ……」


 親の心子知らず、とはよくいったものだ。

 それがわかったところで、頭がもう、反発しかうまない。

 思慮が、心に響かない。


 だが、俺の思惑もつかの間、ため息ひとつついた母は、眉一つ動かすことなく言葉を吐いた。


「でもあんた、住むとこもあるんでしょう? 聖子ちゃんもあの感じ、当分は安泰だし、私も親だから頼ることができる。なんなら和葉ちゃんもいるじゃない」

「……は? なんだよそれ。どういう──」


「帰らなくてもいいんじゃないの? 元の時代に」




 過去の後書き反省会、ぜんぶ活動報告にうつしました。

 読みたくないひとも読まざるをえない位置にあるの、なんかちょっと嫌だったので……。

 でもこれ、投稿はじめてから1年と2ヶ月目でやるの、配慮もクソもない気がする。

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