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35歳の俺と7歳の嫁  作者: mixnunu
13話
54/66

13-①




 ここにたつと、俺のすべてが解放されるようなきがして、なにかと身がひきしまる。

 この微かな手がかりに、少し、自暴自棄になっているのかもしれない。

 指先までもが熱をおびる午後の頭。

 その熱をいやすべく、俺は呼び鈴の突起にふれた。




『だ、だいじょぶ? 私もついていく?』

『いいよ、大丈夫ですよ。母親か』

『でも、のりこむのって、いわば悪の総本山なんでしょ? その……木内が……』


『いや、もう決心はついてるんだ。悪あがきっていうか、最後の核をつぶしておきたい』

『………………、あの、木内』

『ん?』

『私はなにがあっても味方だから……! ゲームとか、マンガとか、いつでもここにきて、遊びましょ……!!』




 昨日のことをおもいだすと、胸のあたりがぽうっとして、指先にさらに力がはいる。

 ジーっとけたたましい音が鳴り響くと、俺は目をとじ、大きな息を吐きだした。

 腹の中の氷が、肩、背中、腰の順番に冷やしていって、汗がとまらない。

 審判の時がおちるまで、心臓がはちきれんばかりに、慌ただしくうごめくのだ。


「はーい、はい。どなたですかぁー……」

「…………」

「あぁ、あんた」


 いまの俺と対照的といえば、それはそうだ。

 いつもの、だらしなくも日常にとけこんだ、母の姿がそこにいる。


「すいません、突然、連絡もせずに。ちょっとお話、いいですか」

「…………ん」

「……え?」

「いや、こんなとこで話しても暑いじゃない。あがりなさいな、叶芽くん」


 たてられた親指がさすのは家のなか。

 玄関口をみただけでも、すべての構造が脳裏にうかぶ。

 乱雑におかれた靴、狭い玄関に窮屈そうにしかれた灰色の玄関マット、はいって正面すぐにある和室は、障子があけっぱなしになっていて、仏壇をいつでもみることができる。

 ひとこと「おかえり」といわれれば、靴をなげとばして、冷蔵庫でも漁ってしまいたくなるくらい、俺にとっての王国だ。


 だが、いま、頭のなかを支配したのは、そんなことではない。

 心臓の血管をすべて喉に集中させて、ふりしぼる。


「なんで……! なんで俺の名前が叶芽って、わかったんだ……?」


 俺は名乗った覚えがない。

 もし、いっていたとしても、木内でも、叶芽でも、反応する箇所はいくらでもあるはずだ。

 小さな、小さな、これが最後の端緒だ。


「あー……、あんた、ここにきたのは、いつだっけ……?」

「……? 夏休み前だから、だいたい、4週間前……」

「なるほど、それで」


 ひとりで勝手に納得したように、うんうんと頷くと、俺の目をまじまじとみて、口をだす。


「ごめん。あんたが求める答えは、私はわからない」

「……え?」

「変に期待させるつもりはなかったのよ。その顔みりゃ、かけずりまわって、辛酸なめてることくらいわかるわよ」


 「ごめん」……?

 ぜんぜん理解がおいつかない。

 この「ごめん」は、なにへの謝罪なんだ。


「あの……俺のこと……、なんで、叶芽くんって……?」

「ん、直感」

「……っ!」


 嬉しいとか、感涙とか、そんな高尚なものはない。

 だが、なんだ、この感情は。

 感傷的で。

 ……で。

 ……なんだろうか、なにも、言語化ができない。


「ま、あれだ。野比家のばあちゃんになった気分だ」




 宣伝、まったく効果ないんでやめます。

 小説ってどうすりゃ伸びんだろうね。

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